2023年4月7日金曜日

(7) Pts journey、患者定量調査

insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!

患者定量(Web調査)は私は大好きなんですが「予算の関係もあるし医師調査を優先」って判断がされることも多くて、実施されることが少ない調査だと思います。オンコロジーや希少疾患のようにそもそも患者人数が少ない、リクルートできない場合も多いですし、患者が治療選択への決定権が少ないことが多いのでついつい後回しになりがちですが、pts journey時代にはその名の通り患者のunmet needsや本音がブランドの成功=pts outcomeの最大化に重要なことはこのブログを読んでくださっている皆さんならお分かりだと思います。ですから、可能なら新製品発売前には1回くらい、最低限定性調査はやっておきたいものです。

一方で患者アンケートは公的機関、民間企業、製薬会社で実施されているものも多くありますので、「疾患名 患者 アンケート」で検索すると多くの情報が得られます。Pts journeyを作成する前、調査前にこういう情報はEXCELに全部まとめておくことをお勧めしていますが、患者調査も公開情報で分かっていること意外の部分をしっかり聞く調査設設計にするためにも公開されている患者調査、アンケート情報は調べておきましょう。

花粉症に関して調べてみると

平成28年度に花粉症患者実態調査(東京都)
https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/kj_kankyo/kafun/jittai/

花粉症に関するアンケート調査(株式会社アスマーク)
https://www.asmarq.co.jp/data/mr201804hayfever/

-花粉症に関するアンケート調査 -(株式会社アイスタット)
https://istat.co.jp/investigation/2023/02/result

これ以外にもたくさんでてきますが、Pts journey事前作成の時に反映しておくことと、定量調査の前にも再確認しておきましょう。

製品Xの場合、花粉症患者で全国5000万人もいるので定量調査の調査対象を集めるのは簡単、そして患者調査の回答謝礼は医師に比べると大幅に安いので、サンプル数を多くしてもコストはそこまで上がりません。今回の花粉症調査でpts journey を定量的に明らかにする、各momentの考えニーズなどを定量的にする為にn=500くらいにします。

  • 症状あるのに通院しない花粉症の人
  • 毎年通院してる人
  • 通院してたけどやめた人

みたいに患者パターンが別れるのでどうしてもn数が多くなるし、質問もそれぞれの患者群に対して作る=樹形図みたいに途中で分岐する質問票を作らないといけません。

調査対象は「花粉症の症状を自覚して自分が花粉症だと思う人」です。これを日本の人口(子ども超高齢者は除く)を反映した集団に調査回答を依頼して可能な限り日本全体に調査結果を拡大できるようにします。

花粉症の症状自覚してる患者(全員)への質問

まずは全員共通に聞くことですが

  • 年齢、就業状況など基本情報
  • 花粉症の重症度(日常生活への支障度合い)
  • 通院経験、現在の通院状況(これで質問票分岐)
くらいかなと思います。通院経験、通院状況で
  1. 花粉症で毎年受診してる
  2. 花粉症で年によって受診したりしなかったり
  3. 花粉症だけど受診したことがない
に分けます。ひょっとしたら就業状況、重症度に差があるかもしれません。ここから調査票が3つに別れるので大変です。

花粉症で毎年受診してる人

年に(花粉症1シーズンに)の何月に花粉症で通院しているか?

を定量的にきいて医師調査と同じように1-7同意質問で花粉症治療についての考えを聞きます
  • 花粉症で通院するのは治療薬をもらう為である
  • 薬局で買える薬でなく病院で処方薬ををもらうのは、病院処方薬の方が効果が高いからだ
  • 薬局で買える薬でなく病院で処方薬をもらうのは、その方が結果的に安く済むからだ
  • 薬局で買える薬でなく病院で処方薬をもらうのは、毎年そうして効果があることが分かって安心感があるからだ
  • 同じ薬がもらえるなら病院はどこでもいいと思う
  • 通院の負担(病院に行く時間、待ち時間など)で花粉症での通院をためらうことがある
この質問への回答から患者さんの本音に基づくペルソナ作成ができるように質問を作成していきます。

花粉症治療への閑雅を聞いたら次は抗ヒスタミン薬についてです。「抗ヒスタミン薬」と患者さんに聞いても分からないので「花粉症の飲み薬について」で基本情報を聞きましょう。
  • 飲み薬の種類
  • 一回の通院で何日分処方してもらうか
飲み薬についても1-7同意の質問を聞きます
  • 病院でもらう薬の有効性(花粉症の症状を抑える力)には満足している
  • 病院でもらう薬の副作用(眠気など)には満足している
  • 病院でもらう薬の価格、自己負担金額には満足している
  • 毎日服薬するのが面倒で飲み忘れてしまうことがある
  • 毎日服薬したほうがいいのは知っているが、症状が出た時だけ服用している
  • 症状が出た時にだけ服用して、薬を節約している
  • 今、服薬している薬に大きな不満はない
ここでも定性調査からの発見、気づきをどんどん聞いていきましょう。実は患者さんは頓用する人が多くて(特に軽症の患者さんは)1ヶ月ずっと効果があることにあまりニーズが乏しい可能性だってあります。

「花粉症で年によって受診したりしなかったり」の人達への質問も同じような感じですが、「毎年受診しない理由は?」は追加で聞いたほうがいいでしょう。この人たちが毎年通院するようになれば将来的に製品Xの売上に繋がる可能性あります。
  • 毎年受診しようと思っているけど、面倒でついつい忘れてしまう
  • 以前病院でもらった薬が残っているので、毎年通院しなくても薬が足りることが多い
  • 病院でもらった薬がなくても、忙しいと病院にいかずに市販薬ですませてしまう
  • 薬局で買える薬がよくなったし、値段もそこそこなので病院にこれからはあまりいかなくてもいいかな、と思う
  • ...
等々、「毎年受診をしない理由」の本音がでてくるような質問をしっかり考えましょう

花粉症だけど受診したことがない患者
Web検索で作成した粗々定量Pts journeyでもが1000万人以上いそうです。この中でも市販薬を使っている人もいるので、定量的に取っておきましょう。

Q:花粉症の症状軽減のために昨シーズン実施したことをすべて選択ください

□ 食事に気を遣う
□ 花粉症に効果がありそうなサプリを摂取する
□(病院で処方された薬ではなく)薬局で飲み薬を購入
□(病院で処方された薬ではなく)薬局での点鼻薬を購入
□(病院で処方された薬ではなく)薬局で点眼薬(目薬)を購入
□ 運動睡眠に気を遣う
・・・

上記の「実施したこと」にについて、効果や負担(費用、努力)、満足度について評価してもらってもいいかもしれません。

Q:「花粉症に効果がありそうなサプリを摂取する」とご回答いただきましたが、有効性と負担(費用、努力)、満足度を10段階で評価ください

効果
1=まったく満足していない~10=非常に満足している
負担(費用や要する努力)
1=負担は大きい~10=負担はまったくない

*参考までに調査票では慣例的に
複数選択:□、MA(multiple answer)
単選択:〇、SA (single answer)
と表記することが多いです。

この人たちにも1-7同意質問で花粉症治療についての考えを聞きましょう
  • 花粉症の症状は病院に行くほど重症ではない
  • 花粉症で病院に行くのは面倒だ
  • 花粉症で病院に行くのはお金が掛かるので行かない
  • 昔病院で薬をもらったが、効果や副作用(眠気)でいいイメージがない
  • 病院にいったほうがいいと思っているが、ついつい足が遠のく
  • 病院にいったほうがいいな、と思っているうちに花粉症の季節が終わって症状がなくなる

みたいに病院になんでいかないの?その本音は?を定量化していきましょう。

製品Xについての考え

ここも基本的には定性調査と同じでいいと思います。まずは製品Xの情報と、を患者のコメントを見てもらって回答してもらいます

【製品Xの情報】

  • 作用機序:抗ヒスタミン薬(処方される花粉症の飲み薬の多くは抗ヒスタミン薬)
  • 用法用量:1か月に1回(1回飲むと効果が1か月持続)
  • 適応はアレルギー性鼻炎(多くの抗ヒスタミン薬と同じ)
  • 安全性、副作用は既存の飲み薬と同程度
  • 1日あたりの薬価は100円(患者の自己負担は3割負担で1日30円=1か月約900円)
  • (既存のものより1.5倍程度)

製品Xにの製品情報をみて、1-7同意で患者さんの聞きます。この質問は全員に聞きますが一部質問の調整はする必要があります

  • 1回飲んだら1か月効くのは飲み忘れもないし良いと思うので試してみたい
  • 良いと思うが、既存の薬より1.5倍なので試そうとは思わない
  • 既存の薬で特に困ってないので、製品Xを試したいと思わい
  • 効果1か月=副作用も1か月続くのが怖い
  • 効果1か月=副作用も1か月続くのが怖いが、医師から勧められて説明をされたら試してもいいかな、と思う
  • 症状が出たときに薬を飲んでいるので、1回飲んだら1か月効くのは特に魅力的ではない
このくらい聞いておけば、Pts journeyの定量化、医師、患者のInsightも定量的に、将来作るSegment毎にペルソナを作る元情報にしっかりとなると思います。

医師と患者の定量調査の結果を比較することで有益な情報が鰓得ることもありまして。例えば製品Xの医師と患者の処方(使用)意向を比較すると、医師>患者の場合は「医師に患者に同意を得るよう説得しないといけない」ってことが分かりますし、逆に患者>医師の場合は、「患者が医師に薬剤がリクエスト」「医師に患者のニーズを理解してもらう=気づきをあたえる必要性」みたいに使うこともできます。以前も書いた通り有意差検定して>を決定するってのはさすがに難しいのですが、医師や患者へのインタビューした「「花粉症患者、医師の本音」をここまで長いこと考えてきたBrand Teamのメンバーなら、判断はできると思うのです。このあたりがMarketingのSceinceじゃなくてArtな部分だなと思っていますが、MarketingってArtな面も、Scienceな面も両方あるよね、っってのがMarketingの本質と思っています。

4回をかけて詳細に市場調査のデザインの仕方を説明してきました。もし製薬市場担当者の方がこれらの記事を読んでいたら「自分はここまでできているか?」を自問自答して、足りないな、って気づきが得られたら次の調査でしっかり活かして行きましょう。

製薬会社のMarketing、Brand Managerの方にはちょっと内容がテクニカルで難しいかもしれませんが、市場調査はBrand戦略のベースとなる情報、Evidenceのようなものなので調査目的、設計方法などを知っておいて損はありません。

Sov至上主義時代の市場調査と言えば、ATU調査、Tracking調査が主(=活動の結果おこったことの見える化)で、どちらかというとMarketingと市場調査担当者の間でキッチリと境目が分かりやすく分業されていました。Insight marketing時代になると、Brand Managerも市場調査担当者も「顧客の本音は何?」と”顧客の本音を調査で知って戦略・活動を立案”する重きが増してきましたので、Brand Managerも調査担当者の視点を、逆に調査担当者ももっとBrand戦略、活動の全体像を把握して調査設計をする必要があるのです。

2023年4月5日水曜日

(6) Pts journey、医師定量調査

insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!
前回の記事において、医師定性調査結果からPts journeyに沿ったInsight、医師のcurrent/desired perception(≒positioning)案、さらに製品X使用にいたるまでのStep(strategy)案が見える化できました。(案=仮説と言い換えてもいいのです)またWeb検索とかデスクリサーチで作った粗々な定量化したpts journeyの案もあります。定量調査では、それらを定量的に把握して、仮説を少しずつ確かなものに近づけていく調査です。


医師調査の調査対象は?
まず決めないといけないのは調査対象の医師の範囲です。既存品であれば、ターゲット医師だけを調査対象にすることも多いですが、今回は新製品Xで、Insight Pharma社内に「抗ヒスタミン薬を投与している医師」の情報もあまりないので、「抗ヒスタミン薬を花粉症の患者に過去1年間に1例以上投与経験がある医師」という広い範囲での調査をお勧めします。

「いやいや、これじゃ調査対象医師が広すぎだよ、年間5名以上とか、もっとPotentialの高い医師に絞ったほうがいいのでは?」という意見もあると思いますが、「抗ヒスタミン薬を投与している医師全体の市場を知りたい」のがLaunch時なので、1名以上でとっておけば、それを市場全体に拡大することできます。ここで、5名以上と制限したり、内科=50名、耳鼻科=50名…、とか割り付けると調査結果を市場全体に拡大することが難しくなるのです。調査結果を市場全体に拡大するために、調査会社と相談して、調査回答依頼はパネルの全医師(≒日本の医師の母集団に近い集団)に回答依頼をして、調査対象にならなかった医師=抗ヒスタミン薬を花粉症の患者に過去1年間に1例も処方しなかった医師、も診療科別の人数はもらうようにしておきましょう。

とはいえ、予算の都合があるのであれば、抗ヒスタミン薬1名以上を対象者にしつつ、最初の数問で市場全体に拡大したいような質問(患者数、投与薬剤、等々)を聞いて、もっと細かい質問(製品Xへの反応とか)は5名以上にのみ聞くという手もありますが、予算が許すなら1名以上がお勧めです。(high potential医師とlow potential医師の違いが見えることもありますし)

次は調査回答者数=サンプル数=n数です。製品Xの調査の場合、あとで医師Segmentを最大5つとして、可能なら1セグメントあたり30~50サンプルあるといいな、ってことで150-250くらい集められたらいいな、と思います(調査会社と相談しましょう)。サンプル数が増えれば回答者への謝礼も増えるので予算と相談、という面もあります。

市場調査結果を「有意差検定をしたい」という要望もたまにあるんですが、正直、なかなか有意差検定まで耐える調査設計は難しいのと、有意差検定をすることで得られる付加価値情報をそこまで感じたことはないのでそんなに有意差検定にこだわることはないかな、と思っています。とはいえ、”許容誤差が5%の場合「400サンプル」がひとつの目安”くらいの数字は覚えておいたほうがいいと思います。現実的に医師の定量調査で400サンプル集めることはなかなか難しい→有意差検定をしても…というのがお分かりいただけるかと思います。

ここから実際の調査票=Web調査でどんな順序で、どんな質問をしていくか?を決めます。基本的には医師定性調査と同じ流れで大丈夫です。ここから順番にどんなことを、どういう質問形式で聞いていくかを書いていきます。

患者数など基本情報
定量的にPts journeyを完成させるために必要な情報をとるのですが、この時点でForecastモデルも作っておくと「ここの数字がちょっと不明だな…」っていうのも定量調査で聞けるので意識しておくとよいので、pts journeyを定量化したForecastモデルも作っておきましょう。あとは、今後Tragettingに必用になってくる「市場の80%をカバーするために何名の医師をターゲットとする必要があるか?」というのを計算するためにも患者数を聞くのは重要です。いろいろと先読みをした上で、どんな質問をするのか?を決めていかなければないません。では具体的に聞く項目は
  • 1年間に診察する花粉症患者数
  • うち、薬物療法を実施した(処方薬を処方した)患者数
  • うち、抗ヒスタミン薬を処方した患者数
  • 抗ヒスタミン薬別の処方患者数
  • 抗ヒスタミン薬を1シーズン、1患者に何日分処方するか?(2回受診、1回28日処方=合計56日、等々)
みたな感じでしょうか。ここまで取っておくとPts journeyがWeb検索で作った粗々ものがだいぶ具体的な数字になってきます。

花粉症と治療に対する医師の考え
定量調査だと、患者数、薬剤選択の重視度、処方意向とかそういうものを聞く、ってイメージがありますが、insight marketing時代に重要な質問が「医師の考え」を聞く質問です。これを聞くことによって、医師は花粉症の治療についてどう考えているか?さらにSegment毎にわけてクロス集計したらSegment毎の考えの違いが明らかになって、Segment毎のペルソナのペルソナ、Insightを作成するのにとても役立ちます。SoV至上主義時代の定量調査のフォーマットからは外れるので、この質問を嫌がるResearch担当者はけっこういるのですが、これがないと「気持ち、考え」が分からないのです。

私はよく使う聞き方は例えば定性調査の仮説でも出てきた「多くの医師は花粉症の専門家と自分で思っていない」ってのがありましたので「私は花粉症の専門家ではない」というのに1-7同意で答えてもらう質問です。1-7とは
  1. まったく同意しない
  2. 同意しない
  3. やや同意しない
  4. どちらでもない
  5. やや同意する
  6. 同意する
  7. 非常に同意する
という7段階で答えてもらう質問です。そうするとこんな感じの結果が出てきて、Segmentごとに分けてクロス集計してみて違いがでたら、それぞれのSegmentの考え、行動からペルソナを作るのにとても役立ちます。


ではどんな「花粉症と治療に対する考え」を聞いたらいいのでしょうか?定性調査後の結果から立てた仮説の検証、こんなところで医師の考えに違いがでるんじゃないか?(=医師Segment仮説の検証)のようなものをどんどん聞いていきます。具体的には
  • 花粉症の季節に、花粉症の症状できた患者は花粉症と判断して、薬を出している
  • 正直、花粉症の診断や治療にあまり興味はない
  • 花粉症の最新治療や、新しい薬剤の情報を積極的に自ら収集している
  • 花粉症の情報はm3やMRさんから入ってくるので、自分から積極的に情報収集はしていない
  • 第2世代抗ヒスタミン薬は有効性、副作用(眠気等)の強弱によって、何種類かを使い分けている
  • 第2世代抗ヒスタミン薬はどれも似たようなものなので、あまり使い分けを意識していない
  • 患者から花粉症治療にどの薬が欲しい、とリクエストがあったらその薬を処方する
  • 第2世代抗ヒスタミン薬はあまり違いがないので、製薬会社の貢献やMRの頑張りが処方の時に影響する
  • ・・・・
みたいな感じでしょうか。後で聞く質問の「製品Xの処方意向 high/middle/low」で上記クロス集計をすると、処方意向別医師の花粉症治療への考え方の違いが浮かび上がってくる、そんな使い方を花粉症治療医(抗ヒスタミン薬処方医)全体の考え方に加え、理解するためにこの質問は使えます。

第2世代抗ヒスタミン薬の評価、抗ヒスタミン薬選択理由
定性調査の結果からも分かる通り、製品Xは「月に1回服薬」という圧倒的な差別化ポイントがあるので、これは聞いても聞かなくてもいいかな、とも思うのですが、SoV至上主義時代の偉い人たちが好きな質問で「政治的に」いれることが多いので聞いておきましょう(削除しても全く問題ないですが)

Q 花粉症の患者に抗ヒスタミン薬を処方するのに重視する項目を1=全く重視しない、10=非常に重視する、で10段階でご回答ください
  • 有効性
  • 安全性(副作用)
  • 薬価、患者負担
  • 服薬回数(1日1回、1日2回)
これくらい聞いといたらいいかな、と思います。SoV至上主義時代のTracking調査、ATU調査だと有効性をさらに分解して「効果発現の速さ」「効果の強さ」「効果の持続性」とか詳細にきいて、10個以上聞くこともあるんですが、(「ATU調査、Tracking調査というマンネリ」記事参照)そもそも抗ヒスタミン薬を「ぶっちゃけあまり変わらないよ」って思っている医師が多いって定性調査で分かっているので、細かく必要はないです。

次は各薬剤の評価です。抗アレルギー剤の売上ランキングはこんな感じなので

https://answers.ten-navi.com/pharmanews/24761/
  • ビラノア
  • ルパフィン
  • ザイザル
  • デザレックス
の4材を、「薬剤選択重視項目」と同じものを、同じように10点満点で聞いておきましょう。製品Xが有効性・安全性はザイザルと同等、ってなっているので、ザイザルは聞いておいたほうがいですね。

製品Xの評価・処方意向
定性調査で使った製品Xの情報を提示して、医師の考えを聞きます。

まずは「製品Xの説明資料をご覧いただいた上で、先生のお考えをお教えください」と1-7同意質問をします。謝礼を払っているとはいえ、提示資料ってなかなか医師もしっかりは見てくれないので、提示資料の内容をリマインドする意味もあります。あとは定性調査からの仮説の検証です。
  • 1カ月に1回服薬、というのは画期的で他の第2世代抗ヒスタミン薬とは大きな違いがあると思う
  • ザイザルと同等の有効性・安全性なら安心して処方できる
  • 1カ月効果持続するということは、副作用がでたら副作用も1カ月持続するので安心して処方ができない
  • 他の医師が処方をして大丈夫だな、と確認してから製品Xを処方すると思う

こんな感じで1-7同意をして、医師全体の製品Xに対する考え、Segmentや処方意向別でクロス集計するとここでも医師の差が浮かび上がってきて、セグメント毎のペルソナを作るときに役立ちます。

さらに深く製品Xをわかってもらうために、医師定性調査でも提示した「積極的に処方する医師」「積極的に処方しない医師」のコメントも提示して先生の考えを聞いてみます。



これも1-7同意で「医師のコメントもご覧いただいたうえで先生のお考えをお教えください」で
  • 花粉症の薬を飲み忘れる人が多いし1カ月に1回服用は利便性が高いので、患者も1.5倍の薬価は受け入れてくれると思う
  • 私の患者さんは今、処方している抗ヒスタミン薬で困っていないので、製品Xをあまり処方しようとは思わない
  • 私が処方したいと患者さんに提示しても、患者さんが拒否すると思う
  • 患者さんに説明するのは手間だし、そこまでして製品Xを処方しようと思わない
  • ・・・
みたいな感じで聞いていきます。

製品特性の資料、質問への解答、積極/非積極の医師のコメントまで見てもらうと、かなり医師の製品XのPros/Consなどの理解が進むので、ようやくここで処方意向を聞きます。

製品Xの処方意向
処方意向の聞き方には色々な聞き方がありますが、「製品Xを処方したいと思う(1-7同意)」みたいな聞き方はForeacstに使えないですし、pts journeyの定量化にも役に立たないので絶対にやめましょう。「製品Xを何%の花粉症患者さんに処方したいと思いますか?」はまだForecaast、pts journeyの定量化に使えるのですが、ここまで製品Xの話をしてきていて、この聞き方をするとかなりバイアスがかかって、高い処方意向ででるのでおすすめできません。

製品Xの話ばかりしているので、製品X処方が高くなるバイアスがある程度かかってしまうのは仕方がないのですが、できるだけバイアスを少なくするためにも、最初のほうに答えてもらった「現在の抗ヒスタミン薬投与人数」を再掲しつつ、「製品X発売後の投与人数」を聞く方法がお勧めです。

ここまで聞けたらPts journeyの医師定量調査はいいんじゃないかな、と思います。あとは医師の属性質問(勤務先施設、HP・GP、診療科など)はもちろん聞いておいたほうがいいです。それ以外にも
  • 抗ヒスタミン薬のPromotionでMR訪問を受けているメーカー頻度
  • 抗ヒスタミン薬の情報源
とかを聞いておくと、Channelをどうするか?って時に役に立ちます。これだけの情報を得られたら、Pts journeyも根拠をもってより具体的になりますし、TargettingやMRの人数(SFE:sales force effectiveness)、Segmentation、Positioningなどいよいよ本格的なBrand plan作成に進んでいきます。

その前に次回は患者Pts journey定量調査ですね。患者さんもKey stake holderなのでとても大事ですのでお楽しみに。

2023年4月4日火曜日

(5) Pts journey定量調査、その前に

insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!
医師/患者のPts journey定性調査が終わり、次は定量調査(Web調査)です。「定性調査→定量調査がワンセットだよね」と盲目的に実施するResearcher, Brand Managerもいるのですが、市場調査はお金も時間もかかりますし、今回は新製品XのLaunchで市場、医師、患者のことがあまり分からない状態なので定性調査を実施しましたが、既存Brandで仮説に自信があるのであれば、自分たちでPts journeyをupdateして、定量調査から入っても問題ない場合も多いと思います。

「しっかりと仮説が立てられ、調査設計がしっかりしている定性調査ならInsightはとれる」のですが、「定性調査をしたらInsightが取れる!」ってな勢いでBrand Teamで知りたいことリストを作成して定性調査をして1問1答インタビューのようになった定性調査を過去見たことがあるんですが、それではInsightにはたどり着き辛いですし、お金と時間の無駄なのでやめたほうがいいです。

医師インタビューの定性調査結果(あるいは調査実施前)からPts journeyの各段階(moment)における医師の考えをまとめます。これは調査会社とBrand teamのメンバーがワークショップをするのもお勧めです。

今回も定性調査後に花粉症の治療、製品Xについて顧客がぶっちゃけ、本音ペースでどう思ってるか?のワークショップをしたとしましょう

【花粉症の診断について】
  • 一部のアレルギー専門医を除き、花粉症を自分の専門と思っていない
  • 花粉症の診断は患者の自己申告、厳密に診断する必要を感じていない(抗ヒスタミン薬効いたら花粉症という診断的治療)
  • 花粉症の診療は自分の専門外で(悪く言うと)片手間で春の恒例行事と思っていて、春に鼻炎など花粉症の症状できたら、薬を出すというルーティーンのようになっている
花粉症の診断についての医師の気持ち、本音(Insight)を文章にしてみるとこんな感じでしょうか

「アレルギー、花粉症は私の専門じゃないし、春に花粉症の症状で来院したら、そりゃ花粉症だから患者の話を聞いて症状確認して、薬だしたら終わりのルーティーンだよね。特に花粉症の診断に困ってないし、正直あまり花粉症に興味はないし、粛々と患者さんをさばくだけです」

【花粉症の治療について】
  • 花粉症の患者がきたら薬を出す(抗ヒスタミン薬+点鼻、点眼など)
  • 花粉症の最新治療にあまり興味はない
  • 花粉症治療の情報源はm3やMRだが、自ら積極的に花粉症治療の情報を取りに行かない
  • 花粉症の患者の診察は流れ作業のような感じ、カルテを見たら「あ、去年も来た患者さんだ」と思う程度(診察時間も短い)
  • ・・・
「花粉症の治療について自分から積極的に情報探すことは興味がないのでしないです。抗ヒスタミン薬、点眼、点鼻薬だしたら患者さんの症状が良くなるのは分かっていますし、患者さんから文句を言われることもないので。MRさんから情報提供されたらフムフムと聞きはしますけど」

【抗ヒスタミン薬剤選択について】
  • 多くの医師が、抗ヒスタミン薬の詳細の違い、エビデンスにはあまり興味がない(MRから説明を受けて話は聞くが…)
  • 新薬がたくさん出てきているが、どれもminor changeな感じで第2世代の抗ヒスタミン薬なら、どの薬剤も大きな違いはないと思っておいる
  • 効果の強弱、副作用(眠気の強弱)で数剤を患者の要望で使い分けている
  • 患者さんに効果、副作用の強弱でいくつかの薬剤を紹介して選んでもらう医師も多い
  • 処方した薬について効かなかった、副作用が、と患者から言われることもない
  • MRさんが頑張ってくれている抗ヒスタミン薬は処方してもいいかな、と思う(どうせ同じくらいの効果安全性なら、頑張っているMRさんの薬剤でいいかな)
  • 患者から薬のリクエストがあったらその薬を処方
  • 去年と同じ薬でよかったら、患者さんに確認して同じものを処方する
「抗ヒスタミン薬にはざっくり有効性の強弱、副作用の強さで使い分けてはいますけど、大きな違いは感じてないので、2-3剤のパターンがあって処方しています。新薬も出てきていますけどそんなに大きな違いはないしMRさんの話は聞くし、違いがあまりないから、世話になっている、頑張っているMRさんの抗ヒスタミン薬や使ってもいいかな、とは思いますけど。正直あまり抗ヒスタミン薬はどれも花粉症には効くのであまり興味はないし、使い慣れているものを粛々と処方しています」

と、ここまででもう気が付いたと思いますが、花粉症の診断、治療、抗ヒスタミン薬について多くの医師は
  • 専門外だしあまり興味がない
  • 春になると患者がくるから診察している
  • 診断、治療、処方はパターン、ルーティン、流れ作業
  • 抗ヒスタミン薬に違いがあることを知っているが、ぶっちゃけそんなに変わらない
  • 有効性・副作用(眠気)で数種類をなんとなく使い分けている
みたいな医師の本音が見えてきます。やや製品Xの話から脱線してしましますが、この状態で既存薬の抗ヒスタミン薬Marketing戦略はけっこう大変です。製品差別化があまりできない(医師がそこに興味がない)でもMRの頑張りは評価してもらえるから、SoV至上主義時代のよう「パワーと頑張りで処方獲得」ってのも割り切ったプロモーションもありだと思います。

今回の定性調査では製品xの製品特性を見てもらっての医師の反応も聞いています。

【製品Xへの反応】
  • 飲み薬1回服薬で1か月効果持続は凄い、画期的
  • 飲み忘れがない、1-2回服薬で花粉症の季節が終わるので使ってみたい
  • 1か月効果持続だと副作用が出た時の対処が困るのが懸念、様子を見てから処方したい
  • 値段が高いのを患者さんが受け入れてくれるか心配(そもそも既存薬で医師も患者も困っていないので)
  • 1カ月に1回の薬を患者さんに説明する、了承を得るのが面倒、そこに時間と手間をかけるなら既存の抗ヒスタミン薬で困ってないので既存治療のままでいいと思う
製品XをSWOTしてみると、Strengthの第一に上がってくるのが「1回服薬で1カ月効果持続」でしてこのメッセージは医師に「画期的で他の抗ヒスタミン薬とは明確に違う」ということが認知されます。一方で効果持続が長い=万が一副作用がでたら副作用も長く続いてしまう、という懸念があることも分かってきました。

ここまでの情報で1度、医師のcurrent perception、desired perceptionの作ってみましょう。
Desired perceptionは「こう思ってくれたら医師が製品Xを処方してくれる」というもので、詳細は「positioningって何?」の記事を参照ください。



こんな感じで作成していました。この時点でのcurrent/desired perceptionは仮のもので、Launchに向けてどんどんBrush upしていったら大丈夫です。このcurrent/desired perceptionを見ると、どうもcurrentとDesiredの間のgapがまだ大きくて、もうちょっと分解したほうがいいかな、って思いませんか?具体的には、currentの状態からdesiredに至る前にStepがありそうで
  1. 花粉症治療と抗ヒスタミン薬(と製品X)に興味をもってもらう
  2. 製品Xの製品特性を理解し「1回服用、1カ月効果」が競合に比べ明確に違うことを理解
  3. 製品Xの副作用継続の懸念点が払拭される
  4. 既存薬の使い慣れ(患者への説明の手間等々)<製品XのBenefitとなり製品Xを処方
くらいな感じに分解ができると思います。この分解はこのケースのようにStepの場合もありますし、いくつかの条件がクリアできたら、みたいなチェックボックスみたいな整理をしたほうがいい場合もあります。このようににStep(あるいはチェックボックス)でCurrentとDesiredのgapを分解するのは
  • 1発でこのgapを埋めるにはgapが大きすぎるから
  • Stepで一つずつ段階をクリアしたほうがアクションや活動進捗が明確になるから

でして、例えば慢性骨髄性白血病に「経口薬投与しつづければ完寛状態を維持でき日常生活を送れるようになる」という超画期的な新薬であったグリベックのような薬でしたら、わざわざこんなStepを作らなくても、P3試験データだけでこのgapを埋められますし、もはやMarketing戦略の必要がないくらいだと思いますが、多くのBrandはそこまでではないので、Stepで考えたほうがいいのでは?って思いながらBrand planを作成したほうがいいと思います。もちろん、まだ定性調査が終わった段階ですので、仮ですが。

このようにStepを使って、Desired perceptionに道筋をつける、そしてこの道筋こそが「戦略=Strategy」です。StrategyもPositioningと同様にいろんな人が好き勝手な定義、イメージで言葉を使っていますが、この図のイメージをBrand team内で共有すると考え方にブレがなくなるのでお勧めです。

ちょっと脱線しますが、このStepをどこまで登ったか?で医師を分けて、それを医師Segmentationにするのもお勧めです。この段階でも仮に

Segment(1) 全く興味無し医師
花粉症、抗ヒスタミン薬に全く興味がなくて、製品Xの話をしても興味なくスルーする医師

Segment(2)製品X製品特性理解したが…医師
製品Xの1回服用、1カ月効果」が競合に比べ明確に違うことを理解していいね、とは思ってくれているが副作用懸念や使い慣れで優って処方に至らない医師

Segment(3)副作用懸念医師
製品Xを理解して使いたい、とは思うけど副作用の懸念が強く、様子をみたい、他の医師が使って大丈夫なのを確認したいと思っている医師

Segment(4)それでも製品X面倒だから処方しない医師
製品Xを理解、副作用の懸念もなく「使うよ」というが、結局は患者への説明の手間、面倒くささから処方をしない医師

Segment(5)製品X第一選択薬医師(=Desired perception状態)

くらいに分けることはできます。ここまで細かく分ける必要があるかはわかりませんが、今はまだ仮の状態なので、とりあえず上記のようにしておくと、それぞれのSegmentの医師に対して、次のStepに移行するためにしなくちゃいけない医師のPerception changeとそのアクションがだいぶ明確になってくると思います。ここまで仮説がしっかりしてくると、医師のPts journey定量調査の準備は完了です。定量調査では
  • (仮の)Pts journeyの定量化、わからないとこを明確にして完成させる!
  • 医師の各momentでの考えを定量的に確認
  • 仮のSegmentのStepのどこにどれだけ医師がいるか?の推定
  • 製品Xの処方意向(forecastにも使う)
あたりが調査目的になりますが、それは次回の記事で

(4) Pts journey定性調査、患者インタビュー

insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!
今回のテーマは「Pts journey定性調査、患者インタビュー」です。市場調査は特に好きなので、ついつい長くなってしまいます…このペースだと製品Xの発売までに記事が何本になるのか?と自分でも心配になのですが、楽しみながら記事を書いていこうと思います。

Brandによっては、患者が治療、処方への医師決定関与が少ない場合は患者調査をわない場合もあるのですが、Insight Marketing時代はPts focus →患者ニーズをしっかりと理解し、時には医師が理解していない、認知していない患者ニーズが処方獲得&pts outcomeの向上につながることもよくあるので患者調査は大事だと思います。もちろん、希少疾患で患者のリクルートができない場合は、患者会から起縁で紹介してもらったりもできますし、それも難しくて調査自体ができない場合は患者のTwitter、ブログからの情報収集で代用したりします。市場調査でも、患者会、SNS検索でも患者さんのPts journey、unmet needsを知ることはとても大事なのは言うまでもないと思います。

患者インタビューもPts journeyに沿って患者さんにインタビューするのが定石です。今回は
  • 花粉症で抗ヒスタミン剤処方薬服薬患者(5名)
  • 花粉症で処方薬を服薬していない患者(5名)
の合計10名をインタビューするのですが、ここでは「花粉症で抗ヒスタミン薬の処方薬を服薬した患者」についてのディスカッションフローを考えていきましょう。「花粉症で処方薬を服薬していない患者」も基本的には同じ流れですので。

Warm-up、ラポール形成(5分)
家族のこと、仕事のことなどを雑談してicebreakする時間

花粉症の症状とそれについて取った行動について(15分)
  • はじめて花粉症の症状を自覚したのはどんな症状?
  • それは何年前か?
  • 最初に症状を感じで、そのあとどんな行動をしたか?(直ぐに病院?まずはサプリ?市販薬?等々
花粉症の患者さんは長いこと花粉症を毎年経験していると思いますが、その人が初めて花粉症の症状を自覚して、その後、どういう行動をとった(病院に行くまでの期間)を聞きます。

例えば私は物心ついてからずっとギ花粉症で、目の痒み、朝起きたら目ヤニで目が開かないほどで、子どもの頃はずっと我慢していて、病院に行くという発想も私も親も当時はありませんでした。そして1-2か月して春が終わるまで我慢したら花粉症の季節は終わる、というのを繰り返していました。

最初に花粉症で病院へ+処方薬(15分)
  • 花粉症で病院に行こうと思ったきっかけは?
  • どこの病院に行きました?その理由は?(誰かの紹介?とか)
  • そこで医師に何を言われたか?(診断された?)
  • どんな薬を処方されたか?(飲み薬、点鼻、点眼、分かればブランド名も)
  • 薬を飲んでどうだったか?
私は高校生になるとさすがに勉強に集中できない、など不都合があり、ようやく病院に行きました。同級生が処方薬を飲んで良くなったから、ってのを聞いてその人と同じ近所の内科クリニックにいったと思います。もう30年前なので、どんな薬を貰ったかは覚えてませんが、飲み薬、点鼻、点眼薬をもらいました。薬を飲んだら劇的に効果を感じました。

製品Xの場合は、まずは「競合の抗ヒスタミン薬からいかにシェアを奪うか=Brand Choice」が主戦場ではありますが、通院患者を増やすことも将来的には大事になる可能性もありますし、情報をとっておいて損はありません。(こういう画期的な新薬は外資系だとGlobalがやれることは何でもやれ!と圧を掛けてきますし)

現在の花粉症の毎年の治療と処方薬(15分)
  • 今も毎年花粉症で通院して、処方薬をもらっているか?
  • 毎年続けているなら、その理由は?
  • 通院しないこともあるなら、その理由は?
  • どんな薬を処方されているか?(飲み薬、点鼻、点眼、分かればブランド名も)
  • その感想は?
  • 来年はどうするか?
私はその後は毎年、病院にいって90日分の薬を(安くするために)一度にもらって2月から4月末まで服用しています。飲み薬はザイザル、点鼻薬はナゾネックス、点眼薬はパタノールをもらっています。効果は満足して、ほぼ内服薬だけで大丈夫ななんですが、花粉飛散予報で大量飛散が予想され外出しないといけない日は点鼻薬をしてから外出してます。点眼薬は痒くなったら、ですね。それでほぼ鼻が詰まることはないのでありがたいです。毎年このパターンで通院服薬しているので、来年からもずっとおなじことを繰り返すと思います。
*事前に薬の写真を撮ってもらうとかしてBrand名が分かるようにする方法もあります

さて、ここまで聞いて50分。ここでもせっかくなので、医師インタビューの時と同様に「製品X」についても聞いておきましょう。

製品Xについて(20分)

この段階での製品Xのprofileは医師に提示したのと同じ、このくらいのものを提示します。患者さんにも分かりやすいように改変する必要はあります。

作用機序:抗ヒスタミン薬(処方される花粉症の飲み薬の多くは抗ヒスタミン薬)
用法用量:1か月に1回(1回飲むと効果が1か月持続)
適応はアレルギー性鼻炎(多くの抗ヒスタミン薬と同じ)
安全性、副作用は既存の飲み薬と同程度
1日あたりの薬価は100円(患者の自己負担は3割負担で1日30円=1か月約900円)
(既存のものより1.5倍程度)

「このような薬があったらどう思いますか?」とここでもまずは自発的な意見を聞きます。どくに気になったことは?などProbeをするのは医師調査と同じです。ただ患者さんは医師と違って薬に詳しいわけではないので、言葉に詰まったら、助成して聞く必要が多くあります。
  • 製品Xを使ってみたいと思いますか?その理由は?
って聞いても詰まる場合も多いから、医師の時と同じように提示資料を作るのが有効です。具体的には「製品Xを積極的に服用してみたい患者のコメント」と逆に「製品Xを積極的に服用したいと思わない患者のコメント」を提示して感想を話してもらうと、だいぶ回答しやすくなりますし、製品特性をみただけでは気が付かなかった製品Xのいいところ、悪いところもこの資料をみたから気が付くこともあるのは医師インタビューの時と同じですね。



Pts journeyの調査結果をどう報告書でまとめるか?
Pts journeyの医師・患者調査のディスカッションフローの案の説明が終わったので、報告書をどのようにするか?も説明しておきます。Pts journeyに沿ってディスカッションフローを組んだので、Pts journeyのmoment毎に医師/患者の発言→その時の気持ち、Unmet needs, driver/barrierを整理して報告書にしてもらうのがお勧めです。あとは調査会社から発言録をもらっておくのも忘れないでください。後になってInsight generation workshopなんかで「生の発言は何だったっけ?」って思うことがたまにありますし、MRへの説明資料なんかに「医師の生の発言」を使うと生々しさ故、伝わりやすいこともあります。報告書のPowerPoint のテンプレートですが、テンプレートが変わると図表をコピペした時に色やフォントが変わってしまうので、最初から自社のテンプレートを調査会社に送って、自社のテンプレートで報告書を作ってもらうのもお勧めです。

どこまでは製薬会社内の市場調査担当者の仕事か?
医師、患者のPts journey調査の流れ、質問、報告書の内容を書いてきましたけど、どこまでが製薬会社の市場調査担当者の仕事なんでしょうか?調査会社との仕事の境目はどこなんでしょうか?

今回の製品Xのように、新製品発売の2年前くらいに「発売までの2年間の調査をひとつの調査会社に依頼してパートナーとして仕事をしてもらう」ことがあると思います。この場合は、コンペをしてどの調査会社に依頼をするかを決めることが多いのですが、この場合には製品XのBrand teamと調査会社の担当者はかなり密に仕事をするようになりますし、相互理解もかなりしっかとした上で調査設計ができるので、上記のような調査の概略「Pts journeyにとって定性・定量調査をしたい」と指示するだけで、私が記事に書いたような調査設計=Brand launch planも鑑みた調査内容がスパッと出てくるのが理想です。その為には
  • 調査会社の担当者がBrand teamの一員としてWorkshopや会議に参加する
  • 調査会社の担当者がその会社のBrand planのフローを知っている
必要があるので、そうなるとほぼその製薬会社に常駐することになり(稀に常駐するケースもありますが)現実的には難しいです。Launchまでの包括契約だっとしても、製薬会社の調査担当者が私が書いたくらいの内容を口頭でもいいので、調査会社に説明しないと、期待した調査実施、分析、報告書は難しいと感じています。

Launch前の一括契約じゃない単発の市場調査ですと、さらに調査会社の人の当該疾患への理解、調査の目的などが伝わり辛いので、そこは製薬会社の調査担当者がさらにしっかりと調査設計に関わっていく必要があります。私は定性調査のディスカッションガイド、定量調査の調査票も、調査結果をどう使うか?のイメージが明確なので、自分自身で全部書くことがほとんどでしたが、それはさすがにやり過ぎと自覚はありますが、とはいえ市場調査担当者は自分で調査票を書くことができる、報告書を書くことができる、レベルのスキルは持っているべきと思います。

米国の場合は製薬市場調査会社がかなり戦略まで入り込んで、その製薬会社内の調査担当者、時にはBrand Managerのような仕事をしていることがあるのですが、日本ではそこまで製薬会社内に入り込んでいる調査会社はほぼないと思います。特にLaunch時は一時的(1-2年)製薬会社のBrand teamの負荷がかかるときに、調査会社の人が米国のように深く製薬会社に入り込んでいくというビジネスがもっと進んでもいいんじゃないかな?と思っていますし、そういう時代が近い将来くるかもしれませんね。

次回の記事はPts journeyの定性調査の結果が出たら定量調査(Web調査)をする前にすることです。


(3) Pts journey定性調査、医師インタビュー

insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!
Web検索、デスクリサーチで大雑把な定性、定量のpts journeyがおぼろげにできてきて、定量的には「実際にどのくらいの花粉症患者が毎年通院してるか分からない」とかのは必要だけど定性的に「薬剤選択の時に医師はこう思うんじゃないか?」「患者が花粉症の症状があるのに病院に行かないのはこういう理由では?」みたいなたくさんの仮説が出てきたと思います。

ここまできたら製品Xのpts journey調査(定性→定量)をする時がきました。Web検索、デスクリサーチで仮説を作らずにpts journey の市場調査をする場合もあるのですが、分かってること、分からないこと、知りたいこととかを事前に整理(ExcelでLogic tree形式でまとめるのがおすすめ)しておいたほうが調査の目的がぶれません。どんな市場調査もそうなんですが「調査前にブレインストームして知りたいことを洗い出して」それを定性調査で聞くのは、ただの知りたいことリストを調査対象医師患者に投げるだけで、調査の深掘りできない、抜け漏れが多くなるのであまりお勧めできません。

ここら辺で調査会社に見積もりを出すために
  • 調査目的
  • 調査対象者
  • 調査対象人数
  • インタビュー時間
  • 調査スケジュール
を決めて調査会社に見積もりを依頼します。

新製品Xの場合はこんな感じ

調査目的
  • Pts journeyに沿って医師患者の花粉症治療、抗ヒスタミン剤投与の各momentの本音を深掘りして知る。
  • 調査対象者、人数
  • 花粉症で抗ヒスタミン剤を5名以上に処方した医師(8名)
  • 花粉症で抗ヒスタミン剤処方薬服薬患者(5名)
  • 花粉症で処方薬を服薬していない患者(5名)
人数対象者なんですが、感覚値ですが、このくらいの人数だとなんとなく共通項が明らかになり、これ以上人数を増やしても新たな発見が少なくなると感じてます。この辺りは調査会社とも相談です。

インタビュー時間
定性調査は60分で終わらせるのが理想ですが、pts journey 調査は長くなるので90分おすすめです。

調査スケジュール
4月1日に見積もりを出したとして
4月上旬、見積もり→調査会社決定発注
4月下旬、調査票確定
5月中旬、実査(GWあるので…)
6月上旬、書き起こし納品
6月中旬、報告書納品

くらいが標準的なスケジュールだと思います。見積から2〜3ヶ月は確保しておきましょう。

見積もりがでてきて、調査会社も決まり調査票、というか定性調査なのでディスカションガイド、インタビューガイド、など色々な言い方ありますが、私はディスカッションガイドと読んでいますが、その作成です。

市場調査をするときは「顧客の脳内を奥まで写し取ることを目標に」とよく言っているのですが、バイアスを掛けず、顧客の本音をどこまで引き出すか?が大事です。ですので、pts journey調査の医師調査の場合、大きな流れはこんな感じかな、と思います。

Warm-up、ラポール形成(5分)
医師の専門領域など雑談して、icebreakする時間

花粉症の診療について(5分)
  • 花粉症の治療をするようになった理由
  • 花粉症の治療、抗ヒスタミン薬への興味度合い
内科、耳鼻科、いろんな診療科の医師が、たぶん専門外で花粉症の治療をして抗ヒスタミン薬を処方していると思いますがまずはその理由をバイアスを「非助成で」「医師のいう通りに」聞き出します。ひととおり聞いたら「あんまり専門じゃないのに花粉症の治療をしている理由は?」など深堀していきます。調査用語でこれをプローブといいます。

ここからいよいよPts journeyに沿った質問です。医師調査の場合は、「診断」「治療」「抗ヒスタミン薬のBrand choice」「服薬継続」あたりを順番に、非助成→助成で聞きたいことを聞いていきます。

花粉症の診断ついて(10分)
花粉症の診断はどのようにしているのか?(まずは非助成)
仮説としてはスギ花粉症の季節に鼻炎、目のかゆみがあったらそのまま花粉症と診断していて、特にそれで困っていない、とは思いますが。

花粉症の治療について(10分)
ここではどんな治療をしているか?を漠然と聞くよりも医師が回答しやすい、本音がしやすいような提示資料を使うのも有効です。このケースでは、ここで

直近で花粉症で来院した10名の患者への治療を教えてください。みたいな記入シート

何かしらの処方薬を処方した(  )人
点鼻薬を処方した(  )人
点眼薬を処方した(  )人
経口薬を処方した(  )人
抗ヒスタミン薬を処方した(  )人

を準備して、ここで「この薬物療法を使用した理由は?」を聞いていくのですが、今回は「(他剤ではなく)抗ヒスタミン薬を処方した理由は?」を中心に聞きます。花粉症の治療の標準が抗ヒスタミン薬だと思いますし、製品Xの直接の競合は抗ヒスタミン薬なので、ここはそんなに深堀しなくてもいいかもしれません。

抗ヒスタミン薬のBrand choice(20分)
ここで記入シートで「抗ヒスタミン薬を処方した人数」をさらに分解してBrandg毎に分けてもらって、そのBrandを処方した理由を聞きます(まずは自発、非助成で)。その後に、各ブランドについて詳細聞きたいですが、あまりにも数が多いので
  • 抗ヒスタミン薬内での安全性・有効性の違いは?
を自発的に聞いて、もしあまり答えが出てこないようなら、それは「あまり抗ヒスタミン薬内での安全性・有効性の違いを考えたことがない、興味がない」ってことなんで、それはそれで重要な情報として

みたいなものを提示して「こんな各薬剤を安全性・有効性をプロットしたものがあるんですが…」と意見を聞いて深堀していくという手もあります。

花粉症患者の服薬継続(5分)
スギヒノキ花粉症は3-4月なので、多くの患者は1回か2回薬をもらいに病院にきて終了、だと思いますが自発的に
  • どのくらい花粉症で来院するか?
  • 薬は何日分だすか?
  • その理由は?
みたいな確認したいことを聞きます。ここまでで55分で、「ん?これならインタビュー時間は90分ではなく60分でいいでは?」と思いますが、せっかくの機会なので新製品Xの製品Profileを見せて反応を聞いておいて、「製品Xに対する本音=Insight=Current perception」をある程度、とっておいてこれから作成するDesired perception(≒positioning)と、そのgapを埋める戦略、アクションもイメージできるような情報をこの段階でとっておいたほうが今後、役に立ちます。というわけで、次は

製品X提示→医師の反応→処方意向(30分)
この段階での製品Xのprofileはこのくらいのものを提示します。

作用機序:抗ヒスタミン薬
用法用量:1か月に1回(1回飲むと効果が1か月持続)
適応はアレルギー性鼻炎(多くの抗ヒスタミン薬と同じ)
安全性、副作用はザイザルと同程度
1日あたりの薬価は100円(患者の自己負担は3割負担で1日30円=1か月約900円)
*参考:ビラノア=61.9円、デザレックス=51.7円、ルパフィン=54.9円(2022年4月時点)

「このような製品があったとして、ご覧になってどう思われました?」とここでもまずは自発的な医師の発言を聞きます。特に気になったことは?などProbeをして、ここは時間をしっかりとりたいところです。

ひとしきり聞いたら、次は記入したもらったシートにある「抗ヒスタミン薬を処方した(A)人」をもう一度提示して、「製品Xが発売されたらこの患者さん達をこの製品Xに切り替えますか?」で、まずは何人に製品Xが使われるか確認します。全員を切り替える医師、一部を切り替える医師、まったく製品Xを処方しない医師、いろいろなパターンがあると思いますが、大事なのはその数字より
  • なぜその人たちに製品Xを処方したいと思ったのか?
  • 製品Xに切り替わらなかった人の理由は?
などを本音の製品Xの処方Driver/Barrierが分かるまで深堀していきます。

もう一押しするためにこんな提示資料を作って「製品Xを積極的に処方する医師のコメント」を提示して反応を得る方法も有効です。



こういう提示資料を作成するためにも、事前の粗々なPts journeyを定性的に考えておくのが大事で、そうしないと作れないです。聞き方は「積極的に処方する先生はこういうことをおっしゃってますが…」とまずは自発的に意見を求めて、この部分は賛成、この部分は同意できない、その理由、みたいな聞き方をすると、先生の考えが出やすいと思います。

逆の「製品Xをすぐには処方しない医師のコメント」も同様にとりましょう。ここはPros/consの両面から聞いたほうがいいです。


これを見せることによって、医師が製品特性を見たときに気が付かなかった懸念点に気が付くことがあります。ここでは例えば「1か月有効ということは副作用も1か月続く、副作用が怖いから処方しない」ってところでしょうか。

ここまで聞いて、最後にもう1回「先生の患者10名に最終的に製品Xを何名投与するか?」とその理由を聞きます。ここまでくると、他の医師の意見という形で製品XのPros/Consも理解した上での処方意向なので、発売後の実際の処方意向に近いものがとれるのではないかな、と思いますが。(定性調査なのでそれを求めていないのですが)

調査インタビューで実際に医師と会話するのはインタビュアーです。なので、ここでつらつらと書いたような聞きたいこと、その背後にある仮説はしっかりとインタビュアーさんにインプットする必要があります。私は過去には複雑な調査の時には(もちろんお金はお支払いして)インタビュアーさんを1日確保して、Pts journeyの説明、仮説の説明、インタビューのRole playまで実施することもありました。

定性調査の失敗でよくあるのが、インタビュアーさんが聞きたいことを聞いてくれない、欲しい情報が得られなかった、というものですが、その多くは上記のような事前準備で会回避できると思います。

とはいえインタビュアーさんの質、合う合わないはあるので、上手なインタビュアーさんを確保しておくのはとても重要ですね。(フリーランスの方もいらっしゃいますし)

医師のPts journeyの調査だけで記事が長くなってしまいました。次回は患者調査です。


2023年4月3日月曜日

(2) Insight時代のBrand plan:Pts journeyの定性化

insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!

Pts journey を(ざっくりと)定量化しました。SoV至上主義時代も実はPts journey の定量化はやっていて「leakage analysis 」と言って、どこで患者を失ってるか→どこ(Brand choiceとか)に注力すべきか?という分析は行われていました。今回のテーマはpts journeyを定性的に考える、でして、insight時代のマーケティングに必須な各momentでの顧客(患者、医療関係者)の気持ち、本音を彼ら彼女らになりきって、自分に憑依させて(ガラスの仮面の北島マヤのように)考える力が必要です。

既発売のBrandだとその領域の知識がBrand Teamにあるので、Pts journeyのUpdateも簡単ですし、花粉症のように身近な疾患だと新製品でも想像力を働かせて、Brand teamで集まってワークショップしたらけっこう多くの情報が集まってInsightに近づけます。希少疾患や癌など、身近でなく感情移入、憑依が難しい場合は、私は患者ブログ、SNS(特にtwitter)で情報を収集します。(患者ブログ、twitterの患者情報まとめEXCEL作ったりもします)そうすると、患者やその家族の気持ちが正直に書かれているものが多くあり、「もし自分がその病気だったら?」って感情移入、憑依することがけっこうできたりします。

花粉症のPts journeyに戻ります。

これが前回作成したWeb検索した情報をもとに作成したざっくりとしたpts journeyです。こうやってみると、まだまだ粗いですけど、この段階ではこんなもんでOKです。各momentにおいて顧客、スギ花粉症の場合は患者と医師が何を考えて、行動して、望む行動をするドライバーとバリアを考えて行くのがいいと思います。まずは「症状自覚→通院」についてまず、考えてみましょう。

症状自覚→通院

ここでの考えるべきポイントは「花粉症の症状を自覚したら、なんで病院に行くの?行かないの?」を想像して考えることです。

花粉症の症状で病院に行く理由

  • 症状で日常生活、仕事に支障がでる、
  • 病院に行く手間、時間、お金をかけてでも症状をなんとかしたい
  • 新しい処方薬は眠くならないのを知って安心して処方薬を貰えるようになった
  • OTCと比較検討したら30日分以上処方してもらえたら処方薬のほうが安い
  • それでも病院に行くのは面倒くさい
花粉症の症状で病院に「行かない」理由

  • 処方薬がいいのはわかるけど、病院にいくのが面倒
  • OTC出てきたしそれで充分、少し高いけど、病院に通うよりマシ
  • 毎年花粉症の症状つらいけど、なんやかやで我慢してたら1カ月経って花粉症の季節が終わって、花粉症の症状が改善されている
  • 処方薬って副作用とか強そうでなんだか怖い、サプリとかで済ませたい
  • そもそも何科を受診したらいいのかわからない。耳鼻科??
花粉症だとスラスラとでてきませんか?こういう本音(≒insight)を書きだしていくときには「口語」で書くのがお勧めです。ここで例えば「通院負担」って書くと本音、気持ちも部分が一気になくなってしまいます。それが「忙しくてついつい病院にいくのを忘れて先延ばしにしてしまう」って書けば、背後にある気持ちも内包できます。本音殺しはInsight時代のMarketingにおいては大罪です。

続いては、医師のBrand Choiceについて考えてみましょう

医師のBrand Choice

まずは現在の抗ヒスタミン剤、どのBrandを使うのか?についての医師の考え、気持ちを想像してみましょう。「いやいや、あとで定性調査のインタビューするんだから、事前に考えなくてもいいでしょ?」意見もあるとは思いますが、私は定性調査でインタビュアーにProbeポイントや、聞きたいポイントをしっかりとインプットするためにも、定性調査前にBrand teamで考えることをお勧めしています。もちろん、医師ブログ、Twitterなんかも情報源になります。

抗ヒスタミン薬の選択理由

  • 効果が強いのは副作用も強いし、3つくらい頭において、患者さんの症状に応じてその3つから処方してる、種類が多すぎて分からないし、大差はないので
  • 患者さんがリクエストしたらそれを出してます。そもそも抗ヒスタミン剤にはあまり興味ないです
  • 正直、あまり違いがないのでMRさんとか会社の貢献が頭をかすめます
  • 抗ヒスタミン薬、点鼻薬、点眼薬、なんとなく頭の中でセットになって出してますね
  • 同じ薬だして患者さんに怒られたことないし、いつも同じ抗ヒスタミン薬です
  • 抗ヒスタミン薬の一覧を作成して患者さんに選んでもらってます。どれも大差ないし、患者さんに選んでもらったほうが問題起こりにくいですし
みたいな感じで、1000万人単位の患者がいろんな診療科(主に開業医)にくるので、花粉症といえば抗ヒスタミン薬、そんなに差がないし、そもそも興味がない、みたいな感じという仮説ができたとします。

既存品、競合がガチンコでシェア争いをしているような場合は、
  • 自社製品/競合製品についてどういうイメージをもっているか?
  • 自社製品/他社製品をどうやって使い分けているか?
を考えてみるのもお勧めです。

そして花粉症の新製品Xに戻ると、1回服薬するとザイザル並みの有効性・安全性で1カ月効果が持続く薬でした。ここで、「製品Xが発売されたら医師はどう思うか?」を想像してみるのもいいと思います。

製品Xの製品特性を見てどう思ったか?

  • 効果が1カ月持続するのは凄い、けど副作用がでたらそれも1カ月続いて途中でやめられない、そこが心配
  • 1カ月効果が続くなら飲み忘れなくていいね、その場で飲んでもらってもいいし
  • 1カ月効果続くような薬って、事前に1日1回の錠剤を一定期間試して、安全性を確認してから長期効果のある薬剤を服薬する場合あるけど、その縛りはないの?
  • 薬価高そう…
  • 2カ月効果持続したら、花粉症の季節に1回飲むだけでいいのに…2カ月だと2回飲まないといけないから患者さん、忘れそう
  • 1日薬価が既存薬とそんなに変わらないなら処方してみたい。花粉症の薬の値段に患者さんは敏感だから。
とか、色々なことが考えらると思います。

Pts journeyの各momentで医師、患者、時には患者家族、看護師、薬剤師がどう考えているか?製品Xが出たらどう思うか?を事前に考えておいて、まとめておくと、この後に控えているPts journeyの定性調査→定量調査で聞きたいこと、明確にしたいことがだいぶBrand Teamメンバーの中でも整理整頓されていくと思います。私はPts journeyごとにわかっていること、仮設、クリアにしたいことをLogic Treeみたいな形にして調査設計に役立てていました。

次のStepはいよいよPts journeyの市場調査(定性→定量)です。




(1) Insight時代のBrand plan:Pts journeyと定量化

 五月雨式に記事を上げていましたが、Insight marketing時代のBrand planの作成プロセスを最初から最後まで、可能な限り整理整頓して書かないと、と思い重い腰を上げました。既存Brandのplan作成も新製品発売のplanの基本的には同じProcessなので、ここではスギ花粉症の架空(そして現実ではあり得ない)新製品=”製品X”のLaunch planを例に具体的にBrand planを作成していきたいと思います。

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!

貴方はInsight Pharmaに転職し2年後に「アレルギー性鼻炎」の適応で発売される1回飲めば1ヶ月効く経口薬=製品XのLaunch leader(Marketing部門所属)として新しいPositionに就きました。状況としては

  • この製品がInsight pharmaにとって2製品目の上市
  • 既存の製品はパーキンソン病治療薬でMR40名体制で神経内科にPromotion
  • 製品XのP3試験の結果は安全性、有効性ともに良好な結果
  • 日本市場のメインのターゲットはスギ花粉症患者
  • 作用機序は抗ヒスタミン剤
  • 有効性、安全性はザイザルと同等
  • 1回服薬したら効果は1ヶ月持続
くらいの情報しかまだありませんし、アレルギー性鼻炎の情報はInsight pharma社にはまだありません。白紙を渡され、そこにLaunch Brand Planを作成しろ、と言われて何から手を付けたらいいのか、と戸惑うかもしれません。とにかく、まずはデスクリサーチで調べることから始めましょう

「アレルギー性鼻炎」「花粉症」で検索するのは簡単ですが、ここから「さらに何を調べたらいいのか?」が分からないと調べられないのです。闇雲に検索することも時には必要なんですが、まずはアレルギー性鼻炎、特に(スギ)花粉症の治療はどうなっているか?を調べるのが第一歩で、抜け漏れなく調べるために、Pts Journeyの流れに沿って定性・定量の両面で調べるのがお勧めです。


Pts journey、Customer journeyなどいろんな言い方がありますが、患者(顧客)が自社製品含む治療に至り、治療を継続する上流から下流までの流れ(Journey)を見える化したものがPts journeyです。よくあるパターンは上流から
  • Prevalence:(花粉症と気が付かずとも)花粉症の症状を自覚している≒有病率
  • Seek treatment:この症状を病院を主訴に医療機関にを受診する
  • 診断:花粉症と診断される
  • Treatment choice:薬物療法、その他療法レベルでどの治療が選択されるか
  • Brand choice:薬物治療をした場合、どの製品(自社製品)が選べれるか
  • Adherance:自社製品がどれだけ服薬継続されるか
みたいな流れが典型的なPts journeyです。最初の時点では分からないことは分からない「?」で残しておいて大丈夫です。分からないことは後で市場調査で調べればいいですから。

色々な情報を調べても忘れちゃうので、私はEXCELを使って調べた情報を記録しています。

「花粉症、患者数」で検索すると環境省のこんなページが出てきます。

花粉症の有病率が42.5%、スギ花粉症の有病率が38.8%という数字が得られました。日本の人口が1億2000万人くらいですから、花粉症の人が5000万人くらいいる、という計算です。注意したいのが「有病率」ということばで、42.5%が「医療機関を受診して診断されている人数から計算」したのか「疫学的調査を行って調べた」ので意味が変わってきます。

松原篤 他 日本耳鼻咽喉科学会会報123-487図2「許可を得て改変」

と書いてあるので、この元文献(?)を見に行くのが早そうなので、検索したら見つかりました。

「アンケート調査 の概略は,年齢,性別,居住する都道府県,スギ花粉 症,スギ以外の花粉症,通年性アレルギー性鼻炎の有 無,ならびに鼻以外のアレルギー性疾患の有無…」とあるので、これは疫学調査ですので、Pts journeyでいうところのPrevalence≒(症状の自覚がある)花粉症の人数が日本で約5000万人くらいいることが分かりました。

実際には「ほんとうにこの数字は正しいの?」ってのをダブルチェックするようにします。今回のこの数字は日本耳鼻咽喉科学会の1万人を超える大規模が疫学調査なので信ぴょう性は高そうです。(調査回答者が耳鼻科医の家族ってとこは、ちょっとバイアスかかっているかも、とは思いますが)

Prevalenceが分かったら、どんどん下流を調べていきます。「seek treatment=医療機関の受診」「診断」等々です。同様に検索するとこんな情報が
  • あなたは花粉症ですか?(n=1000)
  • 花粉症である(病院で診断された) 21.3%
  • 花粉症である(病院には行っていない) 19.5%
  • 花粉症だったことがあるが、現在は症状がない 6.2%
  • 花粉症になったことはない 39.9% 
  • 花粉症かどうかわからない 13.1%

n=1000でけっこう大規模な調査、20-60代の男女に無作為で聞いている感じだし信ぴょう性はありそう。「花粉症であると病院で診断された」人が21.3%なので、日本の人口1億2000万人×21.3%=2500万人くらいが「病院で診断された」ことがある=症状がある人の半分が花粉症と病院で診断されたことがあるってことです。

次はどんな治療をしているか?ですが同じ調査にこんなデータがありました。

「医者に処方された内服薬を飲む」が30.4%

ですが注意しないといけないのは%の分母は何か?で資料を見ると分母の n=408で自己申告で自分は花粉症だ、という人なのが分かりますので、5000万人*30.4%=1500万人くらいが「医者に処方された内服薬を飲む」と計算できます。ここで
  • 花粉症であると病院で診断された:2500万人
  • 処方内服薬の飲む:1500万人
って数字がでてきて「常識的に考えて、病院いったら花粉症の内服薬処方されるよな…ここで1000万人漏れる(病院行っても内服薬処方されない人が1000万人いる)のはおかしいよな…」って考えたかた、とてもいい感覚です。デスクリサーチの数字はまだまだざっくりなので、そこはその懸念をpts journeyにメモしておいて、今後の市場調査などで解決していったらいいのです。デスクリサーチ時点では「だいたいこんな感じ」という大枠を理解するのが大事です。

次は「薬物治療」なので直接の競合は同じ作用機序の抗ヒスタミン剤ですので、そのシェアや投与患者数を調べます。


によると、第二世代の抗ヒスタミン剤の売上が出てきますが、うーん、数が多くて難しい…売上トップのピラノアが165億円売上で、薬価が一錠71.3円→1日1回1錠服薬なので、花粉症は2ヶ月続く、年中アレルギーがあるから服薬してる人もいる→ざっくり平均投与期間が3ヶ月と仮定すると、250万人くらいが服薬してる計算に。欲しい情報は
  • 薬物治療薬中の患者の何%が抗ヒスタミン剤を服薬しているか?
なので市場調査などで調べるとして、とりあえずは「ほぼ全ての薬物治療患者が抗ヒスタミン剤を投与される」し「Topシェアの薬剤は100万人単位で服用している」くらいの規模間をイメージしたら、この時点では十分だと思います。製品Xの競合は「毎日服薬する抗ヒスタミン剤」って考えたら、ひょっとしたら抗ヒスタミン剤の各Brandのシェア%はたいして必要な情報じゃないかもしれません。

この先の服薬継続とかもまだ分からないし、OTC薬も普及してきているから「病院に行かない」人たちもpts journey に入れた方がいいな、って思うでしょう。市販薬=OTCではないですが

  • 市販薬を飲む=43.0%
  • 医療機関で処方薬をもらう=31.7%

あとは病院に行かない理由もあったりで使えそうな情報ですが、市販薬市場もかなり多そう。

ここまで調べたら情報をざっくりまとめるとこんな感じになります。

  • 花粉症市場は巨大
  • 処方薬市場(抗ヒスタミン剤)市場も巨大
  • 花粉症を自覚しても病院に行かない人は3500万人もいる
  • 市販薬を服薬してる人43%で処方薬の31.7%より多い
みたいなことが大雑把ですが分かります。この巨大な市場、競合ひしめくレッドオーシャン、さてどこから手をつけるか?pts journeyのどこがビジネスチャンスか?は基本的にはLeakageが多い=脱落している患者が多いところ=機会が大きいのですが、下流(Brand choice, 服薬継続…)は対応しやすく上流(疾患啓発、DTC)は対応が難しいので、only oneの画期的な製品でなければ、多くの場合はBrand choiceが一番取り組まないと行けないmomentになると思います。製品XのケースもまずはBrand choiceが一番の勝負ポイントだろうな、花粉症の季節は2カ月だし服薬期間を延ばすのは困難だろうし、ってなくらいのあたりはこの時点でつくと思います。

このようにPts journeyを定量化して、あとで実施する定量調査結果などを反映していくと、それがForeastモデルになるんで、Brand plan作成とForecastモデルはビジネスシミュレーションも考えると切っても切れない関係なのですが、それはまたの機会に。

ざっくりとPts journeyの定量化ができたので、次は定性的情報を追加していきましょう。

2023年4月2日日曜日

製薬Marketing研修とCase Study

 これまで多くのMarketing研修を行ってきましたが、ただ講義だけをしていても「なるほど、製薬Marketingはこういう感じなのか」という感触はつかめても、研修後に実務に学んだことを活かすのは難しいな、と感じています。そこで具体的な事例を使ったCase Studyを研修に使って参加者に取り組んでもらうと、学んだことの定着率は大幅にあがることを体感しています。

Case studyといえば多くのビジネススクールで使われているHarvard Business SchooleのCaseで検索すると製薬のケースが多く出てきます。外資系、日系問わず、日本で製薬会社に勤務しているBrand ManagerなどのMarketing担当者にHarvardのケースを使ったことがあるのですが、正直、うまくいきませんでした。英語というハードル、まだ日本以外のビジネスのケースしかないので、参加者の実務とは距離感があるためです。さらにはHarvardのケースのような有名なものは、いろんなところで使われていて、Google検索するとCaseの解答めいたものが出てきますし、流行りのChat GPTにCaseを取り組んでもらったらそれっぽいものをしっかりと出してくるんですよね、すごい時代になったものです。

講義だけじゃなく、実務に直結したケースでの研修を実施したい!って思った私がどうしたかというと、「パンがなければブリオッシュを召し上がればいいじゃない」みたいな感じで「適したケースが無ければ作ってしまえばいいじゃない」でした。

  • 日本語で
  • 日本の製薬ビジネスに直結した
  • 参加者がイメージしやすい、取り組みやすい
ケースを作ってMarketingの研修+Marketingスキルの評価を実施して、Brand ManagersのMarketing関連スキル、具体的には
  • 市場分析
  • Forecast
  • 戦略立案(Segmentation & targetting含む)
  • アクションプラン
  • KPI設定
をBrand ManagerたちにCase Studyに取り組んでもらい、フィギュアスケートのジャンプの評価のように基礎点5点±出来栄え点、みたいな評価項目をしっかりと決めて、可能な限り客観的・定量化してBrand ManagerたちにFeedbackを行い、Development planに反映する、という方法です。

オリジナルのケースを作成するのは、正直、かなりの手間ですがこれまでの参加者のフィードバックを聞くととても好評で
  • 製薬Marketingの全体感が理解できて自分の仕事に即活用したい
  • 自分の得意なスキル、足りないスキルが見える化された
  • Marketing全体の視点=Directorレベルの視点が掴めた
など多くのコメントをいただきまして、かれこれ過去、10以上の自作Case studyを作成して研修、Marketingのアセスメントを実行してきました。

実際にはCaseを作成するときは、参加者によって事前知識が結果に影響しないように、その会社では扱っていない領域のものを作成、あるいはその会社の将来でてくるであろう(現在はビジネスをしていない領域の)製品を使って、「こういう風なんじゃないか?」と考えて、Case studyには
  • 医師定性/定量調査結果
  • 患者定性/定量調査結果
  • 自社製品/競合製品の製品特性(P3結果)
を妄想しながら考えないといけないのですが、これは私の性分でそういうのを妄想して考えて、Caseにまとめ上げるのが楽しいので実はあまり苦ではないのです。

この自作のオリジナルCase studyを発展させた形で実現したのが、Top Talentの選抜研修で、1年間のProgramで、Phase1/2とかにある自社製品Xを使って「新薬Xの開発からCommercializationという製品life cycleを1年間で学び体験する」というコンセプトで、Marketingだけではなく、R&D、Salesのひとたちも参加しての研修を実施しました。コンテンツはこんな感じで

前半=R&Dパート
  • R&D開発のプロセス(P1-P3)
  • 候補新薬のビジネス評価(Forecast→NPV)
  • 薬価はどう決まるか?
  • 日本での臨床試験の実施計画
ここではR&Dの方々と協働して、R&Dの方々に講義もしていただいて、前半のケースでは「候補コンパウンドXとYがあります。どちらか1つしか開発できない場合、どちらを開発しますか?その場合、どのような臨床試験を組みいつごろ承認が得られそうですか?」というケースを作成し、参加者はGroup workで取り組んでもらい、6月にPresentationをしてもらいました。

後半=Commericialパート
  • P3結果が出た→ Forecastをもう一度
  • Earlyの市場調査結果(医師/患者/定性/定量)
  • Launch時にどのような組織で発売するか?(MR数など、SFE)
  • Pre-launch戦略
  • Launch後の戦略
  • どんなActivityをどんなチャネルを使って実施するか
  • KPIは?
後半パートはCommercializationのパートで、上市2年前でPhase3結果が出て、Brand Teamが立ち上がったくらいの時点を想定し上記のようなものをCase studyを通じて前半のR&Dパートと同様に加者はGroup workで取り組んでもらい、12月にPresentationをしてもらいました。

この研修方法だと、Marketingだけではなく「製薬ビジネスを1つのコンパウンドのライフサイクルを通じて」学ぶことができ、しかも自社製品の将来候補品なので、参加者の興味ども高くて、とても上手くいった研修だったと自画自賛しています。

オリジナルのCaseを作成するのは確かに手間で、時間も(お金も)かかるのですが、それ以上の価値がある質の高い研修や参加者のスキルアセスメントができる方法で、もっともっと多くのひとたちに広めたいな、と思っている次第です。

ATU調査、Tracking調査というマンネリ

 多くの製薬企業でTracking調査(ATU調査)が一番多く行われている市場調査なんじゃないでしょうか。ATU=awareness, trail, usage, KPItrackする意味でとても重要な調査ですが、SoV至上主義時代の調査項目がUpdateされずにマンネリ化して、化石のように生き残っているケースがあり、今のInsight Marketing時代に対応していないケースがあるように思います。 

Tracking調査(ATU調査)にはある程度、決まったパターンがありまして、よくあるのがこんな感じで 

(1)  現在の患者数、処方薬剤等

これは基本情報なので、とっておきます。最初の段階から「〇〇社の調査」ってバレるとバイアスがかかるので、可能な限りどこの会社が調査主体か分からないようにしましょう

 (2)  Awareness 製品認知(非助成認知/助成認知)

「先生が〇〇の治療薬としてご存じのものを記載ください」と自由記載させるのが非助成認知、「先生が〇〇の治療薬としてご存じのものを選択ください」と選択肢から選んでもらうのが助成認知です。製品の名前が頭に思い浮かばなければ処方されることもないので、大事なKPIのひとつです。 

(3)  薬剤選択の時に重要な要素

「効果発現の速さ」「有効性の高さ」「頭痛の副作用が少ない」「患者の自己負担」「投与回数」等々、多いときは10以上並べて「薬剤選択の時に重要なものを1=まったく重要でない、10=非常に重要であるで評価ください」みたいに聞いたりします。(順番に並べてもらう、とか聞き方は色々あります)

 (4)  競合含めた各製剤の評価

「効果発現の速さ」「有効性の高さ」「頭痛の副作用が少ない」「患者の自己負担」「投与回数」等々、多いときは10以上並べて「各薬剤を1=まったく評価できない、10=非常に評価が高い」みたいに聞いたりします。これで、自社製品の有効性が8.3/10点、競合製品が9.2/10点、エビデンス上は自社製品のほうが有効性は高いのだから、有効性のメッセージをもっと訴求すべし!みたいに使ったりします。

 (5)  Key messageの認知

自社製品のKey message 1-5個くらい)を認知しているか?を聞きます。調査主体の会社がバレないように競合製品のKey messageも一緒に聞くことが個人的には多いです。

 (6)  今後の処方以降

半年後の処方意向は?など聞くことが多いと思いますが、製品Xを使う患者は〇%ですか?みたいに聞くと製品Xの処方がかなりインフレするので、最初に聞いた現在の患者数とそれぞれに処方している患者人数を聞いておいて、それが半年後に(競合含めて)どうなっているか?を聞いたほうが現実に近い結果が得られます。

 Tracking調査(ATU調査)事態は実施したほうがいいと思いますが、

(3)薬剤選択の時に重要な要素

(4)競合含めた各製剤の評価

これらの質問は汎用され、根強いファン(SoV至上主義時代の成功体験者)が多いのですが、聞いてもいいと思いますが、その使い方、解釈には注意が必要です。こういう質問の結果は製薬会社側としてはとても欲しいものですし、アクションにも繋げやすい、具体的には「有効性の評価が競合に劣っている!そのギャップを埋めないければ!」みたいな感じなのですが、上記のような質問の調査結果だと医師のInsight、本音、Current/Desired perception」が得られない問題がありまして、

問題① 本音と建前で言うと「建前」の回答が前面に出てしまう

「治療に重要な項目は?」「各薬剤の評価は?」と医師に聞くと、どうしても建前、といいますか自分の知識から正しいとされること≒エビデンスをもとに回答する医師が多く、それはそれで医師の認知を測るという意味では正しいのですが、だからといって「医師が重要と認知している項目の自社製品の評価が低い→その評価を上げれば処方に繋がる」となるとは限らない、ってポイントです。 

自分が購買側だったら?って考えてみると、その理由が腹落ちしやすいと思います。例えば、あなたがテレビを購入する予定の人で、家電メーカーの定量調査でこんな質問があったとします 

「あなたがTVを購入する際に重要だと思う項目を1=まったく重要でない、10=非常に重要である、でお教えください」

  •   画面のサイズ
  •  画質(4K、8K等)
  • 音質
  • ブランド(メーカー)
  •  録画機能
  • 価格

そして調査結果がこんな結果になったとしましょう


次の質問は自社製品と他社製品の各項目の評価です。「製品X(自社製品TVブランド)、製品Y(競合品)を以下の項目について1=まったく評価できない、10=非常に評価が高い、で評価ください」

  •   画面のサイズ
  •  画質(4K、8K等)
  • 音質
  • ブランド(メーカー)
  •  録画機能
  • 価格

そしてこんな結果になったとしましょう

この結果を受けて「価格が安くて、画質がよくて、画面が大きいTVを消費者求めている。競合に対して価格、画面サイズで負けているのより価格競合性があり画面サイズが大きいTVを開発して売り出すべきだ」というDecisionをするとします。本当にそれで売れるでしょうか?合っている可能性もありますし、合っていない可能性もあるのですが、いくつか解釈に注意点があります。 

1点目は「重要と思う項目の満足なラインはどこか?」という点です。TVで言うと、画質なんかは聞かれたら「TVにおいて画質は大事だし、画質がいいTVが欲しい」と消費者が回答するのは当然です。私も家電にはあまり興味がないのですが、地デジに移行してから、4K、8Kとか言われてもそれ以上の違いは分からないしさほど興味ありませんが、聞かれたら「画質大事、画質が良いテレビが欲しい」と答えると思います。 

この問題を解決するひとつの方法は「先生が実用、実臨床で満足と考える点数を6点として」という注釈を加えて回答してもらうことです。そうすれば、自社品の有効性評価は8.5点、競合品は9.0点、この差を何がなんでも埋めなくては!という打ち手ではなく「自社品も競合品も医師の満足している点数を大幅に超えている、この点差はcriticalなのか?」という点に立ち返ることができます。もちろん評価が医師の満足点=6点以下であり、エビデンス上その数字は低すぎる場合は、有効性のKey Messageの浸透は大事な打ち手になります。 

前にも述べましたが、この「薬剤評価」の質問は、その分かりやすさ、使いやすさから根強いファンが多く、私が企画するTracking調査でも本当は削除してもいいかな、と思いつつも上からの圧力で残すことが多いんですが、最低限この「満足度6点として」は入れるようにはしています。 

この質問で本当に聞きたいことは「医師の処方Driverは何か?その要素の認知が競合に対してどうなっているか?」を知ることなので、その意味ではコンジョイント分析をしたほうがいいケースが多いな、とは思っています。コンジョイント分析についてはまたの機会に

2023年4月1日土曜日

Positioningって何?

留学前はスズキという「日本企業でございます!」という会社で働いていたので、留学後に外資系製薬企業に入社したら、Marketing関連の用語の多さにびっくりしたことを覚えています。Segmentation, targetingなどはまだ言葉の意味、実際の内容が近く明確だと思うのですが

  • Positioning
  • Strategic intent
  • Strategic imperative
  • ・・・

あたりは汎用されているものの、どうも「Brand Plantemplateにあるので、なんとなく語感に合わせて、それっぽい文章を作成している」ケースも多いのではないでしょうか?

特にPositioningって言葉は製薬業界でも汎用されていますが、実際にPositioning がなぜ必要で、どう役にたつか?を理解しているBrand Managerは少ないと思います。Google検索TopにあがってきたPositioningの説明がこちら; 

「ポジショニング(英語:Positioning)とは、競合他社の製品と差別化を図り、顧客に対してアピールできるような自社製品の提供価値を決めるプロセスのことです。いうなれば、「チョコレートはA社の製品でなければダメ」「醤油を購入する際はB社の製品と決めている」というように、顧客の心の中に明確なポジションを構築する施策を意味します」https://www.utokyo-ipc.co.jp/column/positioning/

確かに間違いではないのですが、このPositioning=自社製品が適切な患者が届くための医師の認知、と製薬Marketing的に変換するとなりますが、ごちゃごちゃ長い文章で説明しても「イメージが沸かない」ので、私はPositioningを「顧客がそう脳内で認知してくれたら自社製品が選ばれる」状態=Desired perceptionだよ、と説明しています。



そして、現在の医師の認知「Current perception」と「(目指す)Positioning=Desired perception」のgapを埋める、医師の認知を変える→行動変容を促すってのがMarketingだよ、と説明しています。

過去いろんなBrandPositioning statement(=Positioningを文章化したもの)を見ているとこのようなケースが散見されます。

  1.  ハイレベルすぎて「製品Xが私の第一選択薬」みたいなStatementになる
  2. 自社製品が差別化できるポイント訴求になっている

ハイレベルすぎて「製品Xが私の第一選択薬」みたいなStatement

「製品XがBestな治療選択肢、私の第一選択薬です」みたいなPositioning statementは耳障りはいいんですが、あまりにハイレベルすぎて全員が「確かにそうだ」と思ってはくれますが、具体的なアクションに繋がりません。強いて言えば「気合と根性で製品Xを医師の第一選択薬にする!」というアクションに…。このケースではCurrent perceptionも「製品Xは私の第一選択肢ではない」とPositioningの裏返しになっていて、医師の本音=Insightのかけらも入っていません。このようなハイレベルすぎて誰も反対しないけど、特に意味のない状態を私は「世界平和問題」と呼んでいて、世界平和は大事で誰もが望んでいることで「世界平和は大事」と皆が願っても、それだけでは世界平和は実現できないし、世界平和を目指す具体的な案が出てきません。せめて「製品Xは私の第一選択薬です、なぜなら…」の理由、医師の本音などがとても大事で、そこまで含めると「顧客のこういう認知をこういう風に変えないと」という具体案に繋がってきます。

自社製品が差別化できるポイント訴求になっている=(顧客ニーズを無視して)メーカー側が言いたいことの羅列

新製品がLaunchしてしばらくはもちろんメーカーが伝えたい製品特性、差別化ポイントを顧客に訴求するのは重要です。新製品の認知、製品特性の理解は処方獲得への第一関門、entry ticketです。それをCurrent perception、 Desired perceptionで書くとこんな感じです。

Launch時の上記Desired perceptionを目指すことによって、製品特性を理解して、製品特性に反応して処方してくれる医師」が処方開始してくれ、売上は伸びます。しかししばらくすると売り上げの伸びが鈍化してしまいます。この伸び悩みの原因は「活動が製品特性≒key messageの浸透」に注力しているが、医師の多くはすでに製品Xの製品特性≒key messageを認知している=Launch初期のDesired perceptionが実現されている状態なのです。ですので、これまでの「Desired perception」を考え直す、そのために、Insightを含んだCurrent perceptionを考え直す必要があって

この「製品Xは有効性、安全性、使いやすさも競合製品より優れているのを理解したが…」の…の箇所「なぜ一番良いって認識しているのに処方しないの?」の医師の本音=insightが分からないと、Positioning≒Desried perceptionを考えることができません。

具体的な例を示します。私自身もそうですがスギ花粉症に悩む患者さんは日本には何千万人もいます(私もその一人です)。巨大なスギ花粉症市場に多くの抗ヒスタミン薬がかなりの労力をさいて「花粉症は医師が処方する治療薬で楽になる、だから病院にいこう!」を目指して多くの労力を割いてきました。

私もスギ花粉症の患者なので「花粉症は医師が処方する治療薬で楽になる、だから病院にいこう!」というのは良くわかっていますし、私は実際に昔から病院に行って毎年抗ヒスタミン薬を処方してもらっています。が、病院に行かない多くのスギ花粉症の人はは

  •  病院にいって処方薬をもらえばよくなるのはわかっている
  • でも病院に行くのは待つし、手間だしお金かかりそう(具体的には知らないけどそういうイメージ)
  • そもそも何科を受信したらいいの?
  • うこうしているうちに病院に行く前に花粉症の季節は終わって症状なくなる

 というような本音=Insightに基づいたCurrent perceptionが分かってきて、一文にすると 

「花粉症は医師が処方する治療薬で楽になる、だから病院にいこう!とは思うけど、忙しいしお金かかるし、面倒くさいし、ついつい毎年病院に行きそびれてしまう。そんなこんなしてると花粉症の季節が終わっちゃうんだよね」

 みたいな感じでしょうか。ここまで分かるとDesire percpetionはこのCurrent perceptionを乗り越えるようなものになり、ちょっと雑ですがこんな感じに

花粉症は医師が処方する治療薬で楽になるし、どの病院、診療科に行くかも簡単にわかって、手間もないし、金銭負担も思ったより少ないんだ、これなら病院にいって花粉症の薬もらって治療したほうがいいよね」

ここまでくると具体的になると打ち手は「いかに病院にいくハードル下げるか?」が大事になってきて、お金の話、待ち時間の解決、と等々もいろいろなアクションを考えることができます。 

Segment毎にInsight、本音に基づいたCurrent perception=現在の顧客の本音、Desired Perception(≒Positioningt)を作って、そのギャップを埋める打ち手を考えるというのはとても有効だと思います。(Segment毎のPositioning Statementは許されない!というBrand Plan Templateも多いとは思いますが)

 あとGlobalや偉い人たちから「こんなPositioning Statementは長すぎるしダメだ!」って言われた場合は、少しそれっぽく「花粉症は医師の処方薬で症状がよくなり、病院にいく手間も感じない」くらいにスライド作成時は短縮してもいいと思いますが、実際の打ち手をBrand Teamで考えるときは、Statementが生々しいほうが具体的なアイディアが出やすいと思います。Insightはその本質ゆえに生々しいものなので。 

長いことこの説明をしたり、Marketing研修のワークショップで花粉症が身近で皆さんが理解しやすいので使ってきたんですが、現実の花粉症治療薬の世界では「病院に行くハードルが高い」を各社OTC薬に注力して解決している状況が今なんだろうな、と思います。

 Positioningという言葉は分かりやすいようで、分かりにくい。「耳障りのいいだけの」Positioning Statementではなくて「使える」「打ち手に繋がる」Positioning」じゃないと意味がないよね、というのは製薬Marketingに関わるひとたちにもっと意識されてもいいんじゃないかな、っていつも思っています。