2023年4月7日金曜日

(7) Pts journey、患者定量調査

insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!

患者定量(Web調査)は私は大好きなんですが「予算の関係もあるし医師調査を優先」って判断がされることも多くて、実施されることが少ない調査だと思います。オンコロジーや希少疾患のようにそもそも患者人数が少ない、リクルートできない場合も多いですし、患者が治療選択への決定権が少ないことが多いのでついつい後回しになりがちですが、pts journey時代にはその名の通り患者のunmet needsや本音がブランドの成功=pts outcomeの最大化に重要なことはこのブログを読んでくださっている皆さんならお分かりだと思います。ですから、可能なら新製品発売前には1回くらい、最低限定性調査はやっておきたいものです。

一方で患者アンケートは公的機関、民間企業、製薬会社で実施されているものも多くありますので、「疾患名 患者 アンケート」で検索すると多くの情報が得られます。Pts journeyを作成する前、調査前にこういう情報はEXCELに全部まとめておくことをお勧めしていますが、患者調査も公開情報で分かっていること意外の部分をしっかり聞く調査設設計にするためにも公開されている患者調査、アンケート情報は調べておきましょう。

花粉症に関して調べてみると

平成28年度に花粉症患者実態調査(東京都)
https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/kj_kankyo/kafun/jittai/

花粉症に関するアンケート調査(株式会社アスマーク)
https://www.asmarq.co.jp/data/mr201804hayfever/

-花粉症に関するアンケート調査 -(株式会社アイスタット)
https://istat.co.jp/investigation/2023/02/result

これ以外にもたくさんでてきますが、Pts journey事前作成の時に反映しておくことと、定量調査の前にも再確認しておきましょう。

製品Xの場合、花粉症患者で全国5000万人もいるので定量調査の調査対象を集めるのは簡単、そして患者調査の回答謝礼は医師に比べると大幅に安いので、サンプル数を多くしてもコストはそこまで上がりません。今回の花粉症調査でpts journey を定量的に明らかにする、各momentの考えニーズなどを定量的にする為にn=500くらいにします。

  • 症状あるのに通院しない花粉症の人
  • 毎年通院してる人
  • 通院してたけどやめた人

みたいに患者パターンが別れるのでどうしてもn数が多くなるし、質問もそれぞれの患者群に対して作る=樹形図みたいに途中で分岐する質問票を作らないといけません。

調査対象は「花粉症の症状を自覚して自分が花粉症だと思う人」です。これを日本の人口(子ども超高齢者は除く)を反映した集団に調査回答を依頼して可能な限り日本全体に調査結果を拡大できるようにします。

花粉症の症状自覚してる患者(全員)への質問

まずは全員共通に聞くことですが

  • 年齢、就業状況など基本情報
  • 花粉症の重症度(日常生活への支障度合い)
  • 通院経験、現在の通院状況(これで質問票分岐)
くらいかなと思います。通院経験、通院状況で
  1. 花粉症で毎年受診してる
  2. 花粉症で年によって受診したりしなかったり
  3. 花粉症だけど受診したことがない
に分けます。ひょっとしたら就業状況、重症度に差があるかもしれません。ここから調査票が3つに別れるので大変です。

花粉症で毎年受診してる人

年に(花粉症1シーズンに)の何月に花粉症で通院しているか?

を定量的にきいて医師調査と同じように1-7同意質問で花粉症治療についての考えを聞きます
  • 花粉症で通院するのは治療薬をもらう為である
  • 薬局で買える薬でなく病院で処方薬ををもらうのは、病院処方薬の方が効果が高いからだ
  • 薬局で買える薬でなく病院で処方薬をもらうのは、その方が結果的に安く済むからだ
  • 薬局で買える薬でなく病院で処方薬をもらうのは、毎年そうして効果があることが分かって安心感があるからだ
  • 同じ薬がもらえるなら病院はどこでもいいと思う
  • 通院の負担(病院に行く時間、待ち時間など)で花粉症での通院をためらうことがある
この質問への回答から患者さんの本音に基づくペルソナ作成ができるように質問を作成していきます。

花粉症治療への閑雅を聞いたら次は抗ヒスタミン薬についてです。「抗ヒスタミン薬」と患者さんに聞いても分からないので「花粉症の飲み薬について」で基本情報を聞きましょう。
  • 飲み薬の種類
  • 一回の通院で何日分処方してもらうか
飲み薬についても1-7同意の質問を聞きます
  • 病院でもらう薬の有効性(花粉症の症状を抑える力)には満足している
  • 病院でもらう薬の副作用(眠気など)には満足している
  • 病院でもらう薬の価格、自己負担金額には満足している
  • 毎日服薬するのが面倒で飲み忘れてしまうことがある
  • 毎日服薬したほうがいいのは知っているが、症状が出た時だけ服用している
  • 症状が出た時にだけ服用して、薬を節約している
  • 今、服薬している薬に大きな不満はない
ここでも定性調査からの発見、気づきをどんどん聞いていきましょう。実は患者さんは頓用する人が多くて(特に軽症の患者さんは)1ヶ月ずっと効果があることにあまりニーズが乏しい可能性だってあります。

「花粉症で年によって受診したりしなかったり」の人達への質問も同じような感じですが、「毎年受診しない理由は?」は追加で聞いたほうがいいでしょう。この人たちが毎年通院するようになれば将来的に製品Xの売上に繋がる可能性あります。
  • 毎年受診しようと思っているけど、面倒でついつい忘れてしまう
  • 以前病院でもらった薬が残っているので、毎年通院しなくても薬が足りることが多い
  • 病院でもらった薬がなくても、忙しいと病院にいかずに市販薬ですませてしまう
  • 薬局で買える薬がよくなったし、値段もそこそこなので病院にこれからはあまりいかなくてもいいかな、と思う
  • ...
等々、「毎年受診をしない理由」の本音がでてくるような質問をしっかり考えましょう

花粉症だけど受診したことがない患者
Web検索で作成した粗々定量Pts journeyでもが1000万人以上いそうです。この中でも市販薬を使っている人もいるので、定量的に取っておきましょう。

Q:花粉症の症状軽減のために昨シーズン実施したことをすべて選択ください

□ 食事に気を遣う
□ 花粉症に効果がありそうなサプリを摂取する
□(病院で処方された薬ではなく)薬局で飲み薬を購入
□(病院で処方された薬ではなく)薬局での点鼻薬を購入
□(病院で処方された薬ではなく)薬局で点眼薬(目薬)を購入
□ 運動睡眠に気を遣う
・・・

上記の「実施したこと」にについて、効果や負担(費用、努力)、満足度について評価してもらってもいいかもしれません。

Q:「花粉症に効果がありそうなサプリを摂取する」とご回答いただきましたが、有効性と負担(費用、努力)、満足度を10段階で評価ください

効果
1=まったく満足していない~10=非常に満足している
負担(費用や要する努力)
1=負担は大きい~10=負担はまったくない

*参考までに調査票では慣例的に
複数選択:□、MA(multiple answer)
単選択:〇、SA (single answer)
と表記することが多いです。

この人たちにも1-7同意質問で花粉症治療についての考えを聞きましょう
  • 花粉症の症状は病院に行くほど重症ではない
  • 花粉症で病院に行くのは面倒だ
  • 花粉症で病院に行くのはお金が掛かるので行かない
  • 昔病院で薬をもらったが、効果や副作用(眠気)でいいイメージがない
  • 病院にいったほうがいいと思っているが、ついつい足が遠のく
  • 病院にいったほうがいいな、と思っているうちに花粉症の季節が終わって症状がなくなる

みたいに病院になんでいかないの?その本音は?を定量化していきましょう。

製品Xについての考え

ここも基本的には定性調査と同じでいいと思います。まずは製品Xの情報と、を患者のコメントを見てもらって回答してもらいます

【製品Xの情報】

  • 作用機序:抗ヒスタミン薬(処方される花粉症の飲み薬の多くは抗ヒスタミン薬)
  • 用法用量:1か月に1回(1回飲むと効果が1か月持続)
  • 適応はアレルギー性鼻炎(多くの抗ヒスタミン薬と同じ)
  • 安全性、副作用は既存の飲み薬と同程度
  • 1日あたりの薬価は100円(患者の自己負担は3割負担で1日30円=1か月約900円)
  • (既存のものより1.5倍程度)

製品Xにの製品情報をみて、1-7同意で患者さんの聞きます。この質問は全員に聞きますが一部質問の調整はする必要があります

  • 1回飲んだら1か月効くのは飲み忘れもないし良いと思うので試してみたい
  • 良いと思うが、既存の薬より1.5倍なので試そうとは思わない
  • 既存の薬で特に困ってないので、製品Xを試したいと思わい
  • 効果1か月=副作用も1か月続くのが怖い
  • 効果1か月=副作用も1か月続くのが怖いが、医師から勧められて説明をされたら試してもいいかな、と思う
  • 症状が出たときに薬を飲んでいるので、1回飲んだら1か月効くのは特に魅力的ではない
このくらい聞いておけば、Pts journeyの定量化、医師、患者のInsightも定量的に、将来作るSegment毎にペルソナを作る元情報にしっかりとなると思います。

医師と患者の定量調査の結果を比較することで有益な情報が鰓得ることもありまして。例えば製品Xの医師と患者の処方(使用)意向を比較すると、医師>患者の場合は「医師に患者に同意を得るよう説得しないといけない」ってことが分かりますし、逆に患者>医師の場合は、「患者が医師に薬剤がリクエスト」「医師に患者のニーズを理解してもらう=気づきをあたえる必要性」みたいに使うこともできます。以前も書いた通り有意差検定して>を決定するってのはさすがに難しいのですが、医師や患者へのインタビューした「「花粉症患者、医師の本音」をここまで長いこと考えてきたBrand Teamのメンバーなら、判断はできると思うのです。このあたりがMarketingのSceinceじゃなくてArtな部分だなと思っていますが、MarketingってArtな面も、Scienceな面も両方あるよね、っってのがMarketingの本質と思っています。

4回をかけて詳細に市場調査のデザインの仕方を説明してきました。もし製薬市場担当者の方がこれらの記事を読んでいたら「自分はここまでできているか?」を自問自答して、足りないな、って気づきが得られたら次の調査でしっかり活かして行きましょう。

製薬会社のMarketing、Brand Managerの方にはちょっと内容がテクニカルで難しいかもしれませんが、市場調査はBrand戦略のベースとなる情報、Evidenceのようなものなので調査目的、設計方法などを知っておいて損はありません。

Sov至上主義時代の市場調査と言えば、ATU調査、Tracking調査が主(=活動の結果おこったことの見える化)で、どちらかというとMarketingと市場調査担当者の間でキッチリと境目が分かりやすく分業されていました。Insight marketing時代になると、Brand Managerも市場調査担当者も「顧客の本音は何?」と”顧客の本音を調査で知って戦略・活動を立案”する重きが増してきましたので、Brand Managerも調査担当者の視点を、逆に調査担当者ももっとBrand戦略、活動の全体像を把握して調査設計をする必要があるのです。

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