多くの製薬企業でTracking調査(ATU調査)が一番多く行われている市場調査なんじゃないでしょうか。ATU=awareness, trail, usage, KPIをtrackする意味でとても重要な調査ですが、SoV至上主義時代の調査項目がUpdateされずにマンネリ化して、化石のように生き残っているケースがあり、今のInsight Marketing時代に対応していないケースがあるように思います。
Tracking調査(ATU調査)にはある程度、決まったパターンがありまして、よくあるのがこんな感じで
(1) 現在の患者数、処方薬剤等
これは基本情報なので、とっておきます。最初の段階から「〇〇社の調査」ってバレるとバイアスがかかるので、可能な限りどこの会社が調査主体か分からないようにしましょう
「先生が〇〇の治療薬としてご存じのものを記載ください」と自由記載させるのが非助成認知、「先生が〇〇の治療薬としてご存じのものを選択ください」と選択肢から選んでもらうのが助成認知です。製品の名前が頭に思い浮かばなければ処方されることもないので、大事なKPIのひとつです。
(3) 薬剤選択の時に重要な要素
「効果発現の速さ」「有効性の高さ」「頭痛の副作用が少ない」「患者の自己負担」「投与回数」等々、多いときは10以上並べて「薬剤選択の時に重要なものを1=まったく重要でない、10=非常に重要であるで評価ください」みたいに聞いたりします。(順番に並べてもらう、とか聞き方は色々あります)
「効果発現の速さ」「有効性の高さ」「頭痛の副作用が少ない」「患者の自己負担」「投与回数」等々、多いときは10以上並べて「各薬剤を1=まったく評価できない、10=非常に評価が高い」みたいに聞いたりします。これで、自社製品の有効性が8.3/10点、競合製品が9.2/10点、エビデンス上は自社製品のほうが有効性は高いのだから、有効性のメッセージをもっと訴求すべし!みたいに使ったりします。
自社製品のKey message (1-5個くらい)を認知しているか?を聞きます。調査主体の会社がバレないように競合製品のKey messageも一緒に聞くことが個人的には多いです。
半年後の処方意向は?など聞くことが多いと思いますが、製品Xを使う患者は〇%ですか?みたいに聞くと製品Xの処方がかなりインフレするので、最初に聞いた現在の患者数とそれぞれに処方している患者人数を聞いておいて、それが半年後に(競合含めて)どうなっているか?を聞いたほうが現実に近い結果が得られます。
(3)薬剤選択の時に重要な要素
(4)競合含めた各製剤の評価
これらの質問は汎用され、根強いファン(SoV至上主義時代の成功体験者)が多いのですが、聞いてもいいと思いますが、その使い方、解釈には注意が必要です。こういう質問の結果は製薬会社側としてはとても欲しいものですし、アクションにも繋げやすい、具体的には「有効性の評価が競合に劣っている!そのギャップを埋めないければ!」みたいな感じなのですが、上記のような質問の調査結果だと医師のInsight、本音、Current/Desired perception」が得られない問題がありまして、
問題① 本音と建前で言うと「建前」の回答が前面に出てしまう
「治療に重要な項目は?」「各薬剤の評価は?」と医師に聞くと、どうしても建前、といいますか自分の知識から正しいとされること≒エビデンスをもとに回答する医師が多く、それはそれで医師の認知を測るという意味では正しいのですが、だからといって「医師が重要と認知している項目の自社製品の評価が低い→その評価を上げれば処方に繋がる」となるとは限らない、ってポイントです。
自分が購買側だったら?って考えてみると、その理由が腹落ちしやすいと思います。例えば、あなたがテレビを購入する予定の人で、家電メーカーの定量調査でこんな質問があったとします
「あなたがTVを購入する際に重要だと思う項目を1=まったく重要でない、10=非常に重要である、でお教えください」
- 画面のサイズ
- 画質(4K、8K等)
- 音質
- ブランド(メーカー)
- 録画機能
- 価格
そして調査結果がこんな結果になったとしましょう
- 画面のサイズ
- 画質(4K、8K等)
- 音質
- ブランド(メーカー)
- 録画機能
- 価格
そしてこんな結果になったとしましょう
この結果を受けて「価格が安くて、画質がよくて、画面が大きいTVを消費者求めている。競合に対して価格、画面サイズで負けているのより価格競合性があり画面サイズが大きいTVを開発して売り出すべきだ」というDecisionをするとします。本当にそれで売れるでしょうか?合っている可能性もありますし、合っていない可能性もあるのですが、いくつか解釈に注意点があります。
1点目は「重要と思う項目の満足なラインはどこか?」という点です。TVで言うと、画質なんかは聞かれたら「TVにおいて画質は大事だし、画質がいいTVが欲しい」と消費者が回答するのは当然です。私も家電にはあまり興味がないのですが、地デジに移行してから、4K、8Kとか言われてもそれ以上の違いは分からないしさほど興味ありませんが、聞かれたら「画質大事、画質が良いテレビが欲しい」と答えると思います。
この問題を解決するひとつの方法は「先生が実用、実臨床で満足と考える点数を6点として」という注釈を加えて回答してもらうことです。そうすれば、自社品の有効性評価は8.5点、競合品は9.0点、この差を何がなんでも埋めなくては!という打ち手ではなく「自社品も競合品も医師の満足している点数を大幅に超えている、この点差はcriticalなのか?」という点に立ち返ることができます。もちろん評価が医師の満足点=6点以下であり、エビデンス上その数字は低すぎる場合は、有効性のKey Messageの浸透は大事な打ち手になります。
前にも述べましたが、この「薬剤評価」の質問は、その分かりやすさ、使いやすさから根強いファンが多く、私が企画するTracking調査でも本当は削除してもいいかな、と思いつつも上からの圧力で残すことが多いんですが、最低限この「満足度6点として」は入れるようにはしています。
この質問で本当に聞きたいことは「医師の処方Driverは何か?その要素の認知が競合に対してどうなっているか?」を知ることなので、その意味ではコンジョイント分析をしたほうがいいケースが多いな、とは思っています。コンジョイント分析についてはまたの機会に
0 件のコメント:
コメントを投稿