2023年3月31日金曜日

Forecastモデルの要件

製薬会社によって「誰がForecastをしているか?」というと、専任Foreaster、Marketing担当者、 Demand planner、Financeなど色々なケースががありまして、ざっくりいうと

Marketing担当者のForecast

長期(数年間)のビジネスプラン作成目的で、シンプルかつビジネスシミュしレーションが簡単にできることが大事。例えばシェアや患者獲得数、診断数などの変数を変えてどのくらい「売上」が変わるか?を見るのが大きな目的です。なので、最終Outputは売上であることが多いです。しばしばMarketing担当者作成のForecacstは野心的になってしまい、現実から乖離することも…。

Demand planner

Demand plannerの責任は「欠品を起こさず過剰在庫を持たず、適切は発注をする」ことなので、ForecastのOutputは「剤型毎の数」で、「欠品・在庫を避ける」ためにMarketing担当者が作ったForecastに「これまでのTrendから考えるとこれは多すぎ」など抑止力になることも。

専任Forecaster

専任のForecasterはモデルを作成し、Marketing担当者からassumptionのinputをもらい(一緒にassumptionを考え)、Demand plannerの仕事もこなすこともあります。メガファーマになると専任担当者がいたり、市場調査を担当するInsight managerがForecastを実施していることも多いです。

Finance

Forecastの売上をまとめて会社全体の売上に集計して「これだけ目標に足りない!」など調整をとりまとめることが多く、またDemand plannerのように「このMarketingのForeacstはagressiveすぎる」と監査役のようなことをすることも。

そんな感じで会社によってForeacstをする人は違うのですが、競合製品の増加、バイオマーカーの増加により、Forecastは複雑さを増してきています。一方で、あまりに複雑なForecastモデルは使い勝手が悪くなってしまいます。以前、某コンサルにForeacstモデルの作成を依頼したら、あまりにInput項目が多すぎて、直感的に使えず、あっという間に誰も使わなくなったという苦い経験もあります。私の経験上、「使える、使いやすいForecastモデルの要件」をこのように考えています。

 ビジネスシュミレーションが簡単にできる

Forecastモデルは「X人の新規顧客、Y%の患者シェアを獲得したら売上がどうなるか?」などのビジネスシュミレーションに必用なツールであり、多くの場合はKPIに設定されている変数(シェア、患者獲得、診断率等)を変更することで、ビジネスシュミレーションが簡単にできる必要があると考えます。

 製品ライフサイクルに合っている

Launch数年前の段階であればシンプルなYearlyForecastモデルで大丈夫ですが、新製品発売2年前くらいになると、生産計画も始まり、Monthlyのモデルが求められます。また患者獲得数、売上、シェアなどの実績も毎月更新、社内会議で確認するため、発売後の製品のForecastモデルはmonthlyベースであると考えます。

新製品担当が作成した年間単位のForecastを使っていたら、1年目のその製品が7月発売=その年の半分しか売上があがらないのに、年間単位のモデルになっているので、本来なら1-6月分はディスカウントしないといけないのですが、ディスカウントをし忘れて、初年度の売上目標が過大になってしまうことも。

 実際の売上を再現できる

当月の患者獲得数、シェアなどの実績を入力すると、Forecastモデルから計算される売上金額と、実績が近しい=モデルの売上再現性が確保されていなければ、使えるモデルではありません。とはいえ、100%正しい精度が高いモデルを求めても、それは難しく、現実的には売上の再現率が95%-105%あったら実用には耐えるモデルだと思います。

 シンプルで多くの人がすぐに使いこなせる

ともするとForecast職人(やコンサル)が作ったモデルは、作った本人しか使えないほど複雑になり、引継などの際に困ることがあります。よいForecastモデルは計算Logicがシンプルで分かりやすく、多くの人が直ぐに使いこなせるものでないといけないと考えます。

これまで作成したForeastモデルの例をいくつか少しですが紹介いたします。

肺がんのForecastモデル

これまでは肺がんの治療薬1製品を扱っていたが、複数の新製品の発売予定により同じ肺がんの中で複数の製品のForecastをする必要が生まれました。肺がんはALKEGFRPD-L1ROS1など多くの遺伝子変異があり、治療薬も多く、治療ライン(1st line, 2nd line、、、)もありモデルが複雑化しやすいが、その中で

-         1st治療ライン毎の処方%からPFSを用いて脱落患者数を計算し2nd line3rd lineの患者数を計算したい

-         既存自社製品と新製品がそれぞれ売上に影響しあう可能性があり、そのインパクトを組み込みたい

など細かい要望を組み入れた使いやすいForecastモデルを作成、運用いたしました。

  • 抗がん剤は体重換算であり、日本人の肺がん患者が100人いたら→標準偏差で体重を並べて、どのくらいのVialが使われるか?の計算
  • Progression Free Survivalが〇カ月=これを平均投薬期間にしたい
  • X月に△人の患者が投与開始=患者獲得数をInputにしたい 
    (投与継続人数をInputするなら楽なんだけど…)
など多くの課題をシンプルな、直感的な方法で解決した使いやすいモデルを作成することに成功しました。

複数の適応をもつ製品XForecastモデル

製品Xは複数の適応をもち、どの適応(疾患)からどれだけの売上があるかが見える化されておらず、どの適応にどのくらいの投資をしたらよいのか?というビジネス判断に支障をきたしていました。セカンダリーデータ、過去売上、市場調査結果など多くの情報を精査し各適応毎の患者数、診断数、処方率などからモデルをくみ上げ、実際の売り上げを再現することに成功し、各適応毎の売上がしっかりと予測できることになり、投資の最適化を実現することができました。

私自身はをMarketingの立場、ビジネスプランをFinanceと一緒に作成する立場からずっとForeacstモデルをずっと作成してきました。 

  •          既存のForecastモデルが複雑で実用に耐えないのでなんとかしたい
  •          Forecastモデルに毎月の実績反映を忘れてビジネスプランの時に焦る
  •          新製品発売でまだForecastモデルがない
  •         毎月のForecastモデルのUpdateinput項目が多すぎて手間がかかり難しい
  •          Forecastモデルを含むForecast業務をまとめてアウトソースしたい

 などの要望がございましたらお気軽にご相談ください。

 kyota.yamaoka@ky-insight.com