2023年4月17日月曜日

(15) Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)

 insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!

新製品を発売するときに、どれだけのMRを配置するか?は大きな投資であり重要なBusiness decisionです。すでに多くのMRを抱えているメガファーマで、既に抗ヒスタミン薬市場でプレゼンスがある場合には、既存のMRが「抗ヒスタミン薬の代替わり」として製品Xをpromotionしたらいいので、考え方は楽なのですが、製品Xをこれから上市するInsight pharmaにとって

  • 製品Xは日本市場における2製品目
  • 既存品は既存の製品はパーキンソン病治療薬でMR40名体制で神経内科にPromotion

というのをこの記事で書きました。製品Xがpeak sales500億円!みたいな超大型製品でしたら、何百人の専任MRを採用してpromotionをすることができますが、製品Xのピークの薬価売上高予測が170億円(薬価がピラノア*1.5)、となるとどれだけのMRが、何施設、何人の医師をターゲットとしてカバーするか?を決めなくてはなりませんし、その際のコストも考えないといけません。その為には

  • どれだけの施設、医師を訪問するか?(ターゲット施設、ターゲット医師)
  • どのくらいの頻度で訪問するか?(訪問頻度、Visit Frequency)

を定量的に考えないといけません。

抗ヒスタミン薬処方医師数

(8) 調査結果をもとにPts journey定量化で、定量調査結果から

  • HPの耳鼻科、アレルギー科の100%の医師
  • HPの内科の50%の医師
  • HPの眼科の50%の医師
  • 開業医の50%(診療科問わず)

が抗ヒスタミン薬を処方していることが分かり、構成統計要覧の医師数から計算して

  • HP耳鼻科:3,937*100%=3,937医師
  • HPアレルギー科:102*100%=51医師
  • HP内科:21520*50%=10,260医師
  • HP眼科:4,886*50%=2,443医師
  • 開業医10万人+50%=5万人

合計で16,651人のHP勤務医、開業医5万人の合計66,651人の医師くらいが全国で抗ヒスタミン薬を処方している、という推計をしました。うーん、多い…。抗ヒスタミン薬を処方している医師の数、といのはIQVIAなどのデータでも取れないので、こんな感じで推計して、MRが確認して…という方法しかないのです。m3から医師名付のデータを購入することはできませんが、市場を網羅しているわけではなく市場全体を知るのは相当に困難なので、Launch前の段階ではこのように推計してざっくりとこのくらいの人数であろう、と想定するしかありません。だからこそ、全国の処方医師数を推計できるように医師定量調査を設計しておくのも大事なのですが。

抗ヒスタミン薬処方施設数

「処方している施設数」はIQVIAで施設別の抗ヒスタミン薬売上がある施設のデータを購入することで「どこのHPで抗ヒスタミン薬が処方されているか?」は分かりますし、開業医も(ブリック単位で)おおよその目安は尽きます。ここらへんのデータは最新のサービスがあるかもしれないでので、IQVIAEnciseに相談してみてください。製品Xでは、抗ヒスタミン薬の売上があるHP名、ブリック名が分かるデータを購入したとして、全国で

  • 8,000のHP(20床以上)
  • 50,000の開業医
で抗ヒスタミン薬が処方されていたことが分かったとします。合計58,000軒、もしMRを100人でPromotion活動をしたとして、一人580軒、、、これはカバーできません。58,000軒は市場の100%ですから、すべてをMRでカバーすることはほとんどなく、80%をカバーするの軒数をMRが訪問する、というのがひとつの目安ではあります。

抗ヒスタミン薬の売上データから市場の80%の売上を産み出している施設数を計算します。実際のデータがないので、ここでは私の妄想でこのくらいかな、と
  • 6,000のHP
  • 10,000の開業

16,000軒の施設で市場の80%をカバー、ということはMRが100人いたとしたら、MR160軒、うーん、これでも多いな、、、

MRひとりあたりの年間コスト、訪問可能な施設数、医師数

MRあたりのコストは給与だけではなく社会保険、社用車等々あるので1500万円/年くらいと想定しておきます。ということは、MR100人で年間15億円のコストがかかるということです。

訪問する施設数、医師数にも限度がありまして、1日あたりのMRの医師に対するinteracticeな活動数(F2F、Web面談)を5回とすると、1か月の稼働日が18日とすると、月間90なので、もし1医師あたりのinteractive活動頻度を月に1回とすると、MRあたりのキャパシティは90人になるので、MR100人でカバーできるのは最大9,000人ということになります。

  • 6,000のHP、平均2名のターゲット医師
  • 10,000の開業、平均1名のターゲット医師
とすると医師数の合計は22,000人
 ↓
1医師あたり1か月に1回訪問をターゲットに設定
 ↓
必用なMR数は22,000/90=244人

という計算になるのですが、1MRあたりのコストが年間1500万円→244人のMRの年間コストは約37億円で、ピーク売上の22%がMR費用に…。製品Xに投資した金額の回収、本社スタッフの費用、Marketingイベント、Medicalの活動の費用などなどいろいろ出していくとMR費用はちょっと高い…10%以下には下げたい。。。みたいに色々な考えを巡らせます。

COVID-19で面会はなかなか難しくなり、SoV至上主義時代のように「週に2回!月に8回ターゲット医師に面会せよ!」という極端な訪問頻度設定もなくなってきていると思いますし、製品Xの場合は「1回服薬で1か月効果持続」という非常に差別化ができた、医師の関心度も高い製品ですので、High potentialの施設を除いては
  • 製品基本特性=デジタルチャネルで伝達
  • 反応があった施設にMRが訪問して口座開設(開業医なら卸を活用)
なんかも考えられると思います。特に製品Xのように「差別化が既存薬としっかりできている」製品では、特にLaunch直後はDigitalで医師に情報提供→反応した医師に対してMRがアクション、というようなことが機能しやすいです。そうなったとして開業医への平均訪問頻度がかなり下げられて、3か月に1回でOKとしましょう。

HP所属High potential医師=3,000人:月に1回訪問
HP所属その他医師=9,000人:3か月に1回訪問
開業医のHigh potential医師=2,000人=月に1回訪問
開業医のその他医師=8,000人=3か月に1回訪問

とすると、1か月間に必用なinteractive面談数は10,667回(医師数も10,667人)になり、MRあたり119人(10667/90)のMRで全国をカバーできることになります。119人でなんとか薬価売上の10%程度のMRコストになりまし。こうなる原因は抗ヒスタミン薬の薬価がどんどん下がっていて、既存薬の1患者あたりの1か月の薬価が1500円くらいなので大きな原因なんでしょうが。

そもそも自社=Insight Pharmaが自前でpromotionする必要あるの?

ここまで自社でMRを採用してpromotionする前提で話してましたが、Insight Pharmaが今は40人のMRで神経内科を訪問しているだけで、抗ヒスタミン薬処方医とのつながりはないわけで、もし製品Xを自社promotionをするのなら、新たに119名のMRを採用し、Sales head, First Line Managerを採用、教育研修、、、とかなりの時間とお金がかかります。

既に抗ヒスタミン薬は市場に多くあって、既存薬をpromotionしている製薬メーカー、MRもおり、抗ヒスタミン薬は比較的古い薬が多いので

  • ジェネリック参入間近…
  • これまで抗ヒスタミン薬市場でプレゼンスはあったが…

みたいな製薬会社があれば、その会社に製品Xを売ってもらうという可能性もあります。この場合の金銭面の条件や交渉は社内の専門家に任せることになりますが、最初から自社でPromotionをする、という選択肢だけではなく他の製薬会社にpromotionをしてもらう、という選択肢も排除せずにplanningしていきましょう。

Insight pharma、製品Xの場合は?

insight pharmaが自社MR119人で製品Xを発売するか?それとも他社にPromotionをしてもらうかの判断は、他社とのPromotionの契約条件にもよりますが、それ以外にも自社パイプラインに抗ヒスタミン薬、類するものがあって、抗ヒスタミン薬市場でプレゼンスを拡大しておきたい、などの定性的な理由も勘案しないといけません。製品Xの場合は将来のパイプラインは無いとしても、微妙なとこかな、、、いいパートナーが見つかれば、、、と思います。

製薬業界の常ですが、どうしても自社製品をより売りたい、頑張る、という意識・傾向がありパートナー企業にpromotionをしてもらうと、売上が伸び悩むという現象もあります。いっぽうでパイプラインが枯渇している国内メーカーは喉から手が出るほど欲しいくらい製品Xは差別化ポイントも明確で魅力的(=MRのやる気に依存せず売れる!)なので、契約条件を上手に設計してパートナー企業にpromotionをお願いするのも良い選択肢だと思います。

理想的には上市の1年半~2年前くらいまでには自社でpromotionするか?パートナー企業にしてもらうか?は決めておきたいところです。自社でする場合はMRの採用に時間がかかりますし、パートナー企業にpromotionをしてもらうにも、Brand planの策定に早くからパートナー企業に入ってもらい、一緒にBrand plan、Launch planを策定したほうが相互理解、製品理解が深まり上市後の成功確率もあがります。

Digital channelとMR

そのうち別の記事にしますが、SoV至上主義時代はまだまだDigital channelは発展途上で、医師に対するPromotionの90%以上をMRが担っていました。COVID-19の影響もあり、製薬Mareketingの世界ではDigital channelが大きな役割を占め始めて「MR要らないんじゃない?」という声もチラホラ聞こえ始めています。私が体感、経験上思うのは

  • シンプルな製品特性の伝達はDigital channelで
  • 具体的な患者への治療提案、医師への気づきを与えるような仕事はMR

というような分業が今後はさらに進むんだろうな、と思っています。SoV至上主義の時代は「ターゲット医師に週に2回訪問せよ!」というかなりの訪問頻度が設定されることもあり、そんな高頻度もKey messageを連呼して医師に製品特性を刷り込むためには必要だったかもしれません(今も一部、そういう市場、薬剤はあるとは思います)が、Potentialが高い医師には月に1回訪問、それ以外は3か月に1回訪問設定で、Digital channelを有効活用して、基本製品情報、定期的な情報のUpdateはもうDigital中心でいいよ、って医師が多数を占めてきているように思います。MRはより医師の治療パートナー、アドバイザー、コンサルタントという高いスキルが求められる時代になってきていて、SoV時代のようのやり方が通用しなくなってきているのがInsight marketingの時代ですので、それに対応したMR配置、人数、チャネルミックスを製品の特性、ライフサイクルに合わせて考えていかなければならないのです。

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