2023年5月8日月曜日

(18) Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!

 insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!

ここまで17回にわたって製品XのLaunch Brand Planの作成について記事を書いてきました。発売(薬価収載)の2年前にBrand teamが立ち上がり、デスクリサーチ、pts journey、市場調査、current/desired perception、Positioning+Strategy決定、Data generation planと作成して、半年くらいは時間が経っていると思います(ということは、発売の1年半前!)ましたが、そろそろSenior managementやGlobal、APACにplanをPresentationをする機会が増える頃です。どんな情報、スライドを?どんな流れでプレゼンするのが良いのでしょうか?

ここまでくるとたくさんの情報、プランを作成したので大量のスライドが手元にあると思いますが、社長含むSenior managementにプレゼンするときには

  • スライドを見て5秒で理解
  • 1スライド1メッセージ
  • タイトルスライドには伝えたいメッセージを
を可能な限り意識して作成しましょう。Senior managementの人たちはBrand teamのメンバーではないので、製品Xや競合についての情報はBrand teamのメンバーと同じ詳細までは知りませんので、常にbig pictureから入って詳細に行くのを忘れてはいけません。

典型的な(Launch) Brand Planはこのような流れが良いと思います。

Market understanding
当該市場の大きさ(抗ヒスタミン薬市場の大きさ)、診療医師数、患者数…など「日本の抗ヒスタミン薬市場はこうなっている」というのが分かるものを作成しましょう。本来ならば「薬事工業生産動態統計調査」やIQVIAのデータから作成したほうがいいですが、ちょっと手抜きさせてもらって


みたいな感じで市場の大きさ、ここでは金額ですが、抗ヒスタミン薬の市場はvolumeはあまり変わらなくて、薬価低下によって市場の規模が小さくなっている、など伝えるべきと思います。

あとは日本の特徴である「スギ・ヒノキ花粉の季節=2-4月に売上が集中」というのもGlobalの人たちには知ってもらったほうがいいのでこんな感じのものを(これはOTCのものですが)示して、日本市場の特殊性=2-4月に抗ヒスタミン薬の売上が集中することも伝えたほうがいいと思います。


その他、Market understandingで示す候補は
  • Brand share %
  • 自社、競合の今後の新製品発売、適応拡大
  • 自社、競合のMR数
  • ・・・
など、当該市場をマクロに、大枠で理解してもらったほうがいいものを提示します。

Pts journey

続いてはPts journeyです。ここはとても大事なのですが、お勧めはまずは定量のPts journey(↓)このスライドを示して、市場でのPts journeyを定量的にイメージしてもらいます。



その後「どのMomentが自社Brandにとって成功の鍵となるか?」を定量、定性、両面から示します。このくらいのスライドにまとめたら十分です。



続いてはSemgmentです。Brandの成功のためにどのSegmentに…というのを説明し、必要とあらば、特に重要なMomentのKey stakeholdersのInsight、current/desired perceptionを示すのも、聴衆にイメージしてもらうのに役立つと思います。



ここまでで、聴衆は「なるほど、この市場はこうなっていて、自社ブランドの成功のためにには、このmoment、Segmentが大事で、Segmentの認知をこういう風に変えないといけないんだな」というイメージを持ってもらうのがとても大事です。

Positioning statement、Strategy
次のStepはこのようなスライドで「Brandの成功のためにはこれが必要不可欠」という戦略を示します。今回のスライドではCSF(Critical success factor)という形でまとめています。


ここまでで戦略パートは終了で、「Brandの成功のためには…」というハイレベルな点は合意されると思います。

ここから先は、アクションになっていきますが、上記戦略に沿ったMarketing、Medicalのアクション、KPIなどを追加していくことで「なるほど、こういうアクションをするからCSFが達成されるんだな」という納得感を聴衆に与えるようにしましょう。

それ以外にも
  • Budget(予算)
  • Forecast
など必要な内容は各社、レビューによって違うかと思いますが、大事なのはクロスファンクショナルに合意した戦略がきっちりあって、それに沿った活動、予算が策定されており、実現可能だ、投資する価値がある、とSenior managementに理解してもらってお墨付きをもらうことです。

Senior managemetは忙しく、多くのBrandをレビューする必要があるので、スライドは1時間のレビューであれば、本編は20枚程度に収めましょう(それ以外はBackupに)。このくらいでないと、理解が追いつきませんし、これくらいの枚数で説明できないような戦略はわかり辛く成功するとは思えません。そのBrandに携わっていると、詳細まで説明したい気持ちになるのはとても理解できるのですが…。Senior managementのレビューはシンプル&ロジカルであることを忘れないようにしましょう。





2023年4月23日日曜日

(17) Data generation workshopをやってみよう!

insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!

Data Generation Workshopと聞いてもピンとくる方はあまりいないかもしれません。目的は、Brandのlife Cycleや競合状況を考慮して「どのようなdataを出していくことがBrandの成功に必要か?」をBrand Team全員で考えるワークショップです。「Brand plan」の一部なので出発点はブランド戦略からで、製品Xの場合はこのLaunch戦略です。

このLauncch planを作成する時に考えていた時間軸は「製品X上市時」です。もしくは「製品X上市から1-2年」くらいを考慮して作成していました。Data generationはとても時間がかかるので、「製品X発売から5年以上」くらいの時間軸で考えないと、顧客のcurrent/desired perceptionは

  • 5年以内にどんな競合が出てくるか? 
  • 競合がどんなdataを出してくるか? 
  • 製品Xのdataはどんなdataが出てくるか?

などによって変化していきます。その変化も考慮したうえでData generation planは作成しなければなりません。その意味では「Data generation workshop」であるとともに「Brand Life Cycle plan」の側面もあるのです。

今後5年間、製品Xの競合品が現れない場合のData generation workshopはシンプルでcurret/desired perceptionと全く同じです。製品Xが一番注力すべき「製品Xの処方意向が50%未満の医師」のcurrent/desired perceptionはこんな感じでした。 


このGapを埋めるためにはどんなデータがないといけないか?を考えていくと

  • 1カ月効果持続でも副作用の心配は要らない、というデータ(特に日本人において)
  • 既存の抗ヒスタミン薬で困っていない、満足している医師のunmet needsを顕在化するというデータ 

の2つがData generationでなんとかしたい、なんとかできそうなことじゃないかな、と思います。ひとつずつ考えていきましょう 。

1カ月効果持続でも副作用の心配は要らない、というデータ(特に日本人において) 

製品Xの承認申請資料に何がどこまで入っているかにも拠るのですが評価資料に日本人のサブ解析データが入っていて、1カ月効果持続でも副作用の心配が要らないというのは説明でできるデータが入っていると思いますので、それはもちろん資材などにして使えるでしょう。ただ高齢者、妊婦、小児は入っていないので、これらの患者への安全性は?これは市販後調査の結果で出したら?海外データでならある??いつ頃、どんなデータが出せるか?というのを考えると、例えば

  • P3試験:日本人含めた長期(3回=3カ月投与継続したデータ)=Launch直後使用 • 海外データ:高齢者、妊婦、小児のデータ(承認資料にはない)=いつから使える?Launch1年後? 
  • PMS:日本人の安全性データ=Launch2年後 

みたいな感じでまとめていきます。 

既存の抗ヒスタミン薬で困っていない、満足している医師のunmet needsを顕在化するというデータ 

「患者は毎日服薬せず花粉症freeになれる」の話にもかかわるところで、P3試験結果に毎日抗ヒスタミン薬を服薬している患者と比較したQoLデータがあったら使えます。Data generationというと、どうしても臨床試験のイメージになってしまいますが、例えば患者のケーススタディ(←なかなか資材化はできませんが…)や患者のニーズ調査なども考えていく必要がありますこれも同じように、いつ頃、どんなデータが出せるか?出す必要があるか?でまとめてください。 

競合が出てこない場合のData generationはこのようにかなりシンプルなのでWorkshopをするまでもないかもしれません。が、現実には競合が出てきて、競合が適応拡大をして、というのがほとんどの場合だと思います。これまで製品Xの競合についてはあまり触れてきませんでしたが、

  • 製品X発売3年目に競合製品Yが上市
  • 製品Yは皮下注の抗ヒスタミン薬で効果持続時間が3カ月
  • 有効性は製品Xよりも高く、安全性は製品Xと同等
  • 薬価は製品Xよりも30%高い
  • 海外ではLaunch直前で、海外Phase3試験は終了
  • 日本では国内P3試験が実施中 このように「製品Y」が出てくる

ことを想定するとData generationは複雑になります。まずは製品Xのstrength/ weaknessを考えてみましょう。

  • Strength:経口薬で投与簡便薬価
  • Weakness:効果継続が1カ月で製品Yの3カ月より短い、服薬忘れがある可能性

War game的に「製品Y」から見たstrength/weaknessも裏返しっちゃ裏返しなんですが

  •  Strength: 2ヶ月効果持続なので1回の通院で花粉症free、飲み忘れがない、海外P3試験で製品Xより患者QoLが高いことが示唆された
  • weakness: 注射で患者が嫌がる、薬価、冷蔵保存

競合の製品Yが出てくると、launch時のdesired perception だと製品Xが処方されなくなる可能性があるので、その確認をしましょう 

1回服薬したら効果が1か月持続するのは患者さんが飲み忘れないメリットだけじゃなくて、患者さんが「花粉症free、花粉症であることを忘れられる」メリットが患者さんには大きことに気が付きました。薬価は既存薬の1.5倍くらいでちょっと高いですが、スギ花粉症の患者さんの症状は1-2か月は続くので、それが1-2錠でコントロールできるのは画期的ですね。患者さんと相談ですが、私は積極的に処方したいと思います。

この製品Xのdesired perceptionを見てみるとこのdesired perception になった医師は、製品Xでも製品Yでもどちらでも当てはまる=製品Yが出た後は、このdesired perceptionを実現するだけでは製品Xは選ばれない、という状況になるので、製品Yが出た後でも「製品Xを処方する」医師のdesired perception を考えないといけません。この作成方法はinsight generation workshopと同じです。

1回服薬したら効果が1か月持続するのは患者さんが飲み忘れないメリットだけじゃなくて、患者さんが「花粉症free、花粉症であることを忘れられる」メリットが患者さんには大きことに気が付きました。薬価は既存薬の1.5倍くらいでちょっと高いですが、スギ花粉症の患者さんの症状は1-2か月は続くので、それが1-2錠でコントロールできるのは画期的ですね。注射剤は侵襲性があって患者さんも嫌がるしそういうデータもあるし、冷蔵保存の手間もあるし、製品Xより値段も高いし、そこまでのメリットを感じません。患者さんと相談ですが、私は積極的に処方したいと思います。

このようなDesired perceptionなら製品Y発売後も製品Xが選ばれそうです。 ここで時間軸をもう一度考えます。3年後に製品Yが発売なので、その時の製品Xのdesired perceptionになっているようにするには、いつまでに、どんなデータが必要か?ということを考えます。「もしそのデータが出なかったら?」のリスクも考えます。

製品Y対策に必要なデータ

  • 患者は2カ月有効の注射剤より経口薬を好むというデータ
    (比較のデータなので取り扱いは難しいが…)
  • 注射剤よりも経口の製品XのほうがQoLが高いというデータ
  • 製品Xの服薬コンプライアンスが製品Xと比較して悪くない(非劣勢)というデータ

もし上記のデータが出なかったら…

  • 製品Xのこれまで言っていた「服薬忘れがない」「花粉症Free」のpositioningを製品Yに持っていかれてしまう

みたいな感じでしょうか。作り出したい医師のdesired perception は短く書くと「製品Xで満足、安心して処方できるし」なのでそのために 副作用懸念の払拭、高齢者、小児、妊婦データは製品Yが出なくても出てくるものですが、製品Yが出た後の製品Xが処方されるdesired perceptionから 花粉症シーズンに2回飲む手間はたいしたことない、患者が飲み忘れない確信もてるデータ これ大規模試験とかじゃなくても小規模なもの、患者アンケートを元にしたものでもいいので製品Yが出る前に出すことが大事です。data generationではないですが、「○○病院の製品X服薬忘れを減らす取り組み」とかのWeb記事でもいいかも知れません。って話になるからdata generation workshopといいつつ、brand lifecycle workshopにもなるのです。

これらをEXCELでのPowerPointでもいいのですが、こんな感じでまとめていくと、


その時に、競合は市場環境の変化も加味したうえでのDesired perceptionが、顧客別にどうあるべきか?そのために必要なデータは?それはいつまでに出さないといけない?というのが見える化されて、その「データを出さなければいけないタイミング」が見える化されると、いつまでに臨床試験の計画を立てて。。。みたいな長期的なdata generation planが策定できます。

前の記事にも書きましたが、ここまでしっかりとlaunch前からData generation planを作成することはなかなか難しいのですが、ここまでしっかりとしておけば、長期的な戦略のブレもなくなり、そのBrandの成功を大きく引き寄せることになるので、もっともっと実施されてもいいはずのWorkshop、planningだと思うのですが、あまり実施されていないのがとても残念です。




2023年4月18日火曜日

(16) Data generation : Brand Teamでどう取り組むか?

insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!

製薬会社によってmedicalチームのmarketing、salesへの関わり合いかたは異なっていて、firewallがありコミュニケーションが無い場合もあれば、medicalチームもBrand Teamの一因としてmarketing, salesチームと密に協働する場合もあります。

MedicalチームはKOLマネージメントや今後どんなエビデンス、データが出るか、出していくかというData generation についてはBrand Teamで情報をシェアして一緒にプラン策定していくのが良いとは思いますが、現実に上手くいっているケースはあまり多くないのではないでしょうか?

どのようなData generationをしていくか?のプランのリードはメディカルチームなのですが、KOLにadvisory boardなどで「どんなdata generationが必要か?」の意見を伺い、メディカルチーム内でData generation planを策定し、marketingやsales に伝達する、というようなパターンもありますが、KOLの興味関心、current/desired perceptionが多くの処方医と同じならKOL の意見を伺って…という方法で問題ないのですが、製品Xのように治験医=KOLの多くはアレルギーの専門医で、処方医のほとんどは非専門で興味、関心、current desired perceptionは違う場合はData generationのニーズが異なるので問題が起こります。

変な例えですが、私は気象マニアなので毎朝GPVの気象データでこういう情報を見て、ああでもないこうでもないと考えるのが大好きです。

しかし99%以上の人たちが知りたいのはこんな詳細で複雑なデータじゃなくて「今日の天気は?」なのです。(こういうの↓)

KOLの意見はもちろん大事であり参考にすべきですが、KOLの意見が多くの治療医と同じとは限りません。特にMedical teamのメンバーはKOLとコミュニケーションをすることが多いので、錯覚してしまうこともあります。

製品Xの成功を考えると処方の95%以上を占める「KOL以外=非専門医」のことも考えなければなりません。非専門医のことを忘れてKOLが好むマニアックなdata generation計画が溢れて、製品上市後に「なんでこんなデータばかり出てくるんだ…もっと(非専門医の)実際の処方医に響く、刺さるデータが必要なのに…」となることも経験しています。data generationは計画してからデータが出てくるまでに何年も掛かるので、そうなってはもう後の祭で、その後にData generationを開始しても実際にデータが出てくるのは数年後です。

ではどうしたら、Brandのライフサイクルにあった、顧客に響く、刺さるメッセージを伝えられる、データ、エビデンス(臨床試験結果など)をタイムリーに出して行くことができるのでしょうか?そのためにはlaunch planの段階から5年以上先を見越してのdata generation planを考える必要があります。もっと言うと、臨床試験の計画段階からMarketing teamがインプットをしっかりして、長期的な競合の上市を見据えてData generation planが策定されているのが理想です。と、言うのは簡単なんですが、実現はなかなか難しい…私もdata generation planを上手く上市前に策定し、上市後に予定通りタイムリーにデータが出たのは数えるほどです。が、その「数えるほど」のBrandはいずれも成功をおさめています。

なかなか上手くいかない1つ目の理由は「medicalはsales, marketingとは独立していなければならない」という考えです。その考え自体は間違っておらず「売らんが為のmedical team」にはなってはいけないと私も思います。一方でMarketing, sales含むBrand Teamの目的も同じく「売らんがため」であってはならないと思います。「Pts focusと製薬Marketingの意義」という記事にも書きましたが、製薬会社の使命は「提供、提案する治療でより高いpts outcomeを実現する」なので、medicalもmarketingもsales も目指すことは同じなのでその目的が共有された上でOne Brand Teamでdata generation workshopをするのがいいのではないか、といつも思っています。

今回の製品XのBrand strategyサマリースライドをご覧ください。

これはBrand Teamで作成したもので、私の想定としてはmedical teamも入って作成したものですので、これはLaunch Brand planでありmedicalもmarketingもsalesもこのプランに沿って=MedicalのMarketingもSalesもみな共通で様々な活動を企画実施していくものなんですが、往々にしてmedical teamは「いや、これはcommercialのものだから」という態度でこのスライドの内容を無視して全く独立したmedical planを立案することがあるのです。

medical teamが「主体的に」Brand Teamの一員となりBrand Planを策定して行くには、社長、medical head, marketing headなどsenior management が「medical もBrand team の一員であり、ハイレベルなbrand strategy は同じである」というコミットメントが必要です。ここで言う「ハイレベルなbrand strategy」は上記画像にある、positioning, segment, CSF, key messagesあたりです。詳細なmedical planではセグメントにKOLが追加されてもいいと思いますし、(brand plan全体のセグメントにKOL を入れてもいいですが)そこはMedical planの詳細は詰めてもらうとしても、共通部分は揺らいではいけません。

Medical teamのメンバーは積極的にbrand plan策定に関わり、このブログで書いているように「Brand planはなぜ必要で、どう作られているか?」を理解した上で「主体的に」Brand planの策定に参加することも重要です。ともすると、Medicalのメンバーは「ご意見番」「評論家」になりがちなケースもありますが「売らんがため」ではなく「患者の治療アウトカムを最大化するため」というBrand team共通の目的に向かって、主体的にBrand planの策定に関わっていかないとBrandの成功=患者の治療アウトカムの最大化は実現できない時代です。

以前よりも競合との差別化は難しく、のデータの差が大きくBrandの製品の売上に差がつくことが多くありますし、MedicalとData generationの重要さは以前よりもさらに増しています。6成分目のSGLT2阻害薬のエンパグリフロジンが糖尿病患者の心血管イベント(心筋梗塞や脳梗塞)を低下させるというエビデンスで一気に処方が増えたのもData generationのパワーだと思います。

https://answers.ten-navi.com/pharmanews/16877/

やや概念的なことばかり書いて長くなってしまったので、次回の記事でdata generationワークショップで実際にどのようにData geneartaionをBrand teamとして考えていくか?について書きたいと思います。

2023年4月17日月曜日

(15) Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)

 insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!

新製品を発売するときに、どれだけのMRを配置するか?は大きな投資であり重要なBusiness decisionです。すでに多くのMRを抱えているメガファーマで、既に抗ヒスタミン薬市場でプレゼンスがある場合には、既存のMRが「抗ヒスタミン薬の代替わり」として製品Xをpromotionしたらいいので、考え方は楽なのですが、製品Xをこれから上市するInsight pharmaにとって

  • 製品Xは日本市場における2製品目
  • 既存品は既存の製品はパーキンソン病治療薬でMR40名体制で神経内科にPromotion

というのをこの記事で書きました。製品Xがpeak sales500億円!みたいな超大型製品でしたら、何百人の専任MRを採用してpromotionをすることができますが、製品Xのピークの薬価売上高予測が170億円(薬価がピラノア*1.5)、となるとどれだけのMRが、何施設、何人の医師をターゲットとしてカバーするか?を決めなくてはなりませんし、その際のコストも考えないといけません。その為には

  • どれだけの施設、医師を訪問するか?(ターゲット施設、ターゲット医師)
  • どのくらいの頻度で訪問するか?(訪問頻度、Visit Frequency)

を定量的に考えないといけません。

抗ヒスタミン薬処方医師数

(8) 調査結果をもとにPts journey定量化で、定量調査結果から

  • HPの耳鼻科、アレルギー科の100%の医師
  • HPの内科の50%の医師
  • HPの眼科の50%の医師
  • 開業医の50%(診療科問わず)

が抗ヒスタミン薬を処方していることが分かり、構成統計要覧の医師数から計算して

  • HP耳鼻科:3,937*100%=3,937医師
  • HPアレルギー科:102*100%=51医師
  • HP内科:21520*50%=10,260医師
  • HP眼科:4,886*50%=2,443医師
  • 開業医10万人+50%=5万人

合計で16,651人のHP勤務医、開業医5万人の合計66,651人の医師くらいが全国で抗ヒスタミン薬を処方している、という推計をしました。うーん、多い…。抗ヒスタミン薬を処方している医師の数、といのはIQVIAなどのデータでも取れないので、こんな感じで推計して、MRが確認して…という方法しかないのです。m3から医師名付のデータを購入することはできませんが、市場を網羅しているわけではなく市場全体を知るのは相当に困難なので、Launch前の段階ではこのように推計してざっくりとこのくらいの人数であろう、と想定するしかありません。だからこそ、全国の処方医師数を推計できるように医師定量調査を設計しておくのも大事なのですが。

抗ヒスタミン薬処方施設数

「処方している施設数」はIQVIAで施設別の抗ヒスタミン薬売上がある施設のデータを購入することで「どこのHPで抗ヒスタミン薬が処方されているか?」は分かりますし、開業医も(ブリック単位で)おおよその目安は尽きます。ここらへんのデータは最新のサービスがあるかもしれないでので、IQVIAEnciseに相談してみてください。製品Xでは、抗ヒスタミン薬の売上があるHP名、ブリック名が分かるデータを購入したとして、全国で

  • 8,000のHP(20床以上)
  • 50,000の開業医
で抗ヒスタミン薬が処方されていたことが分かったとします。合計58,000軒、もしMRを100人でPromotion活動をしたとして、一人580軒、、、これはカバーできません。58,000軒は市場の100%ですから、すべてをMRでカバーすることはほとんどなく、80%をカバーするの軒数をMRが訪問する、というのがひとつの目安ではあります。

抗ヒスタミン薬の売上データから市場の80%の売上を産み出している施設数を計算します。実際のデータがないので、ここでは私の妄想でこのくらいかな、と
  • 6,000のHP
  • 10,000の開業

16,000軒の施設で市場の80%をカバー、ということはMRが100人いたとしたら、MR160軒、うーん、これでも多いな、、、

MRひとりあたりの年間コスト、訪問可能な施設数、医師数

MRあたりのコストは給与だけではなく社会保険、社用車等々あるので1500万円/年くらいと想定しておきます。ということは、MR100人で年間15億円のコストがかかるということです。

訪問する施設数、医師数にも限度がありまして、1日あたりのMRの医師に対するinteracticeな活動数(F2F、Web面談)を5回とすると、1か月の稼働日が18日とすると、月間90なので、もし1医師あたりのinteractive活動頻度を月に1回とすると、MRあたりのキャパシティは90人になるので、MR100人でカバーできるのは最大9,000人ということになります。

  • 6,000のHP、平均2名のターゲット医師
  • 10,000の開業、平均1名のターゲット医師
とすると医師数の合計は22,000人
 ↓
1医師あたり1か月に1回訪問をターゲットに設定
 ↓
必用なMR数は22,000/90=244人

という計算になるのですが、1MRあたりのコストが年間1500万円→244人のMRの年間コストは約37億円で、ピーク売上の22%がMR費用に…。製品Xに投資した金額の回収、本社スタッフの費用、Marketingイベント、Medicalの活動の費用などなどいろいろ出していくとMR費用はちょっと高い…10%以下には下げたい。。。みたいに色々な考えを巡らせます。

COVID-19で面会はなかなか難しくなり、SoV至上主義時代のように「週に2回!月に8回ターゲット医師に面会せよ!」という極端な訪問頻度設定もなくなってきていると思いますし、製品Xの場合は「1回服薬で1か月効果持続」という非常に差別化ができた、医師の関心度も高い製品ですので、High potentialの施設を除いては
  • 製品基本特性=デジタルチャネルで伝達
  • 反応があった施設にMRが訪問して口座開設(開業医なら卸を活用)
なんかも考えられると思います。特に製品Xのように「差別化が既存薬としっかりできている」製品では、特にLaunch直後はDigitalで医師に情報提供→反応した医師に対してMRがアクション、というようなことが機能しやすいです。そうなったとして開業医への平均訪問頻度がかなり下げられて、3か月に1回でOKとしましょう。

HP所属High potential医師=3,000人:月に1回訪問
HP所属その他医師=9,000人:3か月に1回訪問
開業医のHigh potential医師=2,000人=月に1回訪問
開業医のその他医師=8,000人=3か月に1回訪問

とすると、1か月間に必用なinteractive面談数は10,667回(医師数も10,667人)になり、MRあたり119人(10667/90)のMRで全国をカバーできることになります。119人でなんとか薬価売上の10%程度のMRコストになりまし。こうなる原因は抗ヒスタミン薬の薬価がどんどん下がっていて、既存薬の1患者あたりの1か月の薬価が1500円くらいなので大きな原因なんでしょうが。

そもそも自社=Insight Pharmaが自前でpromotionする必要あるの?

ここまで自社でMRを採用してpromotionする前提で話してましたが、Insight Pharmaが今は40人のMRで神経内科を訪問しているだけで、抗ヒスタミン薬処方医とのつながりはないわけで、もし製品Xを自社promotionをするのなら、新たに119名のMRを採用し、Sales head, First Line Managerを採用、教育研修、、、とかなりの時間とお金がかかります。

既に抗ヒスタミン薬は市場に多くあって、既存薬をpromotionしている製薬メーカー、MRもおり、抗ヒスタミン薬は比較的古い薬が多いので

  • ジェネリック参入間近…
  • これまで抗ヒスタミン薬市場でプレゼンスはあったが…

みたいな製薬会社があれば、その会社に製品Xを売ってもらうという可能性もあります。この場合の金銭面の条件や交渉は社内の専門家に任せることになりますが、最初から自社でPromotionをする、という選択肢だけではなく他の製薬会社にpromotionをしてもらう、という選択肢も排除せずにplanningしていきましょう。

Insight pharma、製品Xの場合は?

insight pharmaが自社MR119人で製品Xを発売するか?それとも他社にPromotionをしてもらうかの判断は、他社とのPromotionの契約条件にもよりますが、それ以外にも自社パイプラインに抗ヒスタミン薬、類するものがあって、抗ヒスタミン薬市場でプレゼンスを拡大しておきたい、などの定性的な理由も勘案しないといけません。製品Xの場合は将来のパイプラインは無いとしても、微妙なとこかな、、、いいパートナーが見つかれば、、、と思います。

製薬業界の常ですが、どうしても自社製品をより売りたい、頑張る、という意識・傾向がありパートナー企業にpromotionをしてもらうと、売上が伸び悩むという現象もあります。いっぽうでパイプラインが枯渇している国内メーカーは喉から手が出るほど欲しいくらい製品Xは差別化ポイントも明確で魅力的(=MRのやる気に依存せず売れる!)なので、契約条件を上手に設計してパートナー企業にpromotionをお願いするのも良い選択肢だと思います。

理想的には上市の1年半~2年前くらいまでには自社でpromotionするか?パートナー企業にしてもらうか?は決めておきたいところです。自社でする場合はMRの採用に時間がかかりますし、パートナー企業にpromotionをしてもらうにも、Brand planの策定に早くからパートナー企業に入ってもらい、一緒にBrand plan、Launch planを策定したほうが相互理解、製品理解が深まり上市後の成功確率もあがります。

Digital channelとMR

そのうち別の記事にしますが、SoV至上主義時代はまだまだDigital channelは発展途上で、医師に対するPromotionの90%以上をMRが担っていました。COVID-19の影響もあり、製薬Mareketingの世界ではDigital channelが大きな役割を占め始めて「MR要らないんじゃない?」という声もチラホラ聞こえ始めています。私が体感、経験上思うのは

  • シンプルな製品特性の伝達はDigital channelで
  • 具体的な患者への治療提案、医師への気づきを与えるような仕事はMR

というような分業が今後はさらに進むんだろうな、と思っています。SoV至上主義の時代は「ターゲット医師に週に2回訪問せよ!」というかなりの訪問頻度が設定されることもあり、そんな高頻度もKey messageを連呼して医師に製品特性を刷り込むためには必要だったかもしれません(今も一部、そういう市場、薬剤はあるとは思います)が、Potentialが高い医師には月に1回訪問、それ以外は3か月に1回訪問設定で、Digital channelを有効活用して、基本製品情報、定期的な情報のUpdateはもうDigital中心でいいよ、って医師が多数を占めてきているように思います。MRはより医師の治療パートナー、アドバイザー、コンサルタントという高いスキルが求められる時代になってきていて、SoV時代のようのやり方が通用しなくなってきているのがInsight marketingの時代ですので、それに対応したMR配置、人数、チャネルミックスを製品の特性、ライフサイクルに合わせて考えていかなければならないのです。

2023年4月15日土曜日

(14) Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?

 insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!

positioningってなに?」という記事でpoitioningという言葉は汎用されている割に、その定義、イメージが人によってまちまちな言葉だと書き、Positioningを「顧客がそう脳内で認知してくれたら自社製品が選ばれる」状態=Desired perceptionだよ、と説明しました。す。

ここで「≒」という記号をつかっているのは、これまでPts journeyのmoment毎に

current/desired perceptionを考えました。ですので、desired perceptionは顧客ごと、moment毎にたくさんできたのですが「顧客group(segment)」「重要なmoment」ごとのDesired perception=製品Xのpositioning」を考えてきたと言えます。


実際のアクション策定は重要なsegmentのCurrent preceptionをどうdesired preceptionに変えていくか?をしっかり考えていけばOKなので各segment、moment毎にdesired percetpion≒positioningがあります。ですが、日本のSenior managementやGlobalがreviewするようなBrand planの中では、segment毎、moment毎ではなく「ひとつのpositiojning statement」を求められるので、これまで作成したdesired perpcetionを上手にまとめあげてひとつにしていかないといけません。正直、私は「顧客ごと、moment毎にpositioning≒desired perceptionがあったらそれでいいじゃん」と思っているのですが、多くのBrand plan templateでは「1枚にそのBrandのposotioningや重要な戦略、メッセージなどをまとめたtemplateを求められるので作らないと…っていう感じです(サマリースライドなのであるべきだとは思っていますよ)

この1枚のスライドを作成するには、これまで作成したcurrent/desiredなど多くの分析、資料をまとめていきます。製品Xの場合は一番注力すべきSegmentは「製品Xの処方が50%未満の医師」でBrand choiceが大事なので、そこを中心にこんな感じにまとめてみました。

「2錠の2回の服用で2か月、花粉症freeを実現する抗ヒスタミン薬の第一選択薬」
1回服薬したら効果が1か月持続するのは患者さんが飲み忘れないメリットだけじゃなくて、患者さんが「花粉症free、花粉症であることを忘れられる」メリットが大きい。薬価は既存薬の1.5倍くらいで高いが、副作用も既存薬と同等であまり心配ないで、私は花粉症の患者さんにはシーズン前に2錠を処方します。

黒太字部分は「それっぽい感じでGlobalに忖度した短文」でまとめ、その後にPosotioning statement (≒各momentのdesried perceptionのまとめ)を入れてみました。こう書けばinsight要素も漏れずに盛り込めます。

 ようやく今日のテーマ「戦略」の話です。戦略=「desired perception≒positioningを実現するための筋道、ステップ」なんですが、言葉よりもこの画像のようなイメージで記憶してもらえれば、と思います。



positioningって何?」という記事にも書きましたが、製品XのこのPositioningを実現=ターゲット医師がdesired perceptionになっている状態に至るには1つの活動、メッセージではなかなか難しく、そこに至る筋道、Stepをデザインしたほうがいい場合が多くあります。なので私はStrateg=戦略を「Desired perception(≒positioning)を実現するための筋道、ステップ」と文章で定義していますが、これも上記の画像のイメージのほうが記憶しやすいと思います。

製品XではSegment毎のcurrent/desiredをこんな風にまとめました。


製品Xの場合はどんな戦略になるか?というのを考えてみると
  1. 製品Xの製品特性を知る「1回服薬、効果1か月持続」副作用の懸念を払拭
  2. 既存薬より切り替えるBenefitが大きい「花粉症free」の患者ニーズの重要性を知る(既存薬で満足の壁の打破)
  3. 製品Xが第一選択薬になり、1シーズンに2錠=2か月分処方をする
みたいな感じでいかがでしょうか?

□ 製品特性(有効性/安全性)の理解
□ 患者Benefitが製品X>>既存薬→製品Xを処方
□ 製品X=第一選択薬
□ 製品Xをシーズンに2錠=2か月分処方

といういう感じでチェックボックスにしてもいいかな、とは思います。adoption ladderになっていなくても check listでもいいので。いずれにせよ、それぞれの項目が「製品Xの成功=positioningを達成するのに必須な戦略的要素」なので、これらの分解された戦略の要素は
  • Critical Success Factor (CSF)
  • Key Success Factor (KSF)
と呼ばれます。CSFでもKSFでも言葉はどっちでもいいので、さきほどのPositioning statementも入れた1枚のスライドを作成してみました。


ここまで来ていると、Positioning、Strategy(戦略)、CSF/KSF、Key messages、ハイレベルなアクションが1枚のスライドにまとめられています。これまでの分析やWorkshopで出てきたものを整理整頓しただけなんですけどね。Senior managementやGlobalのreviewerは常にマクロ→ミクロにreviewすることに慣れているので、このようなスライドはBrand planの全体を包括しているものなので、しっかりと作成しましょう。ここまで書いたPts journeyに沿った多くの分析、ワークをしっかりとしていたら、問題なくこのスライドはあと、これだけだとかなりハイレベルなので、もう少し詳細にSegment毎に何をするか?Key actionsは?というようなスライドも良く作られます。(すみません、まだアクションの中身は貧弱です…)


ここでお気づきと思いますが、抗ヒスタミン薬処方医は全国で65,000人もいるので、MRで全員をカバーしようとするととんでもないことになります。一方で、Peakの薬価売り上げは170億円くらいなので、1000億円稼ぐような超大型製品だったら、MRを1000人単位で…というのも考えられますが、そこまでではないので次に考えないといけないのは、どのくらいのMRで、リソースをかけてPromotionをするか?について考えてみたいと思います。


2023年4月14日金曜日

(13) Segmentation、言うは易く行なうは難し

insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!

製薬マーケティングでSegmentationをしていない会社はないのではないか?と思うほど業界の「常識」 になっているSegmentationですが、使いこなせてない例、言われているからなんとなく分けている例も散見されているような…Segmentで分ける意味は「考え、気持ち、結果行動が異なる顧客群にkey message、アクション、チャネルを変えてテイラーメイドのアプローチをして成果をあげる」ためなのですが、過去はセグメント分けと言えば「診療科」「医師Potenntial」というのが常識の時代もありまして、現在はその2つが混在しているというのも脳内混乱の原因、うまく活用できていない原因なのでは?と思っていますが、そこらへんも今回の記事で皆さんの脳内整理に役立てれば。

Segmentationの本題に入る前に、これまでやってきたことを少しまとめて脳内整理、資料整理をしてみます。Pts journeyの重要なmomentでのkey stakeholders の脳内のcurrent perceptionをdesired perceptionにどう変えていくか?を考えてきましたが、多くの分析、ワークをして拡散気味だったものをまずはまとめていきましょう。ここでも軸はpts journeyです。我々にとって機会があるmomentを4つは

  1. Seek treatment :症状を感じたら花粉症で通院する
  2. Brand Choice:医師が抗ヒスタミン薬の中で製品Xを処方する
  3. Taking frequency:服薬回数/花粉症シーズン(1回 or 2回)
  4. Pts acceptance:製品Xの患者受入
このmoment毎に
  • momentの簡単な説明
  • upside opportunityの大きさ(患者数、金額)
  • driver/barrier
  • Priority
を1枚にまとめてみます。

このまとめ方だとinsight的要素は弱めですが、ハイレベルなまとめ資料なので気にせず市島ましょう。こう見るとBrand choiceとRx frequency、が(やはり)優先度が高いな、ということが分かります。

我々にとって重要な顧客(key stakeholders)は当然ながら「抗ヒスタミン薬処方医師」と「花粉症で受診をする患者」なのですが、ここで彼らを一括りに「医師」「患者」とまとめてしてしまっていいのか?というのを考えなければいけません。考え、行動、違いによって医師をグループ分けしてテイラーメイドのメッセージやアクションをしたほうが効率が良い場合があり、そのために顧客をいくつかのグループに分けることをSegmentationです。Pts journeyのinsight作成の時にも製品Xの処方意向の高い医師と低い医師、の2つに分けて考えました。そう言う意味では既にsegmentation はもう始めていた、とも言えます。

なぜ、医師を「製品Xの処方意向高/低」の2つのグループに分けたのでしょうか?逆に2つに分けずに「抗ヒスタミン薬処方医」全員を1つのグループでinsight を作成したとします。そうすると全体の処方以 意向は40%まで、など調査の結果から抗ヒスタミン薬処方医師の全体像は分かりますが、我々が目指すのは
  • どうしたら製品Xがより処方されるか?
  • そのdriver/barrierは?
  • その医師の本音は?
なので、医師全体を1つにまとめた情報からよりも処方意向の高いグループ、低いグループに分けて調査結果をもとに2つのinsightを作成して対比させて、ギャップを考えるほうが顧客の深い本音の理解、ギャップ分析(current/desired perception)から「顧客の考えをこう変えないと」が明確になり戦略、アクションの立案も考えやすくなりますし、特にアプローチを集中させなければならない処方意向が低い医師グループへの活動が明確かつ効率的になります。

かつてSegmentationと言えば
  • 診療科別
  • Potential別(持ち患者別、残患者別)
でしたが、これはこれで間違いではないと思っています。診療科ですが、もし診療科毎に考え方、気持ち等々のinsight≒current perceptionが違うのなら、診療科別のsegmentationもOKだと思います。ただ、考え、気持ちが同じなのにただ、診療科で分けると分けやすいから、という理由だけで分けるのなら意味がないと思います。(分けることで満足、Brand PlanのTemplateが分けろ!と言っているから分けた、、、みたいな)Segmentで分ける意味は「考え、気持ち、結果行動が異なる顧客群にkey message、アクション、チャネルを変えてテイラーメイドのアプローチをして成果をあげる」ためなので、闇雲に診療科で分ける意味はありません。

Potential別(持ち患者別、残患者別)ですが、これもhigh potentialな顧客に「活動の量」を多く割くのは効率的なので「分ける」のは合理的です。ただし、Potential別「だけ」で分けてしまうと、医師のinsight、気持ち、行動の違いによるsegmentができなくなってします。おすすめはこんな感じに縦軸に気持ち、行動に基づいたSegment(今回の場合は製品Xの処方状況)で横軸にPotential別にします。


すると、こんなMetrixができまして、「伝えること」の質的な内容は「気持ち、行動に基づいたSegment」が同じなら変わりませんが、その医師のPotentialが高い(患者数が多い)場合にはより頻回に訪問し、少ない場合は訪問も少なくなる、ということなので


みたいに訪問頻度の優先付けに「Potential別」は使うのがよいと思います。この場合はpotentialが高くても既に製品Xが第一選択肢になっている医師にはそんなに訪問頻度は高くしなくていい…など、こうして縦軸でinsight時代のmarketingに重要な「気持ち、行動に基づいたsegmentation」を残しつつPotentialの要素も加えられます。

さきほどのスライドで、抗ヒスタミン薬処方医を3つのSegment
  1. 製品X未処方医
  2. 製品X処方率50%未満の医師
  3. 製品X処方率50%以上の医師
に分けてみました。この分け方はadoption lafdderにも近い感じだし、MRにとっても見分けやすい、分かりやすいのですが、こういう「処方行動で分けたSegment」は一部のMarketingマニア(特に頭デッカチのコンサル脳Global)からは「もっと気持ち、Insightで分けないといけない!」と指摘されることもあるのです。言っていることはMarketingの教科書的にはごもっとも!でも表面=Segmentの名前だけを見ないでくれ…たとえ処方行動でSegment分けをしていたとしても、その背後にある気持ち、insightがしっかり捉えられていて、Segment毎に違いがあれば、OKなのでは?と私は思います。例えば、気持ち、insight別(のSegment名)で医師をsegmentして
  1. 患者治療アウトカム最優先医師
  2. 抗ヒスタミン薬興味無し医師
みたいに分けられなくもないのですが、正直、現場(MR)では判別が難しく使いづらいSegmentationになってしまいます。Segmentationとしては「美しい」「あるべき」ではありますが、使えなければ砂上の楼閣なので、このような" beautiful but not practical" なsegmentationは避けたほうがいいと思っています。裏技で実際は「処方行動で分けている」んだけど、名前を気持ち、insight別に変更して
  1. 抗ヒスタミン薬興味無し医師(製品X未処方医)
  2. 既存薬満足医師(製品X処方率50%未満の医師)
  3. 患者治療アウトカム最優先医師(製品X処方率50%以上の医師)
のように誤魔化してGlobalの目を逃れたことも実はあります。そこらへんは「実」をとったほうがいいと思いますので。Segment分けする理由は「考え、気持ち、結果行動が異なる顧客群にkey message、アクション、チャネルを変えてテイラーメイドのアプローチをして成果をあげる」と書きましたが「成果をあげる」ためには「私のターゲット医師がどのSegmentに属するか?」の判別がMRにも容易でないと成果をあげるのは難しいので、「Segmentの判別が容易である」というのもSegmentを分ける際の必要条件です。

Brand Teamで決めた「使える、使いやすい」Segmentのcurrent/desired、key driver/barrierをまとめてSegment毎に作成して1枚にまとめました


この辺のまとめ方は各社のBrand planのtemplateによって変わると思いますので、適宜templateに基づいて作成いただければと思います。あとはSegment毎に1枚でinsightまで込みでペルソナまで含めて作成するのもお勧めです。


これもこれまで作成した情報で作成できて、この資料があると、そのSegmentの医師のイメージが映像で見た人の脳内に浮かびますね。これを各医師、患者各Segmentで作成したら、Segmentationの説明は簡単にできます。

Segmentationをするときの大事なポイントをまとめると
  • 気持ち、行動(insight)ベースのSegmentがinsight時代には大事
  • もちろんpotentialも大事
  • 縦軸にinsight別、横軸にpotential別で両方をcaptureするといい
  • 全セグメントの情報をまとめたスライドはあったほうがいい
  • 各Segment毎をまとめたスライドを作ると説明簡単で便利
みたいな感じです。ここまで行くと次はついに戦略=desiredにたどり着くまでの道筋のデザイン、の話になっていきます。

2023年4月13日木曜日

(12) Insightワークショップをやってみよう!

insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!

 前回の記事でpts journey 優先度が高いmomentの「current perception =患者、医師の本音≒insight」と「Desired perception=こう思ってくれたら顧客が望む行動をしてくれる」とそのためのmessage、actionを考えました。この一連はBrand team全員参加でワークショップをすることにより、Brand teamメンバーの市場、顧客の理解が進み、戦略、アクションの立案にとても有効です。このワークショップをinsight workshopと呼んでいます。

「insight workshopしましょう!」と声をあげればワークショップができるわけではなく、準備不足でワークショップをしてしまうとbrain storm と言う名の「思いつき垂れ流しワークショップ」になってしまうことがあります。それでは時間がもったいないので、しっかりと準備をし、ワークショップの目的を確認し、ファシリテーションをする必要があります。

Insight workshopの流れはこんな感じで実施しています

(1)ワークショップの目的の説明

Insight workshopに慣れてない人もBrand teamにはいると思うので、ワークショップの目的をしっかり説明しましょう。「定量だけではなく定性的に各momentにおける顧客の本音を知った上で戦略、アクションを計画しなければならない、なぜなら…」みたいな説明でが、事前に私のこの記事「製薬Promotion、Marketingの3つの時代」「SoV至上主義の限界」を参加者に読んでもらってもいいと思います。ワークショップの目的が曖昧なままにワークショップをすると失敗の原因になります。この説明はBrand teamのリーダーがするのが良いでしょう。

(2) 市場、pts journeyのおさらい

製品Xが参入する場(患者数、医師数、治療診療科、競合状況等々)とpts journeyの復習をします。Brand Teamのメンバーの中でも市場や製薬Xの知識に差はありますのでその復習、確認はしたほうが良いです。ここはBrand manager、市場調査担当者がすることが多いです。

ワークショップの前に定性/定量調査が終わっていると思いますので、調査結果も参加者に調査担当者がプレゼンしましょう。プレゼンではKeyとなり情報を手短に、各momentの顧客の1-7同意の結果サマリー等々、「何人の患者がある」と言うような定量情報だけじゃなくて、「このmoment の医師のこの文章への同意度は…」みたいな1-7同意度の説明を多く加えるとinsight出しに繋がりやすいです。市場調査の結果の資料のフルのものは次のgroup workで参照用の資料で使います。

(3) 各momentのinsight(group work)

市場、pts journeyのおさらいで参加者の理解はだいぶ進んで、「Brand choiceの時の医師の気持ち、考えは?」などが頭に湧いてくる、イメージが浮かぶ準備はできました。ここからが本番のGroup workです。Pts journeyのすべてのmoment、すべてのkey stakeholderについてワークするのは時間的に厳しいので、「どのmomentのどの顧客についてinsightを出すか?」は事前に決めておいたほうがいいと思います。ワークする前にアウトプットのイメージを示しておくと参加者の理解も深まります。(ワークショップでは扱わないmoment、顧客で作ると分かりやすいです)


参加者がアウトプットのイメージができたら、post-itなどで本音、insight の元を参加者にどんどん出してもらいます。この時、参考資料として市場調査の結果を印刷して各グループに置いておき参照できるようにし、市場調査担当者は参加者からの質問にいつでも答えられるように会場をウロウロしながらどんどん質問を受けます。insight workshopに慣れたファシリテーターも同様に各グループを回りながら脱線してたり議論に詰まってたら解消の手伝いをします。

多くのMoment(Treatment choice、Brand choice…)多くのkey stakeholder (医師、患者、看護師…)などがある場合は、「Brand choice、医師」をgroup B、「Seek treatment、患者」をGroup B、のようにグループ毎に違うKey stakeholderのinsightを考えてもらうことも多いです。

グループごとに考えたInsightをこのようなテンプレートを事前に準備しておいて、記入してもらいます。


いろいろなアイディアが出てくるのと思いますが、吹き出しの中に入るような分量で文章にするのはけっこう難しいものです。また、文章にするとついつい固苦しい文章になってしまい、顧客の気持ち、本音というinsightに重要な要素が消えてしまうことがあるので、「くだけた表現で」「口語、話言葉で」書いてもらうのがお勧めです。私がファシリテーションするときは「ぶっちゃけ…正直…」で書き始めてみて!と良くアドバイスをしています。文章にするのはなかなか難しいので、ファシリテーターが適宜アドバイスしましょう。完成したら参加者全員の前で発表しましょう。

(3) Desired perception (group work)

insight=currrent perceptionが完成したら、次はdesired perceptionです。前回の記事に書いた通り、desired perceptionを考え時はついつい拡散してしますのですが、ファシリテーターやBrand teamのリーダーが、例えばBrand choiceであれば「抗ヒスタミン薬の中で製品Xを処方するには?」という行動を医師がするための必要条件である医師の考え方、気持ち=Desired perceptionを考えよう、と常にリマインドしてください。

(4) Current/Desiredのギャップを埋めるアクション (group work)

せっかくcurrent/desired perceptionができたので、そのギャップを埋めるアクション、要素、messagesをグループで考えましょう。ここまでくると、参加者からたくさんの「insightを理解した上での」アイディアが出てくると思いますが、注意しないと「講演会」「説明会」みたいな手段の羅列になってしまうことがあります。「Desired perceptionを実現するための手段」でもちろん大事なのですが、その手段を使って、どのようなメッセージを医師に伝えるか?がとても大事なところなので都度リマインドしながらワークショップを進めましょう。

ここでinsightに基づいた、「何を伝えてどうやって医師のperceptionをどのように変えるか?」を考えるとBrand teamメンバーのinsight=顧客の深いニーズ、考え方への意識が変わります。特にSoV至上主義に慣れていると「コールしろ!講演会しろ!」と数を言われ続け、アクションと言えば「訪問、イベントを多く実施すること」と刷り込まれている人が割にいますので、その人たちをinsight 時代の考え方に慣れていってもらうのにもこのワークショップは有効です。

ここまででほぼ1日が終わってしまうと思います。ワークショップの結果はしっかりとまとめておきましょう。ここで得られたBrand teamメンバーのinputはとても大事な情報になりますし、これからのBrand plan、action planの立案にとても役立ちます。

pts journey、insight, current/desired workshopまでを時間をかけてやってきました。Brand planの作成プロセスといいつつ、だいぶ拡散した感じになってきましたので、次回はここまでのワークを戦略にしていき、市場分析、Segmentation、Targetingをしていき、皆さんのイメージするBrand Planにしてくプロセスが始まりますのでお楽しみに!

*Pts journey作成 → 定性/定量調査の実施→ insight workshopの準備 → ワークショップまで一連をProjectとして、またワークショップだけの依頼も承っております。新製品の発売だけではなく、既存Brandの戦略の見直しにも活用いただけ、Brand Teamの皆さんと一緒に考えていくので、考え方や戦略の定着率も高いので、お気軽にご相談、ご依頼ください。

(11) Current/desired peceptionを考えよう

insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!
前回の記事でPts journeyの成功のための優先度が高いmomentにおけるKey stakeholder(医師・患者)をinsightを作成しました。製品Xの成功に関係するmomentは
  1. Seek treatment :症状を感じたら花粉症で通院する
  2. Brand Choice:医師が抗ヒスタミン薬の中で製品Xを処方する
  3. Taking frequency:服薬回数/花粉症シーズン(1回 or 2回)
  4. Pts acceptance:製品Xの患者受入
を挙げまして、全部のkey stakeholderのinsight、barrier/deriverを作成したほうがいいとは思いますが、実際にしっかりとDocument化してBrand planのPresentationに入れるのは重要なもの1~3つくらいが量の都合で限界かな、とも思います。

今日のテーマは current perception、desired perceptionなんですが、この言葉自体は一般的ではなく、私が勝手に使っている言葉です。「positioningって何?」という記事でも触れているのですが、

Current perception
(ビジネスに関わる、ヒントとなる)key stakeholderの本音≒insight
Desired perception
key stakeholderがこう思ってくれたら、我々が目指す行動をしてくれる≒positioning


「製品X処方におけるDesired perception」はそのままほぼpositioningになることが多いです。と、概念で話していてもあまりイメージがわかないので、(1) seek treatment:症状を感じたら花粉症で通院する、のmomentについてcurrent/desired perceptionをやってみましょう。key stake holderはこの3パターンです
  • 花粉症で毎年通院している患者
  • 症状があるのに通院しない患者(薬局で薬を購入している)
  • 症状があるのに通院しない患者(薬局で薬を購入していない)
前回の記事「pts journeyにinsightを!」のinsightがそのままcurrent perception と考えてよくて






このmomentでの我々にとって(そしてpts outcomeの観点からも)患者さんとって欲しい行動は「花粉症の症状緩和のために受診する」ですが、すでに「花粉症で毎年通院している患者」のinsightは「通院していない患者」のDesired perceptionの大きなヒントになります。

「症状があるのに通院しない患者(薬局で薬を購入している)」患者のcurrent/desired percceptionを考えてみます。製品Xはまだ上市前でpre-launch活動を大々的にする場合は違いますが、多くの場合は製薬会社が「受診しない患者」に積極的にアクションを起こすのは「製品X発売後」なので、「製品Xが上市された想定」でdesired perceptionを考えてみましょう。(Pre-launchの患者活動をする場合は、逆に製品Xが無い=上市前のdesired percetpionを考えたほうがいいです)

「毎年受診している人」のinsightをヒントにしながらdesired perceptionをこんな感じにしてみました。

「花粉症の症状がでたら薬局でOTCを購入して服用していたけど、どうも1回飲んだら1か月効果が持続する薬があるらしい。OTCを買うのに比べたらそんなに費用も変わらないみたいだし、症状が出てから飲む手間がなければ「あれ?花粉症の症状がでない!自分が花粉症だということを忘れられる」と思うし、それなら病院を受診してその薬を試してみたい」

本当なら製品Xに関する文言を少なくして「seek treatment」に集中した文章にしたいところですが、OTCがこれだけ普及して有効性で処方薬との境目が微妙になってきている現状があり、製品Xに関する情報がないと、この患者群に受診してもらうのは困難なのでこのように製品X関連の文言が入っています。この患者群は症状が出たら薬を飲む、あんまり服薬をしたくない、面倒と思っているのがinsightなので、それを逆手にとって「1回飲んだら花粉症freeになれる!それなら受診しようか」みたいなツボを押したらどうか?という考えです。実際は次の記事に書きますinsightワークショップでdesired perceptionをBrand Teamで考えて作成するのがお勧めですが、本当にそう思ってくれたら受診するのか?は今後の定性・定量調査で確認して、より刺さる、顧客に響くdesired perceptionに上市までにbrush upしていきます。

ターゲットとした顧客、今回は「症状があるのに通院しない患者(薬局で薬を購入している)」患者のcurrent perceptionとdesired percetpionが定まったら、そのギャップを埋めるのがaction、key mesasgesです。この場合のKey message=伝えないとdesired perceptionの到達するための要素は
  • 1回飲んだら1か月効果持続する薬があるらしい
  • 症状、服薬、両方の煩わしさから解放されて花粉症であることを忘れられる=花粉症free
  • 医療費はOTCと大差ない
は伝えないといけないことだと思います。ブランド名を出してのDTCができないことを考えるとどれもかなり厳しいですし、上市前には何もできなさそう…。SNSで製品Xを使用した患者が拡散してくれたら有効だと思いますが、それを製薬会社が仕掛けることはできませんので、current/desired perceptionを考えてみましたが、有効な「アクション」を実行することはコンプライアンスの観点から難しそうですね…。

気持ちを切り替えて、Brand Choiceで「抗ヒスタミン薬の中で製品Xを選択」のmomentでkey stake holder=医師で考えてみましょう。特にperceptionを変えたい医師は「製品Xをあまり処方したいと思わない医師」です。


Current perceptionは製品Xの処方意向が低い医師のinsightをそのまま、desried percetpionは処方意向が高い医師のinsightを参考に作成しました。


こうやってcurrent/desiredを並べてみると、desired perceptionの到達するための要素は
  1. 製品Xの製品特性(1回飲んだら1か月効果持続+安全性、服薬負担軽減、価格…)
  2. 副作用も1か月持続する懸念=安全性懸念の払拭
  3. 既存の抗ヒスタミン薬で満足している患者も製品Xを処方してもらいたいと思っている(服薬が少ない=花粉症free、花粉症だということ忘れられる!)
みたいな感じでしょうか。1はLaunch時には必須の製品特性の浸透なので、MR、Digitalでどんどんすべきですが、安全性懸念の払拭はデータでどこまで訴求できるな?医師の使用経験が重要だからdr to drを考えないといけないのでは?3の患者が製品Xを求めている、というのも患者の声をどう届けるか?ひょっとしたら患者のQoLデータがP3試験にあってそれを使って…薬を飲まない=花粉症free=花粉症であることを忘れられることの快適さ、気持ちよさと心理的なBenefitを前面にだすようなVisual、TVCMみたいなショートムービー作れないか?等々…ここまでくると、currentをdesiredに変える色々なアイディアが浮かんでくると思います。次はそれらを整理整頓して戦略という形にまとめあげ、アクションを決めていく、という作業に移ることができます。

前の記事で書きましたpts journeyのmomentごと、key stakeholderごとにinsight (=current perception)やdriver/barrierを考えるのと、今回の記事のcurrent/desired perceptionから、どのようなkey message、アクションを?までを1日の私はWorkshopで実施することが多いです。WorkshopでBrand teamメンバーが集まって、1日でInsight、current/desired perctpion、ギャップを埋めるアクションまで考えてもらうと、Brand teamメンバーの市場顧客理解が深まるだけではなく、「これから誰に何をして、顧客の現在の考え方をこう変えていかなければならない」というところまで皆の理解が進み、Brand planの作成や、アクションプラン策定に大きなプラスになります。

というわけで、次回はこのWorkshopをどのようにするか?を書きたいと思います。


2023年4月11日火曜日

(10) Pts journeyにinsightを!

insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!

ここまでで(Forecastモデルと整合性が取れた)定量化されたPts journeyが出来上がりました。

pts journeyから、どのmomentの機会が大きいか?を判断して戦略を決めていくのですが、このpts journeyは「定量的な」pts joueneyで「定性的な」要素がまだ組み込まれていません。

定量的にみたら「通院してない患者を通院させる」のmomentで漏れている患者数が一番多いので、最も機会が大きいというのは確かですが、「機会をビジネスに変える、自社製品の売上に繋げる」のには、そのmomentの(量的大きさ)×(質的実現可能性)なので、定性的にも判断する必要があります。

「通院してない患者を通院させる」はもちろん、漏れている患者=量的な機会はとても大きいのですが、Brand名を提示したDTCができない日本ではなかなか難しいものです。pts journeyで上流に行けば行くほど、自分たちがアクションをしてもインパクトを出すのが困難になります。ですので、定量、定性の両面からmomentをしっかりと理解、分析し「どのmomentが注力すべきmomentなのか?」の優先順位をつけていかなければなりません。

多くのBrandで「Brand choiceで自社製品を選んでもらう」は最優先になることがとても多いです。「Brand choiceしか取り組むmomentがない」なんてブランドがあって、その場合はBrand choiceをもう少し分解したほうがいい場合もあるのですが、その話はまたの機会に。

製品Xで我々が注力したほうがいい可能性があるmomentは、

  1. Seek treatment :症状を感じたら花粉症で通院する
  2. Brand Choice:医師が抗ヒスタミン薬の中で製品Xを処方する
  3. Taking frequency:服薬回数/花粉症シーズン(1回 or 2回)
  4. Pts acceptance:製品Xの患者受入

製品Xの場合、Treatment choice=抗ヒスタミン薬を花粉症の治療に選択する、はもう標準的に治療なので抜いていますが、Treatment choiceが入ってくるBrandは多いです。

insight時代のmarketingでは、顧客の本音が大事、としつこく書いていますが、本音は質的情報なので、各momentを質的に考えることはとても重要ですが、どんな定性的な情報を考えたらいいかというと

  • Key stakeholder は誰か?
  • Key stake holder のそのmomentの本音は?
  • Key stakeholder のdriver/barrierは?

あたりからまずは書いてみましょう。まずは「(1)Seek treatment :症状を感じたら花粉症で通院する」から考えてみましょう。Key stakeholderは、まずは患者さん本人です。患者の家族に促されて通院、友達に促されて通院、ってのもあるので、患者の周囲のひとたちもstake holderではありますが、まずは患者本人について深掘りしていきましょう。このときに「花粉症で毎年通院している患者」「症状があるのに通院しない患者(薬局で薬を購入している人)」「症状があるのに通院しない患者(薬局で薬を購入しない人)」の3パターン(=患者定量調査のリクルーティング条件)の人たちになりきって、本音を深掘りします。この時に、定性/定量調査の結果、特に1-7同意の質問の量グループの患者の差は大きなヒント&違いのエビデンスになります。



吹き出しの中が「花粉症の症状で毎年通院する/しない」に関する各患者の気持ち本音、行動です。Brand TeamのWorkshopなどでは皆でまずはPost-itで出してまとめる、みたいなにするのがいいと思います。注意点はここでは「花粉症の症状で毎年通院する/しない」というmomentに集中して書くことで、ついつい拡散して製品Xについてとか書きたくなるのですが、ここはこのmomentの患者の気持ちや本音を深く考えて、insightにたどり着くのが目的なのですから。

「花粉症で毎年通院している患者」からはDriverが、毎年通院していない患者からはBarrierも出てきて、ここでは定量調査の結果(1-7同意度の同意top3の合計)の数字を入れています。これは各Segmentのペルソナを作るときに、調査結果からペルソナの重要要素の定量的な情報を入れておくと、ぐっと説得力が増すので試してみてください。その為にも1-7同意質問を嫌がらず、定量調査に入れておきましょう。

こうやって定性的な情報を付加して考えてみると、OTCで満足している患者さんや、薬も飲んでいない患者さんに通院してもらうハードルはかなり高そうです。Launch後しばらくはBrand Choiceに注力したほうがよさそうです、というような優先順位の判断ができるのではないでしょうか?

Brand choiceについてもやってみましょう。まずは医師から。定量調査の結果を製品Xの処方意向が高い医師(50%以上)と低い医師(50%未満)でクロス集計をして、その結果も大いに使いながら、患者さんと同じように考えていきます。新製品の場合は、私はまずは処方意向の高い低い(あるいはhigh、middle、low)で切ってみることが多いですが、それ以外のも「こんな切り方がいいかも?」みたいなアイディアがあったらぜひ試して、患者調査結果をクロス集計して結果をみてください。



(手抜きでPts journey調査の提示資料とほぼ同じ内容ですが、調査前に立てていた仮説が合っていた、という設定ということでご理解ください)

こうしてみると製品Xの「1回内服で1か月効果持続」はインパクトが強くて処方意向につながるのですが、製品Xをあまり処方しない医師は「効果が長く続くのは良いと思うが、副作用が出た時が心配」というのと「そもそも今の抗ヒスタミン薬で困っていない」というのがBarrierになっていると思われます。

お気づきの方もいると思いますが、この医師の処方意向の高/低で切り分けた→Segmentに繋がっていくことが多いです。Launch時には処方意向の高い医師と、低い医師がどういう考え、気持ちに違いがあるか?を洗い出していてAdoption ladderを作り、それでSegmentを分けるのががBrand Teamの」メンバーにも分かりやすくて、MRも理解しやすいのでお勧めしています。今回の処方意向別も

  1. 製品Xを知る = awareness 
  2. 製品Xを一部の患者に処方(50%未満)Trial/usage
  3. 製品X抗ヒスタミン薬の第一選択薬(50%以上)Loyal customer

ってな意味では、この処方意向での分け方もAdoption ladderに近い考え方ですね。Segmentについては別の記事にてしっかりと触れたいと思います。

製品Xへの処方意向が低い医師は製品Xはいいと思うけど、副作用が心配、今の治療薬で特に困ってないのがBarrierというのが分かってくると、とるべきアクションが明確になってきます。Launch初期の段階では「製品Xの1回服薬で1か月効果持続」「安全性は既存薬と同程度」というのをしっかりと浸透させ(ここはSoV至上主義時代とまったく同じ)で、その後(ここからはInsight時代)医師や顧客の潜在ニーズやバリア、製品Xの場合は

  • 医師が特に既存の抗ヒスタミン薬で満足している
という点については、患者の気持ち、ニーズがこんなにあることを気づかせる仕掛けを作ったり、、、みたいなアイディアがわいてくると思いますが、そこはaction planningのところで触れます。

また「医師が製品Xを進めても患者が拒否」することもあるので、製品Xに対する患者もやってみましょう。


と言いつつ、これもpts journey調査の提示資料そのままで手抜きですが。ここでも「医師が自信をもって勧めたら患者は製品Xを受け入れる」というのが分かってきていて、ここも医師にどうやって製品Xを自身をもって患者に勧めてくれるようになるか?を考えなければなりません。

Pts journeyの全てのmomentにこの作業をする必要まではないと思いますが、特に重要なmoment、今回はBrand Choiceを中心に考えてワークショップなどをBrand Teamで実施するのがいいんじゃないでしょうか。次回触れるSegmentはBrand Choiceが製品Xでは圧倒的に(Launch時は)重要なので、ここのmomentで医師Segmentは作ってしまっていいと思います。

Pts journeyの定性化=Insightを吹き込む話でしたが、医師や患者になりきって、調査結果を見ながら色々と考えていたらつい脱線してしましましたが、Pts journeyを定性化すると各momentの優先順位付け、SegmentやKey message、アクションにつながる情報もしっかりと整理できますので、ここをしっかりとしないケース(SoV至上主義の亡霊?)が割とあるのですが、そこはInsight marketing時代に適応してやってみることをお勧めします。

ほぼ毎日更新してきたブログですが、ついに書き溜めていたストックが無くなってしまいました…次からは少し更新頻度が落ちると思いますが、週に1-2本は最低頑張ってUploadして、ゴールデンウイークくらいには製品XのBrand Planを完成させたいと思います!


2023年4月9日日曜日

(9) 定量化pts journeyとForecastモデル

insight時代のBrand Plan

  1. Pts journeyの定量化
  2. Pts journeyの定性化
  3. Pts journey定性調査、医師インタビュー 
  4. Pts journey定性調査、患者インタビュー 
  5. Pts journey定量調査、その前に 
  6. Pts journey、医師定量調査 
  7. Pts journey、患者定量調査 
  8. 調査結果をもとにPts journey定量化
  9. 定量化pts journeyとForecastモデル
  10. Pts journeyにinsightを!
  11. Current/desired peceptionを考えよう
  12. Insightワークショップをやってみよう!
  13. Segmentation、言うは易く行なうは難し
  14. Brand strategy:戦略って?KSF/CSFって?
  15. Sales Force Sizing:MRを何人に?(Digital時代を意識しながら)
  16. Data generation :  Brand Teamでどう取り組むか?
  17. Data generation workshopをやってみよう
  18. Brand Planまとめ:Senior managementへのプレゼンをしよう!
前回、pts journeyをこのように定量化しました。



「定量化したpts journeyとForecastモデルってどんな関係があるんですか?」って聞かれたら「愚問です、定量化したpts journeyは(ほぼ)Forecastモデルそのものです」って答えています。同じものなので、Brand Planの中の患者数、処方率などの数字はForecast modelと同じなのが自然なのですが、pts journeyの数字と、Forecast modelの数字が一致していないケースは結構目にしますし、数字が守備一貫していないプランはReviewで突っ込まれます。

Pts journeyを作成しているBrand managerがForecastモデルを作成、いじっていたら数字が一致していないことはあまりないのですが、そうでない場合(forecaster、insight managerがforecastしてるなど)がありまして、そんな場合で数字が一致していないと「あー協働が上手くいっていないんだな~危険だな」というサインだと思うようにしています。

私の場合はPts journeyの定量化とForecastモデルの作成は並行して作成、Updateすることが多いです。どうするかというと、まずはシンプルに先に示したスライドをEXCELにします。


これだとほぼそのままPowerPointのスライドがEXCELになっただけなので、Forecastモデルにする=シミュレーションできるように、Inputセルがどこか?が分かるようにしましょう。


私はInputするセルはこんな感じで黄色にするようにしています。あとはData sourceを必ずモデルのEXCELに入れておきます。そうしないと「後でこのAssumptionの根拠はなんだったけ?」という時や、担当者が変わったときに困りますので。この画像のEXCELだと、まだ横に年、月で広げていっておらずForecastモデルにはなっていないので、横に年単位でまずは広げてみましょう。

だいぶForecastモデルっぽくなってきました。ざっくりなモデルなので、「毎年通院している患者」「毎年じゃないが通院経験のある患者」「通院経験のない患者」というカテゴリーは使わず、重症度別の通院患者率を少しずつ上げていくシミュレーションができるようにしています。患者調査を毎年Trackして「重症度別の通院率」を割り出すには、患者に症状を答えてもらって、その症状に応じて我々側で重症度を判断→通院率など計算することもできますので。

もし将来的に「毎年通院している患者の製品Xシェアが60%」とかになって、花粉症で毎年は通院しない患者や、通院したことがない患者を攻略することが優先度の高い戦略になった場合は、モデルもそのように変更します。逆に、今、そうしていないのは「Launchしてからしばらくは毎年花粉症で通院している患者+毎年じゃないけど通院している患者=pts journeyでいうとこの抗ヒスタミン薬を処方されている患者群が優先事項が高いターゲット顧客だからです。このように戦略に合わせて、Forecastモデルは変更しているケースは少ないっちゃ少ないのですがぜひやってみてください。ブランド戦略、KPIが変わるならForecastモデルも変えたほうがいいかも?くらいの意識はもっておいたほうがいいと思います。pts journeyとForecastモデルが連動しているとシミュレーションが簡単にできます。またKPIとの連動もしたほうが良くて、毎月の新規患者獲得数がKPIなら、その人数をinput項目(黄色網掛け)にしたほうがいいですし、シェアがKPIならそちらをinput項目(黄色網掛け)にしたほうがいいのです。

製品XのForecastモデルの話に戻ります。通院率を含め、Pts journeyで特定した、我々が影響を与えることができる、影響を受けるmomentとその機会は、と年々変わっていく薬価を含め
  • 通院率
  • 通院回数/花粉症シーズン
  • 製品Xの医師の処方意向
  • 製品Xの患者受入
  • 薬価
をAssumptionとしての年単位のモデルはこれで完成しす。Launch1年半前くらいだと、生産計画を出さないといけない時期になっているので、実際には月別で同様のモデルを作成します。この1年単位のモデルを月に分解する手もあるのですが、実際の売上やKPIの更新も毎月するので、それならForecastモデルも最初から月単位にしておくことがお勧めです。年単位に集計するのは簡単なので。

Forecastモデルの要件についてはここでも書いていますが、ともするとBrand Teamの人は誰も扱えない、シミュレーションが困難な、Forecast職人の自己満足ともいえる「精緻だけど使い辛いモデル」になることがあります。100%の予測精度を誇るForecastモデルは無理な話なので、現実の毎月の売上でForeastモデルをvalidationかけて、上下5%くらいのずれは許容しつつシミュレーションがしやすい、扱いやすい、simpleなForecastモデルを使うことをお勧めします。

Linkedinのコメント欄で「定量調査の結果で得られた処方意向をどうForecastモデルで使うか?」という質問をいただきました。市場調査の質問票の設計がしっかりとなされている、なるべくバイアスを避けられていることを前提としてですが、

市場調査の処方意向
=当該製品の製品特性、key messagesが届いた時の医師の処方意向
≒ピークシェア

と解釈して私は数字を使っています。今回の場合は、製品Xの医師の処方意向は40%なので、製品Xのピークシェアを40%としてForecastモデルに組み込みますので、上記の年毎のもモデルもそうしています。なぜそうなるかというと、調査設計上、抗ヒスタミン薬を処方する可能性がある医師全員に=市場Coverage100%の状況で、調査上で提示した製品特性、Key messages、Pros/Consを医師が理解した上での処方意向は、実際のLaunch後でも同様に「抗ヒスタミン薬処方医が製品Xの製品特性、Key messages、Pros/Consを医師が理解した上での処方意向」と解釈していいと思います。ただし、実際の市場のCoverage、口座開設などに応じて、例えばCoeverageが80%なら、そのぶんディスカウントしましょう。

過去に自分が携わった新製品、適応拡大のLaunch前の定量調査による処方意向と実際のPeak shareを調べたことがあるのですが、±20%に入っている、調査での処方意向が50%の場合、実際のpeak shareは多くのケースで40-60%の範囲に収まっていましたので、このような解釈で実務上は問題ないのかな、と思っています。

Forecastでもうひとつ、どうしよう…って思うのがPeak shareに至るまでのuptake curveです。製品特性(画期的度合い)、市場の競合状況、その市場にて発売された順番、などいろいろな要素が絡み合いますが、似たような状況の製品のUptakeをベンチマークにする、よく行われますし私も賛成です。が、実際にはなかなか似たような製品、市場が見つからない場合も多いので、その場合は1年目は2週間の処方制限もあるので抑えめ、その後はピークまで3年くらいで…みたいな感じを基本にTeam合意で作ってしまうことも多いです。ここに膨大なエネルギーを割いても、、、とも思いますし。

あと定量調査で医師や薬剤部に「いつ頃に採用になるか?使用し始めるか?」と聞いたこともあるのですが、あまり当たった経験は私はありません。ですので、悩ましいのですが、ベンチマークとTeam合意でLaunchして、発売のUptakeを見て、適宜修正していくのが現実的なのかな、と思っています。