2023年4月8日土曜日

(8) 調査結果をもとにPts journey定量化

insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!

製品Xの発売2年前にLaunch Brand Teamが立ち上り、定量→定性調査を終えてここまでくるまでに半年くらいかかっていると思います。発売まで1年半!日本のSenior managemetn、APAC、Globalも「具体的なLaunch Brand Planを!アクションを!KPI!!」というプレッシャーを毎日感じるようになる頃です。

そのプレッシャーは「Launch PMO (project management office)」が立ち上げられ、突然Launch project managerが社内から着任し…」ってなこともあるんですが、Launch project managerは

  • launch経験
  • Marketing経験とスキル
  • Forecast、Researchの経験、スキル
  • Project managermentスキル

が必要でして、かなり高度な経験とスキルを求められるのですが、Brand Managerレベルが任されてオロオロして失敗するケース、あるいは外部の外部のコンサルタントが入ってきて、製薬Marketingの知識なく、ガンツチャート職人となっているだけのケース、製薬Marketingの経験はあるものの、日本語ができない外国人の外部コンサルタントが派遣されてコミュニケーションに難があり仕事が増え遅れるケースなどがあり、なかなか難しいものです。(ちょっと脱線してしまいました)

話をPts journeyの定量化に戻します。調査前のWeb検索、文献、デスクリサーチ、定性→定量調査を実施して、ここまで来たらLaunch Brand Planを作成する情報はほぼ揃ったと言ってもいいと思います。

今回はPts journeyの定量化の中に含まれるか微妙ですが医師定量調査を「市場全体に拡大できる」設計にしています。今回の医師定量の調査の「抗ヒスタミン薬を花粉症の患者に過去1年間に1例以上投与経験がある医師」と広く設定して、調査を依頼は「調査会社のパネルに登録している医師全員」にしておくと(調査対象合致医師)/(調査依頼医師)の割合から「抗ヒスタミン薬を花粉症の患者に過去1年間に1例以上投与経験がある医師」の人数が推計できます。この時にスクリーンアウト=調査対象じゃなかった医師の診療ごとの人数まではもらえるように事前に調査会社に依頼しておきましょう。これは調査会社に言っておかないとデータもらえません。

私自身、花粉症の市場調査をしたことが一度もないので、どんな結果になるか妄想とデスクリサーチで調べるしかないので、けっこうここからは現実とはズレると思いますのでご容赦ください。

まずは「花粉症を治療している医師が全国に何人いるの?」「どのくらいの施設で花粉症治療、抗ヒスタミン薬が処方されているの?」の検討をつけましょう。

その際の分母に役立つのが、「厚生統計要覧」です。全国の医師数(診療科別も)病院開業医の数が分かります。

であることが分かります。医師数ですが

ここらへんの数字は製薬業界でMarketingに携わる人は頭の中に記憶しておいて損はありません。あとは調査結果から

  • HPの耳鼻科、アレルギー科の100%の医師
  • HPの内科の50%の医師
  • HPの眼科の50%の医師
  • 開業医の50%(診療科問わず)
ということが分かったとします。そうすると、全国の医師数×上記

  • HP耳鼻科:3,937*100%=3,937医師
  • HPアレルギー科:102*100%=51医師
  • HP内科:21520*50%=10,260医師
  • HP眼科:4,886*50%=2,443医師
  • 開業医10万人+50%=5万人

合計で16,651人のHP勤務医、開業医5万人の合計66,651人の医師くらいが全国で抗ヒスタミン薬を処方している、という推計ができました。(本当はもっと多いのか、少ないのか、実際に調査したことないのでわかりませんが…)

患者さんについても全国で花粉症の症状があるのが5000万人、うち処方内服薬を服用しているのが1600万人、市販内服薬を服用しているのも1600万人とWeb検索から作った粗々Pts journeyで作成しましたが、患者定量調査でもそのくらいでもその割合(半々くらい)が確認されたとします。

定量調査結果がでると、どんどんPts journeyが詳細にわたって分かってきて楽しくなってくるはずです。患者ですが、5000万人を

  • 毎年、病院で処方薬をもらって服薬する患者=1000万人
  • 毎年ではないが処方薬をもらい服薬することもある(あった)患者1500万人
  • 病院の処方薬を服薬しない患者=2500万人
というのが調査結果から分かったとします。同様に重症度、抗ヒスタミン薬の処方、製品Xの使用意向等々をまとめるとこんな感じの定量のPts journeyができました。


定量のPts journeyは「作成すること」が目的ではありません。Pts journey(定量)をどう使うか?が大事でして、一番の目的は「どこに機会があるか?」を定量的に把握することです。上流から考えてみましょう。

(1)患者が毎年通院してもらうようにする
5000万人のうち、毎年通院しているのは20%の1000万人なので、全員を「毎年通院させる」ことができれば、最大で製品Xの売上が5倍、もちろん軽症の患者の通院が増えることになるので、5倍にはならないのですが、それでも大きな機会がここにあります。

毎年通院をしていない患者にも製品Xの情報を提示して、けっこう大きな服薬意向がでていますので、なんとか1カ月に1回のメッセージを届けて、製品Xをきっかけに、製品Xを求めて患者さんを通院させるような仕掛けをしたいところです。

ただし、Pts journeyは上流(≒疾患啓発、受診促進)の行動変容を促すのはとても大変で、成功例はそんなに大きくありません。Globalなどは定量pts journeyを見ると「機会が大きい!なんとかしろ!」と言うことを多く経験していますが、DTC的要素も大きく、できることできないことがあり、ここは野心的に、色々なアイディアを考えるのと同時に、冷静に実現可能性も考えないといけません。

(2) 抗ヒスタミン薬の処方を上げる (Treatment choice)
花粉症の患者ですでに抗ヒスタミン薬の処方をされる人がほとんどですので、ここの機会を増やして製品Xの売上を増やすのは難しいです。ここは「薬物治療」「カウンセリング」など治療のカテゴリー毎の選択なのでTreatment choiceと言われることが多いです。

(3) 抗ヒスタミン薬の中で製品Xを選択する%を上げる(Brand choice)
ほとんどのBrandでこのmoment=Brand choiceが一番大事になることが多いです。製品Xの場合は「医師の処方意向=40%」です。競合が多い、後発の薬剤ですが製品Xは「1カ月間有効」というかなり分かりやすい差別化ポイントがあるので、これだけ高い処方意向が定量調査の結果として現れたと思います(もっとあがるはずだ!って言う人ももちろんいるでしょうが)実際に「この40%をもっとあげる」ためには「なにが製品Xの処方のDriver/Barrierになっているか?」を医師の本音ベースで知る必要がありますので、そこは定性的なPts journeyのところで示したいと思います。

(4)患者の拒否率を下げる
医師が患者に処方したい、と思っても20%の患者は拒否するという結果が出ています。この20%は少ないようですが、拒否率を下げることは売上にけっこう影響します。ここでも「なぜ患者は医師に製品Xを処方提案されても拒否するのか?」の理由を本音ベースで知る必要があります。

(5)製品Xの処方回数をあげる
調査上、「製品Xは平均で1.3回処方される」という結果です。花粉症の季節は約2カ月なので、最大2.0になるはずですが、花粉症が特にひどい時期だけ服薬したい?などの理由から平均処方回数が少なくなっています。ここも同様に医師・患者の本音、ニーズを把握して対策を考える必要があります。

実際のところ、もう半年くらいずっと花粉症の市場と製品Xについて情報収集をして、たくさん頭をつかってきたので、ここに書いていることは自分たちの考えを整理してまとめる、という感じの作業になるかもしれませんが、どこかに落とし穴はないか?隠れている機会はないか?など一応は注意を払ったほうがいいとは思います。

またこのような形でpts journeyを定量化してまとめてスライドは日本のSenir managementやGlobalの人たちに「日本の花粉症市場がどうなっているか?」が簡単に、定量的につながりますし、ほとんどの会社でこのようなPts journeyを定量化したものがBrand Planのtemplateに入っていると思いますし、Brand上市後も毎年Updateしていくことになるとても使い勝手のよいものです。

次回は定量化したpts journey → Forecastモデルについて、を書きたいと思います。

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