2023年4月23日日曜日

(17) Data generation workshopをやってみよう!

insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!

Data Generation Workshopと聞いてもピンとくる方はあまりいないかもしれません。目的は、Brandのlife Cycleや競合状況を考慮して「どのようなdataを出していくことがBrandの成功に必要か?」をBrand Team全員で考えるワークショップです。「Brand plan」の一部なので出発点はブランド戦略からで、製品Xの場合はこのLaunch戦略です。

このLauncch planを作成する時に考えていた時間軸は「製品X上市時」です。もしくは「製品X上市から1-2年」くらいを考慮して作成していました。Data generationはとても時間がかかるので、「製品X発売から5年以上」くらいの時間軸で考えないと、顧客のcurrent/desired perceptionは

  • 5年以内にどんな競合が出てくるか? 
  • 競合がどんなdataを出してくるか? 
  • 製品Xのdataはどんなdataが出てくるか?

などによって変化していきます。その変化も考慮したうえでData generation planは作成しなければなりません。その意味では「Data generation workshop」であるとともに「Brand Life Cycle plan」の側面もあるのです。

今後5年間、製品Xの競合品が現れない場合のData generation workshopはシンプルでcurret/desired perceptionと全く同じです。製品Xが一番注力すべき「製品Xの処方意向が50%未満の医師」のcurrent/desired perceptionはこんな感じでした。 


このGapを埋めるためにはどんなデータがないといけないか?を考えていくと

  • 1カ月効果持続でも副作用の心配は要らない、というデータ(特に日本人において)
  • 既存の抗ヒスタミン薬で困っていない、満足している医師のunmet needsを顕在化するというデータ 

の2つがData generationでなんとかしたい、なんとかできそうなことじゃないかな、と思います。ひとつずつ考えていきましょう 。

1カ月効果持続でも副作用の心配は要らない、というデータ(特に日本人において) 

製品Xの承認申請資料に何がどこまで入っているかにも拠るのですが評価資料に日本人のサブ解析データが入っていて、1カ月効果持続でも副作用の心配が要らないというのは説明でできるデータが入っていると思いますので、それはもちろん資材などにして使えるでしょう。ただ高齢者、妊婦、小児は入っていないので、これらの患者への安全性は?これは市販後調査の結果で出したら?海外データでならある??いつ頃、どんなデータが出せるか?というのを考えると、例えば

  • P3試験:日本人含めた長期(3回=3カ月投与継続したデータ)=Launch直後使用 • 海外データ:高齢者、妊婦、小児のデータ(承認資料にはない)=いつから使える?Launch1年後? 
  • PMS:日本人の安全性データ=Launch2年後 

みたいな感じでまとめていきます。 

既存の抗ヒスタミン薬で困っていない、満足している医師のunmet needsを顕在化するというデータ 

「患者は毎日服薬せず花粉症freeになれる」の話にもかかわるところで、P3試験結果に毎日抗ヒスタミン薬を服薬している患者と比較したQoLデータがあったら使えます。Data generationというと、どうしても臨床試験のイメージになってしまいますが、例えば患者のケーススタディ(←なかなか資材化はできませんが…)や患者のニーズ調査なども考えていく必要がありますこれも同じように、いつ頃、どんなデータが出せるか?出す必要があるか?でまとめてください。 

競合が出てこない場合のData generationはこのようにかなりシンプルなのでWorkshopをするまでもないかもしれません。が、現実には競合が出てきて、競合が適応拡大をして、というのがほとんどの場合だと思います。これまで製品Xの競合についてはあまり触れてきませんでしたが、

  • 製品X発売3年目に競合製品Yが上市
  • 製品Yは皮下注の抗ヒスタミン薬で効果持続時間が3カ月
  • 有効性は製品Xよりも高く、安全性は製品Xと同等
  • 薬価は製品Xよりも30%高い
  • 海外ではLaunch直前で、海外Phase3試験は終了
  • 日本では国内P3試験が実施中 このように「製品Y」が出てくる

ことを想定するとData generationは複雑になります。まずは製品Xのstrength/ weaknessを考えてみましょう。

  • Strength:経口薬で投与簡便薬価
  • Weakness:効果継続が1カ月で製品Yの3カ月より短い、服薬忘れがある可能性

War game的に「製品Y」から見たstrength/weaknessも裏返しっちゃ裏返しなんですが

  •  Strength: 2ヶ月効果持続なので1回の通院で花粉症free、飲み忘れがない、海外P3試験で製品Xより患者QoLが高いことが示唆された
  • weakness: 注射で患者が嫌がる、薬価、冷蔵保存

競合の製品Yが出てくると、launch時のdesired perception だと製品Xが処方されなくなる可能性があるので、その確認をしましょう 

1回服薬したら効果が1か月持続するのは患者さんが飲み忘れないメリットだけじゃなくて、患者さんが「花粉症free、花粉症であることを忘れられる」メリットが患者さんには大きことに気が付きました。薬価は既存薬の1.5倍くらいでちょっと高いですが、スギ花粉症の患者さんの症状は1-2か月は続くので、それが1-2錠でコントロールできるのは画期的ですね。患者さんと相談ですが、私は積極的に処方したいと思います。

この製品Xのdesired perceptionを見てみるとこのdesired perception になった医師は、製品Xでも製品Yでもどちらでも当てはまる=製品Yが出た後は、このdesired perceptionを実現するだけでは製品Xは選ばれない、という状況になるので、製品Yが出た後でも「製品Xを処方する」医師のdesired perception を考えないといけません。この作成方法はinsight generation workshopと同じです。

1回服薬したら効果が1か月持続するのは患者さんが飲み忘れないメリットだけじゃなくて、患者さんが「花粉症free、花粉症であることを忘れられる」メリットが患者さんには大きことに気が付きました。薬価は既存薬の1.5倍くらいでちょっと高いですが、スギ花粉症の患者さんの症状は1-2か月は続くので、それが1-2錠でコントロールできるのは画期的ですね。注射剤は侵襲性があって患者さんも嫌がるしそういうデータもあるし、冷蔵保存の手間もあるし、製品Xより値段も高いし、そこまでのメリットを感じません。患者さんと相談ですが、私は積極的に処方したいと思います。

このようなDesired perceptionなら製品Y発売後も製品Xが選ばれそうです。 ここで時間軸をもう一度考えます。3年後に製品Yが発売なので、その時の製品Xのdesired perceptionになっているようにするには、いつまでに、どんなデータが必要か?ということを考えます。「もしそのデータが出なかったら?」のリスクも考えます。

製品Y対策に必要なデータ

  • 患者は2カ月有効の注射剤より経口薬を好むというデータ
    (比較のデータなので取り扱いは難しいが…)
  • 注射剤よりも経口の製品XのほうがQoLが高いというデータ
  • 製品Xの服薬コンプライアンスが製品Xと比較して悪くない(非劣勢)というデータ

もし上記のデータが出なかったら…

  • 製品Xのこれまで言っていた「服薬忘れがない」「花粉症Free」のpositioningを製品Yに持っていかれてしまう

みたいな感じでしょうか。作り出したい医師のdesired perception は短く書くと「製品Xで満足、安心して処方できるし」なのでそのために 副作用懸念の払拭、高齢者、小児、妊婦データは製品Yが出なくても出てくるものですが、製品Yが出た後の製品Xが処方されるdesired perceptionから 花粉症シーズンに2回飲む手間はたいしたことない、患者が飲み忘れない確信もてるデータ これ大規模試験とかじゃなくても小規模なもの、患者アンケートを元にしたものでもいいので製品Yが出る前に出すことが大事です。data generationではないですが、「○○病院の製品X服薬忘れを減らす取り組み」とかのWeb記事でもいいかも知れません。って話になるからdata generation workshopといいつつ、brand lifecycle workshopにもなるのです。

これらをEXCELでのPowerPointでもいいのですが、こんな感じでまとめていくと、


その時に、競合は市場環境の変化も加味したうえでのDesired perceptionが、顧客別にどうあるべきか?そのために必要なデータは?それはいつまでに出さないといけない?というのが見える化されて、その「データを出さなければいけないタイミング」が見える化されると、いつまでに臨床試験の計画を立てて。。。みたいな長期的なdata generation planが策定できます。

前の記事にも書きましたが、ここまでしっかりとlaunch前からData generation planを作成することはなかなか難しいのですが、ここまでしっかりとしておけば、長期的な戦略のブレもなくなり、そのBrandの成功を大きく引き寄せることになるので、もっともっと実施されてもいいはずのWorkshop、planningだと思うのですが、あまり実施されていないのがとても残念です。




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