これまで多くのMarketing研修を行ってきましたが、ただ講義だけをしていても「なるほど、製薬Marketingはこういう感じなのか」という感触はつかめても、研修後に実務に学んだことを活かすのは難しいな、と感じています。そこで具体的な事例を使ったCase Studyを研修に使って参加者に取り組んでもらうと、学んだことの定着率は大幅にあがることを体感しています。
Case studyといえば多くのビジネススクールで使われているHarvard Business SchooleのCaseで検索すると製薬のケースが多く出てきます。外資系、日系問わず、日本で製薬会社に勤務しているBrand ManagerなどのMarketing担当者にHarvardのケースを使ったことがあるのですが、正直、うまくいきませんでした。英語というハードル、まだ日本以外のビジネスのケースしかないので、参加者の実務とは距離感があるためです。さらにはHarvardのケースのような有名なものは、いろんなところで使われていて、Google検索するとCaseの解答めいたものが出てきますし、流行りのChat GPTにCaseを取り組んでもらったらそれっぽいものをしっかりと出してくるんですよね、すごい時代になったものです。
講義だけじゃなく、実務に直結したケースでの研修を実施したい!って思った私がどうしたかというと、「パンがなければブリオッシュを召し上がればいいじゃない」みたいな感じで「適したケースが無ければ作ってしまえばいいじゃない」でした。
- 日本語で
- 日本の製薬ビジネスに直結した
- 参加者がイメージしやすい、取り組みやすい
ケースを作ってMarketingの研修+Marketingスキルの評価を実施して、Brand ManagersのMarketing関連スキル、具体的には
- 市場分析
- Forecast
- 戦略立案(Segmentation & targetting含む)
- アクションプラン
- KPI設定
- …
オリジナルのケースを作成するのは、正直、かなりの手間ですがこれまでの参加者のフィードバックを聞くととても好評で
- 製薬Marketingの全体感が理解できて自分の仕事に即活用したい
- 自分の得意なスキル、足りないスキルが見える化された
- Marketing全体の視点=Directorレベルの視点が掴めた
など多くのコメントをいただきまして、かれこれ過去、10以上の自作Case studyを作成して研修、Marketingのアセスメントを実行してきました。
実際にはCaseを作成するときは、参加者によって事前知識が結果に影響しないように、その会社では扱っていない領域のものを作成、あるいはその会社の将来でてくるであろう(現在はビジネスをしていない領域の)製品を使って、「こういう風なんじゃないか?」と考えて、Case studyには
- 医師定性/定量調査結果
- 患者定性/定量調査結果
- 自社製品/競合製品の製品特性(P3結果)
この自作のオリジナルCase studyを発展させた形で実現したのが、Top Talentの選抜研修で、1年間のProgramで、Phase1/2とかにある自社製品Xを使って「新薬Xの開発からCommercializationという製品life cycleを1年間で学び体験する」というコンセプトで、Marketingだけではなく、R&D、Salesのひとたちも参加しての研修を実施しました。コンテンツはこんな感じで
前半=R&Dパート
- R&D開発のプロセス(P1-P3)
- 候補新薬のビジネス評価(Forecast→NPV)
- 薬価はどう決まるか?
- 日本での臨床試験の実施計画
ここではR&Dの方々と協働して、R&Dの方々に講義もしていただいて、前半のケースでは「候補コンパウンドXとYがあります。どちらか1つしか開発できない場合、どちらを開発しますか?その場合、どのような臨床試験を組みいつごろ承認が得られそうですか?」というケースを作成し、参加者はGroup workで取り組んでもらい、6月にPresentationをしてもらいました。
後半=Commericialパート
- P3結果が出た→ Forecastをもう一度
- Earlyの市場調査結果(医師/患者/定性/定量)
- Launch時にどのような組織で発売するか?(MR数など、SFE)
- Pre-launch戦略
- Launch後の戦略
- どんなActivityをどんなチャネルを使って実施するか
- KPIは?
後半パートはCommercializationのパートで、上市2年前でPhase3結果が出て、Brand Teamが立ち上がったくらいの時点を想定し上記のようなものをCase studyを通じて前半のR&Dパートと同様に加者はGroup workで取り組んでもらい、12月にPresentationをしてもらいました。
この研修方法だと、Marketingだけではなく「製薬ビジネスを1つのコンパウンドのライフサイクルを通じて」学ぶことができ、しかも自社製品の将来候補品なので、参加者の興味ども高くて、とても上手くいった研修だったと自画自賛しています。
オリジナルのCaseを作成するのは確かに手間で、時間も(お金も)かかるのですが、それ以上の価値がある質の高い研修や参加者のスキルアセスメントができる方法で、もっともっと多くのひとたちに広めたいな、と思っている次第です。
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