insight時代のBrand Plan
- Pts journeyの定量化
- Pts journeyの定性化
- Pts journey定性調査、医師インタビュー
- Pts journey定性調査、患者インタビュー
- Pts journey定量調査、その前に
- Pts journey、医師定量調査
- Pts journey、患者定量調査
- 調査結果をもとにPts journey定量化
- 定量化pts journeyとForecastモデル
- Pts journeyにinsightを!
- Current/desired peceptionを考えよう
- Insightワークショップをやってみよう!
- Segmentation、言うは易く行なうは難し
- Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
- Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
- Data generation : Brand Teamでどう取り組むか?
- Data generation workshopをやってみよう
- Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!
前回の記事において、医師定性調査結果からPts journeyに沿ったInsight、医師のcurrent/desired perception(≒positioning)案、さらに製品X使用にいたるまでのStep(strategy)案が見える化できました。(案=仮説と言い換えてもいいのです)またWeb検索とかデスクリサーチで作った粗々な定量化したpts journeyの案もあります。定量調査では、それらを定量的に把握して、仮説を少しずつ確かなものに近づけていく調査です。
まず決めないといけないのは調査対象の医師の範囲です。既存品であれば、ターゲット医師だけを調査対象にすることも多いですが、今回は新製品Xで、Insight Pharma社内に「抗ヒスタミン薬を投与している医師」の情報もあまりないので、「抗ヒスタミン薬を花粉症の患者に過去1年間に1例以上投与経験がある医師」という広い範囲での調査をお勧めします。
「いやいや、これじゃ調査対象医師が広すぎだよ、年間5名以上とか、もっとPotentialの高い医師に絞ったほうがいいのでは?」という意見もあると思いますが、「抗ヒスタミン薬を投与している医師全体の市場を知りたい」のがLaunch時なので、1名以上でとっておけば、それを市場全体に拡大することできます。ここで、5名以上と制限したり、内科=50名、耳鼻科=50名…、とか割り付けると調査結果を市場全体に拡大することが難しくなるのです。調査結果を市場全体に拡大するために、調査会社と相談して、調査回答依頼はパネルの全医師(≒日本の医師の母集団に近い集団)に回答依頼をして、調査対象にならなかった医師=抗ヒスタミン薬を花粉症の患者に過去1年間に1例も処方しなかった医師、も診療科別の人数はもらうようにしておきましょう。
とはいえ、予算の都合があるのであれば、抗ヒスタミン薬1名以上を対象者にしつつ、最初の数問で市場全体に拡大したいような質問(患者数、投与薬剤、等々)を聞いて、もっと細かい質問(製品Xへの反応とか)は5名以上にのみ聞くという手もありますが、予算が許すなら1名以上がお勧めです。(high potential医師とlow potential医師の違いが見えることもありますし)
次は調査回答者数=サンプル数=n数です。製品Xの調査の場合、あとで医師Segmentを最大5つとして、可能なら1セグメントあたり30~50サンプルあるといいな、ってことで150-250くらい集められたらいいな、と思います(調査会社と相談しましょう)。サンプル数が増えれば回答者への謝礼も増えるので予算と相談、という面もあります。
市場調査結果を「有意差検定をしたい」という要望もたまにあるんですが、正直、なかなか有意差検定まで耐える調査設計は難しいのと、有意差検定をすることで得られる付加価値情報をそこまで感じたことはないのでそんなに有意差検定にこだわることはないかな、と思っています。とはいえ、”許容誤差が5%の場合「400サンプル」がひとつの目安”くらいの数字は覚えておいたほうがいいと思います。現実的に医師の定量調査で400サンプル集めることはなかなか難しい→有意差検定をしても…というのがお分かりいただけるかと思います。
ここから実際の調査票=Web調査でどんな順序で、どんな質問をしていくか?を決めます。基本的には医師定性調査と同じ流れで大丈夫です。ここから順番にどんなことを、どういう質問形式で聞いていくかを書いていきます。
患者数など基本情報
定量的にPts journeyを完成させるために必要な情報をとるのですが、この時点でForecastモデルも作っておくと「ここの数字がちょっと不明だな…」っていうのも定量調査で聞けるので意識しておくとよいので、pts journeyを定量化したForecastモデルも作っておきましょう。あとは、今後Tragettingに必用になってくる「市場の80%をカバーするために何名の医師をターゲットとする必要があるか?」というのを計算するためにも患者数を聞くのは重要です。いろいろと先読みをした上で、どんな質問をするのか?を決めていかなければないません。では具体的に聞く項目は
- 1年間に診察する花粉症患者数
- うち、薬物療法を実施した(処方薬を処方した)患者数
- うち、抗ヒスタミン薬を処方した患者数
- 抗ヒスタミン薬別の処方患者数
- 抗ヒスタミン薬を1シーズン、1患者に何日分処方するか?(2回受診、1回28日処方=合計56日、等々)
みたな感じでしょうか。ここまで取っておくとPts journeyがWeb検索で作った粗々ものがだいぶ具体的な数字になってきます。
花粉症と治療に対する医師の考え
定量調査だと、患者数、薬剤選択の重視度、処方意向とかそういうものを聞く、ってイメージがありますが、insight marketing時代に重要な質問が「医師の考え」を聞く質問です。これを聞くことによって、医師は花粉症の治療についてどう考えているか?さらにSegment毎にわけてクロス集計したらSegment毎の考えの違いが明らかになって、Segment毎のペルソナのペルソナ、Insightを作成するのにとても役立ちます。SoV至上主義時代の定量調査のフォーマットからは外れるので、この質問を嫌がるResearch担当者はけっこういるのですが、これがないと「気持ち、考え」が分からないのです。
私はよく使う聞き方は例えば定性調査の仮説でも出てきた「多くの医師は花粉症の専門家と自分で思っていない」ってのがありましたので「私は花粉症の専門家ではない」というのに1-7同意で答えてもらう質問です。1-7とは
- まったく同意しない
- 同意しない
- やや同意しない
- どちらでもない
- やや同意する
- 同意する
- 非常に同意する
という7段階で答えてもらう質問です。そうするとこんな感じの結果が出てきて、Segmentごとに分けてクロス集計してみて違いがでたら、それぞれのSegmentの考え、行動からペルソナを作るのにとても役立ちます。
ではどんな「花粉症と治療に対する考え」を聞いたらいいのでしょうか?定性調査後の結果から立てた仮説の検証、こんなところで医師の考えに違いがでるんじゃないか?(=医師Segment仮説の検証)のようなものをどんどん聞いていきます。具体的には
- 花粉症の季節に、花粉症の症状できた患者は花粉症と判断して、薬を出している
- 正直、花粉症の診断や治療にあまり興味はない
- 花粉症の最新治療や、新しい薬剤の情報を積極的に自ら収集している
- 花粉症の情報はm3やMRさんから入ってくるので、自分から積極的に情報収集はしていない
- 第2世代抗ヒスタミン薬は有効性、副作用(眠気等)の強弱によって、何種類かを使い分けている
- 第2世代抗ヒスタミン薬はどれも似たようなものなので、あまり使い分けを意識していない
- 患者から花粉症治療にどの薬が欲しい、とリクエストがあったらその薬を処方する
- 第2世代抗ヒスタミン薬はあまり違いがないので、製薬会社の貢献やMRの頑張りが処方の時に影響する
- ・・・・
みたいな感じでしょうか。後で聞く質問の「製品Xの処方意向 high/middle/low」で上記クロス集計をすると、処方意向別医師の花粉症治療への考え方の違いが浮かび上がってくる、そんな使い方を花粉症治療医(抗ヒスタミン薬処方医)全体の考え方に加え、理解するためにこの質問は使えます。
第2世代抗ヒスタミン薬の評価、抗ヒスタミン薬選択理由
定性調査の結果からも分かる通り、製品Xは「月に1回服薬」という圧倒的な差別化ポイントがあるので、これは聞いても聞かなくてもいいかな、とも思うのですが、SoV至上主義時代の偉い人たちが好きな質問で「政治的に」いれることが多いので聞いておきましょう(削除しても全く問題ないですが)
Q 花粉症の患者に抗ヒスタミン薬を処方するのに重視する項目を1=全く重視しない、10=非常に重視する、で10段階でご回答ください
- 有効性
- 安全性(副作用)
- 薬価、患者負担
- 服薬回数(1日1回、1日2回)
これくらい聞いといたらいいかな、と思います。SoV至上主義時代のTracking調査、ATU調査だと有効性をさらに分解して「効果発現の速さ」「効果の強さ」「効果の持続性」とか詳細にきいて、10個以上聞くこともあるんですが、(「ATU調査、Tracking調査というマンネリ」記事参照)そもそも抗ヒスタミン薬を「ぶっちゃけあまり変わらないよ」って思っている医師が多いって定性調査で分かっているので、細かく必要はないです。
次は各薬剤の評価です。抗アレルギー剤の売上ランキングはこんな感じなので
- ビラノア
- ルパフィン
- ザイザル
- デザレックス
の4材を、「薬剤選択重視項目」と同じものを、同じように10点満点で聞いておきましょう。製品Xが有効性・安全性はザイザルと同等、ってなっているので、ザイザルは聞いておいたほうがいですね。
製品Xの評価・処方意向
定性調査で使った製品Xの情報を提示して、医師の考えを聞きます。
まずは「製品Xの説明資料をご覧いただいた上で、先生のお考えをお教えください」と1-7同意質問をします。謝礼を払っているとはいえ、提示資料ってなかなか医師もしっかりは見てくれないので、提示資料の内容をリマインドする意味もあります。あとは定性調査からの仮説の検証です。
- 1カ月に1回服薬、というのは画期的で他の第2世代抗ヒスタミン薬とは大きな違いがあると思う
- ザイザルと同等の有効性・安全性なら安心して処方できる
- 1カ月効果持続するということは、副作用がでたら副作用も1カ月持続するので安心して処方ができない
- 他の医師が処方をして大丈夫だな、と確認してから製品Xを処方すると思う
- …
こんな感じで1-7同意をして、医師全体の製品Xに対する考え、Segmentや処方意向別でクロス集計するとここでも医師の差が浮かび上がってきて、セグメント毎のペルソナを作るときに役立ちます。
さらに深く製品Xをわかってもらうために、医師定性調査でも提示した「積極的に処方する医師」「積極的に処方しない医師」のコメントも提示して先生の考えを聞いてみます。
これも1-7同意で「医師のコメントもご覧いただいたうえで先生のお考えをお教えください」で
- 花粉症の薬を飲み忘れる人が多いし1カ月に1回服用は利便性が高いので、患者も1.5倍の薬価は受け入れてくれると思う
- 私の患者さんは今、処方している抗ヒスタミン薬で困っていないので、製品Xをあまり処方しようとは思わない
- 私が処方したいと患者さんに提示しても、患者さんが拒否すると思う
- 患者さんに説明するのは手間だし、そこまでして製品Xを処方しようと思わない
- ・・・
みたいな感じで聞いていきます。
製品特性の資料、質問への解答、積極/非積極の医師のコメントまで見てもらうと、かなり医師の製品XのPros/Consなどの理解が進むので、ようやくここで処方意向を聞きます。
製品Xの処方意向
処方意向の聞き方には色々な聞き方がありますが、「製品Xを処方したいと思う(1-7同意)」みたいな聞き方はForeacstに使えないですし、pts journeyの定量化にも役に立たないので絶対にやめましょう。「製品Xを何%の花粉症患者さんに処方したいと思いますか?」はまだForecaast、pts journeyの定量化に使えるのですが、ここまで製品Xの話をしてきていて、この聞き方をするとかなりバイアスがかかって、高い処方意向ででるのでおすすめできません。
製品Xの話ばかりしているので、製品X処方が高くなるバイアスがある程度かかってしまうのは仕方がないのですが、できるだけバイアスを少なくするためにも、最初のほうに答えてもらった「現在の抗ヒスタミン薬投与人数」を再掲しつつ、「製品X発売後の投与人数」を聞く方法がお勧めです。
ここまで聞けたらPts journeyの医師定量調査はいいんじゃないかな、と思います。あとは医師の属性質問(勤務先施設、HP・GP、診療科など)はもちろん聞いておいたほうがいいです。それ以外にも
- 抗ヒスタミン薬のPromotionでMR訪問を受けているメーカー頻度
- 抗ヒスタミン薬の情報源
とかを聞いておくと、Channelをどうするか?って時に役に立ちます。これだけの情報を得られたら、Pts journeyも根拠をもってより具体的になりますし、TargettingやMRの人数(SFE:sales force effectiveness)、Segmentation、Positioningなどいよいよ本格的なBrand plan作成に進んでいきます。
その前に次回は患者Pts journey定量調査ですね。患者さんもKey stake holderなのでとても大事ですのでお楽しみに。
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