2023年4月4日火曜日

(5) Pts journey定量調査、その前に

insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!
医師/患者のPts journey定性調査が終わり、次は定量調査(Web調査)です。「定性調査→定量調査がワンセットだよね」と盲目的に実施するResearcher, Brand Managerもいるのですが、市場調査はお金も時間もかかりますし、今回は新製品XのLaunchで市場、医師、患者のことがあまり分からない状態なので定性調査を実施しましたが、既存Brandで仮説に自信があるのであれば、自分たちでPts journeyをupdateして、定量調査から入っても問題ない場合も多いと思います。

「しっかりと仮説が立てられ、調査設計がしっかりしている定性調査ならInsightはとれる」のですが、「定性調査をしたらInsightが取れる!」ってな勢いでBrand Teamで知りたいことリストを作成して定性調査をして1問1答インタビューのようになった定性調査を過去見たことがあるんですが、それではInsightにはたどり着き辛いですし、お金と時間の無駄なのでやめたほうがいいです。

医師インタビューの定性調査結果(あるいは調査実施前)からPts journeyの各段階(moment)における医師の考えをまとめます。これは調査会社とBrand teamのメンバーがワークショップをするのもお勧めです。

今回も定性調査後に花粉症の治療、製品Xについて顧客がぶっちゃけ、本音ペースでどう思ってるか?のワークショップをしたとしましょう

【花粉症の診断について】
  • 一部のアレルギー専門医を除き、花粉症を自分の専門と思っていない
  • 花粉症の診断は患者の自己申告、厳密に診断する必要を感じていない(抗ヒスタミン薬効いたら花粉症という診断的治療)
  • 花粉症の診療は自分の専門外で(悪く言うと)片手間で春の恒例行事と思っていて、春に鼻炎など花粉症の症状できたら、薬を出すというルーティーンのようになっている
花粉症の診断についての医師の気持ち、本音(Insight)を文章にしてみるとこんな感じでしょうか

「アレルギー、花粉症は私の専門じゃないし、春に花粉症の症状で来院したら、そりゃ花粉症だから患者の話を聞いて症状確認して、薬だしたら終わりのルーティーンだよね。特に花粉症の診断に困ってないし、正直あまり花粉症に興味はないし、粛々と患者さんをさばくだけです」

【花粉症の治療について】
  • 花粉症の患者がきたら薬を出す(抗ヒスタミン薬+点鼻、点眼など)
  • 花粉症の最新治療にあまり興味はない
  • 花粉症治療の情報源はm3やMRだが、自ら積極的に花粉症治療の情報を取りに行かない
  • 花粉症の患者の診察は流れ作業のような感じ、カルテを見たら「あ、去年も来た患者さんだ」と思う程度(診察時間も短い)
  • ・・・
「花粉症の治療について自分から積極的に情報探すことは興味がないのでしないです。抗ヒスタミン薬、点眼、点鼻薬だしたら患者さんの症状が良くなるのは分かっていますし、患者さんから文句を言われることもないので。MRさんから情報提供されたらフムフムと聞きはしますけど」

【抗ヒスタミン薬剤選択について】
  • 多くの医師が、抗ヒスタミン薬の詳細の違い、エビデンスにはあまり興味がない(MRから説明を受けて話は聞くが…)
  • 新薬がたくさん出てきているが、どれもminor changeな感じで第2世代の抗ヒスタミン薬なら、どの薬剤も大きな違いはないと思っておいる
  • 効果の強弱、副作用(眠気の強弱)で数剤を患者の要望で使い分けている
  • 患者さんに効果、副作用の強弱でいくつかの薬剤を紹介して選んでもらう医師も多い
  • 処方した薬について効かなかった、副作用が、と患者から言われることもない
  • MRさんが頑張ってくれている抗ヒスタミン薬は処方してもいいかな、と思う(どうせ同じくらいの効果安全性なら、頑張っているMRさんの薬剤でいいかな)
  • 患者から薬のリクエストがあったらその薬を処方
  • 去年と同じ薬でよかったら、患者さんに確認して同じものを処方する
「抗ヒスタミン薬にはざっくり有効性の強弱、副作用の強さで使い分けてはいますけど、大きな違いは感じてないので、2-3剤のパターンがあって処方しています。新薬も出てきていますけどそんなに大きな違いはないしMRさんの話は聞くし、違いがあまりないから、世話になっている、頑張っているMRさんの抗ヒスタミン薬や使ってもいいかな、とは思いますけど。正直あまり抗ヒスタミン薬はどれも花粉症には効くのであまり興味はないし、使い慣れているものを粛々と処方しています」

と、ここまででもう気が付いたと思いますが、花粉症の診断、治療、抗ヒスタミン薬について多くの医師は
  • 専門外だしあまり興味がない
  • 春になると患者がくるから診察している
  • 診断、治療、処方はパターン、ルーティン、流れ作業
  • 抗ヒスタミン薬に違いがあることを知っているが、ぶっちゃけそんなに変わらない
  • 有効性・副作用(眠気)で数種類をなんとなく使い分けている
みたいな医師の本音が見えてきます。やや製品Xの話から脱線してしましますが、この状態で既存薬の抗ヒスタミン薬Marketing戦略はけっこう大変です。製品差別化があまりできない(医師がそこに興味がない)でもMRの頑張りは評価してもらえるから、SoV至上主義時代のよう「パワーと頑張りで処方獲得」ってのも割り切ったプロモーションもありだと思います。

今回の定性調査では製品xの製品特性を見てもらっての医師の反応も聞いています。

【製品Xへの反応】
  • 飲み薬1回服薬で1か月効果持続は凄い、画期的
  • 飲み忘れがない、1-2回服薬で花粉症の季節が終わるので使ってみたい
  • 1か月効果持続だと副作用が出た時の対処が困るのが懸念、様子を見てから処方したい
  • 値段が高いのを患者さんが受け入れてくれるか心配(そもそも既存薬で医師も患者も困っていないので)
  • 1カ月に1回の薬を患者さんに説明する、了承を得るのが面倒、そこに時間と手間をかけるなら既存の抗ヒスタミン薬で困ってないので既存治療のままでいいと思う
製品XをSWOTしてみると、Strengthの第一に上がってくるのが「1回服薬で1カ月効果持続」でしてこのメッセージは医師に「画期的で他の抗ヒスタミン薬とは明確に違う」ということが認知されます。一方で効果持続が長い=万が一副作用がでたら副作用も長く続いてしまう、という懸念があることも分かってきました。

ここまでの情報で1度、医師のcurrent perception、desired perceptionの作ってみましょう。
Desired perceptionは「こう思ってくれたら医師が製品Xを処方してくれる」というもので、詳細は「positioningって何?」の記事を参照ください。



こんな感じで作成していました。この時点でのcurrent/desired perceptionは仮のもので、Launchに向けてどんどんBrush upしていったら大丈夫です。このcurrent/desired perceptionを見ると、どうもcurrentとDesiredの間のgapがまだ大きくて、もうちょっと分解したほうがいいかな、って思いませんか?具体的には、currentの状態からdesiredに至る前にStepがありそうで
  1. 花粉症治療と抗ヒスタミン薬(と製品X)に興味をもってもらう
  2. 製品Xの製品特性を理解し「1回服用、1カ月効果」が競合に比べ明確に違うことを理解
  3. 製品Xの副作用継続の懸念点が払拭される
  4. 既存薬の使い慣れ(患者への説明の手間等々)<製品XのBenefitとなり製品Xを処方
くらいな感じに分解ができると思います。この分解はこのケースのようにStepの場合もありますし、いくつかの条件がクリアできたら、みたいなチェックボックスみたいな整理をしたほうがいい場合もあります。このようににStep(あるいはチェックボックス)でCurrentとDesiredのgapを分解するのは
  • 1発でこのgapを埋めるにはgapが大きすぎるから
  • Stepで一つずつ段階をクリアしたほうがアクションや活動進捗が明確になるから

でして、例えば慢性骨髄性白血病に「経口薬投与しつづければ完寛状態を維持でき日常生活を送れるようになる」という超画期的な新薬であったグリベックのような薬でしたら、わざわざこんなStepを作らなくても、P3試験データだけでこのgapを埋められますし、もはやMarketing戦略の必要がないくらいだと思いますが、多くのBrandはそこまでではないので、Stepで考えたほうがいいのでは?って思いながらBrand planを作成したほうがいいと思います。もちろん、まだ定性調査が終わった段階ですので、仮ですが。

このようにStepを使って、Desired perceptionに道筋をつける、そしてこの道筋こそが「戦略=Strategy」です。StrategyもPositioningと同様にいろんな人が好き勝手な定義、イメージで言葉を使っていますが、この図のイメージをBrand team内で共有すると考え方にブレがなくなるのでお勧めです。

ちょっと脱線しますが、このStepをどこまで登ったか?で医師を分けて、それを医師Segmentationにするのもお勧めです。この段階でも仮に

Segment(1) 全く興味無し医師
花粉症、抗ヒスタミン薬に全く興味がなくて、製品Xの話をしても興味なくスルーする医師

Segment(2)製品X製品特性理解したが…医師
製品Xの1回服用、1カ月効果」が競合に比べ明確に違うことを理解していいね、とは思ってくれているが副作用懸念や使い慣れで優って処方に至らない医師

Segment(3)副作用懸念医師
製品Xを理解して使いたい、とは思うけど副作用の懸念が強く、様子をみたい、他の医師が使って大丈夫なのを確認したいと思っている医師

Segment(4)それでも製品X面倒だから処方しない医師
製品Xを理解、副作用の懸念もなく「使うよ」というが、結局は患者への説明の手間、面倒くささから処方をしない医師

Segment(5)製品X第一選択薬医師(=Desired perception状態)

くらいに分けることはできます。ここまで細かく分ける必要があるかはわかりませんが、今はまだ仮の状態なので、とりあえず上記のようにしておくと、それぞれのSegmentの医師に対して、次のStepに移行するためにしなくちゃいけない医師のPerception changeとそのアクションがだいぶ明確になってくると思います。ここまで仮説がしっかりしてくると、医師のPts journey定量調査の準備は完了です。定量調査では
  • (仮の)Pts journeyの定量化、わからないとこを明確にして完成させる!
  • 医師の各momentでの考えを定量的に確認
  • 仮のSegmentのStepのどこにどれだけ医師がいるか?の推定
  • 製品Xの処方意向(forecastにも使う)
あたりが調査目的になりますが、それは次回の記事で

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