五月雨式に記事を上げていましたが、Insight marketing時代のBrand planの作成プロセスを最初から最後まで、可能な限り整理整頓して書かないと、と思い重い腰を上げました。既存Brandのplan作成も新製品発売のplanの基本的には同じProcessなので、ここではスギ花粉症の架空(そして現実ではあり得ない)新製品=”製品X”のLaunch planを例に具体的にBrand planを作成していきたいと思います。
- Pts journeyの定量化
- Pts journeyの定性化
- Pts journey定性調査、医師インタビュー
- Pts journey定性調査、患者インタビュー
- Pts journey定量調査、その前に
- Pts journey、医師定量調査
- Pts journey、患者定量調査
- 調査結果をもとにPts journey定量化
- 定量化pts journeyとForecastモデル
- Pts journeyにinsightを!
- Current/desired peceptionを考えよう
- Insightワークショップをやってみよう!
- Segmentation、言うは易く行なうは難し
- Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
- Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
- Data generation : Brand Teamでどう取り組むか?
- Data generation workshopをやってみよう
- Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!
貴方はInsight Pharmaに転職し2年後に「アレルギー性鼻炎」の適応で発売される1回飲めば1ヶ月効く経口薬=製品XのLaunch leader(Marketing部門所属)として新しいPositionに就きました。状況としては
- この製品がInsight pharmaにとって2製品目の上市
- 既存の製品はパーキンソン病治療薬でMR40名体制で神経内科にPromotion
- 製品XのP3試験の結果は安全性、有効性ともに良好な結果
- 日本市場のメインのターゲットはスギ花粉症患者
- 作用機序は抗ヒスタミン剤
- 有効性、安全性はザイザルと同等
- 1回服薬したら効果は1ヶ月持続
くらいの情報しかまだありませんし、アレルギー性鼻炎の情報はInsight pharma社にはまだありません。白紙を渡され、そこにLaunch Brand Planを作成しろ、と言われて何から手を付けたらいいのか、と戸惑うかもしれません。とにかく、まずはデスクリサーチで調べることから始めましょう
「アレルギー性鼻炎」「花粉症」で検索するのは簡単ですが、ここから「さらに何を調べたらいいのか?」が分からないと調べられないのです。闇雲に検索することも時には必要なんですが、まずはアレルギー性鼻炎、特に(スギ)花粉症の治療はどうなっているか?を調べるのが第一歩で、抜け漏れなく調べるために、Pts Journeyの流れに沿って定性・定量の両面で調べるのがお勧めです。
Pts journey、Customer journeyなどいろんな言い方がありますが、患者(顧客)が自社製品含む治療に至り、治療を継続する上流から下流までの流れ(Journey)を見える化したものがPts journeyです。よくあるパターンは上流から
- Prevalence:(花粉症と気が付かずとも)花粉症の症状を自覚している≒有病率
- Seek treatment:この症状を病院を主訴に医療機関にを受診する
- 診断:花粉症と診断される
- Treatment choice:薬物療法、その他療法レベルでどの治療が選択されるか
- Brand choice:薬物治療をした場合、どの製品(自社製品)が選べれるか
- Adherance:自社製品がどれだけ服薬継続されるか
みたいな流れが典型的なPts journeyです。最初の時点では分からないことは分からない「?」で残しておいて大丈夫です。分からないことは後で市場調査で調べればいいですから。
色々な情報を調べても忘れちゃうので、私はEXCELを使って調べた情報を記録しています。
「花粉症、患者数」で検索すると環境省のこんなページが出てきます。
花粉症の有病率が42.5%、スギ花粉症の有病率が38.8%という数字が得られました。日本の人口が1億2000万人くらいですから、花粉症の人が5000万人くらいいる、という計算です。注意したいのが「有病率」ということばで、42.5%が「医療機関を受診して診断されている人数から計算」したのか「疫学的調査を行って調べた」ので意味が変わってきます。
松原篤 他 日本耳鼻咽喉科学会会報123-487図2「許可を得て改変」
と書いてあるので、この元文献(?)を見に行くのが早そうなので、検索したら見つかりました。
「アンケート調査 の概略は,年齢,性別,居住する都道府県,スギ花粉 症,スギ以外の花粉症,通年性アレルギー性鼻炎の有 無,ならびに鼻以外のアレルギー性疾患の有無…」とあるので、これは疫学調査ですので、Pts journeyでいうところのPrevalence≒(症状の自覚がある)花粉症の人数が日本で約5000万人くらいいることが分かりました。
実際には「ほんとうにこの数字は正しいの?」ってのをダブルチェックするようにします。今回のこの数字は日本耳鼻咽喉科学会の1万人を超える大規模が疫学調査なので信ぴょう性は高そうです。(調査回答者が耳鼻科医の家族ってとこは、ちょっとバイアスかかっているかも、とは思いますが)
Prevalenceが分かったら、どんどん下流を調べていきます。「seek treatment=医療機関の受診」「診断」等々です。同様に検索するとこんな情報が
- あなたは花粉症ですか?(n=1000)
- 花粉症である(病院で診断された) 21.3%
- 花粉症である(病院には行っていない) 19.5%
- 花粉症だったことがあるが、現在は症状がない 6.2%
- 花粉症になったことはない 39.9%
- 花粉症かどうかわからない 13.1%
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000018991.html
https://www.asmarq.co.jp/data/mr201804hayfever/
https://www.asmarq.co.jp/data/mr201804hayfever/
n=1000でけっこう大規模な調査、20-60代の男女に無作為で聞いている感じだし信ぴょう性はありそう。「花粉症であると病院で診断された」人が21.3%なので、日本の人口1億2000万人×21.3%=2500万人くらいが「病院で診断された」ことがある=症状がある人の半分が花粉症と病院で診断されたことがあるってことです。
次はどんな治療をしているか?ですが同じ調査にこんなデータがありました。
「医者に処方された内服薬を飲む」が30.4%
ですが注意しないといけないのは%の分母は何か?で資料を見ると分母の n=408で自己申告で自分は花粉症だ、という人なのが分かりますので、5000万人*30.4%=1500万人くらいが「医者に処方された内服薬を飲む」と計算できます。ここで
- 花粉症であると病院で診断された:2500万人
- 処方内服薬の飲む:1500万人
って数字がでてきて「常識的に考えて、病院いったら花粉症の内服薬処方されるよな…ここで1000万人漏れる(病院行っても内服薬処方されない人が1000万人いる)のはおかしいよな…」って考えたかた、とてもいい感覚です。デスクリサーチの数字はまだまだざっくりなので、そこはその懸念をpts journeyにメモしておいて、今後の市場調査などで解決していったらいいのです。デスクリサーチ時点では「だいたいこんな感じ」という大枠を理解するのが大事です。
次は「薬物治療」なので直接の競合は同じ作用機序の抗ヒスタミン剤ですので、そのシェアや投与患者数を調べます。
によると、第二世代の抗ヒスタミン剤の売上が出てきますが、うーん、数が多くて難しい…売上トップのピラノアが165億円売上で、薬価が一錠71.3円→1日1回1錠服薬なので、花粉症は2ヶ月続く、年中アレルギーがあるから服薬してる人もいる→ざっくり平均投与期間が3ヶ月と仮定すると、250万人くらいが服薬してる計算に。欲しい情報は
- 薬物治療薬中の患者の何%が抗ヒスタミン剤を服薬しているか?
なので市場調査などで調べるとして、とりあえずは「ほぼ全ての薬物治療患者が抗ヒスタミン剤を投与される」し「Topシェアの薬剤は100万人単位で服用している」くらいの規模間をイメージしたら、この時点では十分だと思います。製品Xの競合は「毎日服薬する抗ヒスタミン剤」って考えたら、ひょっとしたら抗ヒスタミン剤の各Brandのシェア%はたいして必要な情報じゃないかもしれません。
この先の服薬継続とかもまだ分からないし、OTC薬も普及してきているから「病院に行かない」人たちもpts journey に入れた方がいいな、って思うでしょう。市販薬=OTCではないですが
- 市販薬を飲む=43.0%
- 医療機関で処方薬をもらう=31.7%
あとは病院に行かない理由もあったりで使えそうな情報ですが、市販薬市場もかなり多そう。
ここまで調べたら情報をざっくりまとめるとこんな感じになります。
- 花粉症市場は巨大
- 処方薬市場(抗ヒスタミン剤)市場も巨大
- 花粉症を自覚しても病院に行かない人は3500万人もいる
- 市販薬を服薬してる人43%で処方薬の31.7%より多い
みたいなことが大雑把ですが分かります。この巨大な市場、競合ひしめくレッドオーシャン、さてどこから手をつけるか?pts journeyのどこがビジネスチャンスか?は基本的にはLeakageが多い=脱落している患者が多いところ=機会が大きいのですが、下流(Brand choice, 服薬継続…)は対応しやすく上流(疾患啓発、DTC)は対応が難しいので、only oneの画期的な製品でなければ、多くの場合はBrand choiceが一番取り組まないと行けないmomentになると思います。製品XのケースもまずはBrand choiceが一番の勝負ポイントだろうな、花粉症の季節は2カ月だし服薬期間を延ばすのは困難だろうし、ってなくらいのあたりはこの時点でつくと思います。
このようにPts journeyを定量化して、あとで実施する定量調査結果などを反映していくと、それがForeastモデルになるんで、Brand plan作成とForecastモデルはビジネスシミュレーションも考えると切っても切れない関係なのですが、それはまたの機会に。
ざっくりとPts journeyの定量化ができたので、次は定性的情報を追加していきましょう。
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